

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
建設業許可の要件の中で、最もつまずきやすいのが経営業務の管理責任者、いわゆる「経管」です。
「社長ひとりで5年の経営経験が必要」と理解されている方が多いのですが、現在は組織として要件を満たす方法もあります。
一人では足りない場合でも、補佐する人を置くことで許可を取得できるケースがあります。この記事では、経管の要件を条文に沿って整理します。
経管の要件は建設業法施行規則第7条第1号に定められており、イ・ロ・ハの3つの道があります。
| 区分 | 内容 | 必要な人数 |
|---|---|---|
| イ | 個人の経験で満たす(最も一般的) | 1人 |
| ロ | 組織として満たす(イが足りない場合) | 最低2人/最高4人 |
| ハ | 国土交通大臣の認定を受ける | 個別判断 |
まずイで検討し、届かない場合にロを考える——これが実務の流れです。
建設業の経営には、資金繰りや契約の管理など特有の判断が求められます。そこで、一定期間の経営経験を持つ者を最低1人は置くことが許可の要件とされています。
国土交通大臣又は都道府県知事は、許可を受けようとする者が次に掲げる基準に適合していると認めるときでなければ、許可をしてはならない。
一 建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有するものとして国土交通省令で定める基準に適合する者であること。
要件を満たす必要があるのは、次の立場にある方です。
▶法人の場合/常勤の役員
▶個人事業の場合/事業主本人、または支配人
令和2年10月の改正により、個人だけでなく組織として要件を満たすことが可能になり、あわせて適切な社会保険への加入も要件に加わりました。このため現在は「適正な経営体制」と呼ばれることもあります。申請様式上の名称も「常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書」となっています。
常勤役員等のうち1人が、次のいずれかに該当すれば要件を満たします。
| 区分 | 必要な経験 | 具体例 |
|---|---|---|
| (1) | 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者としての経験を有する者 | 建設会社の取締役や令3条使用人として5年以上の経験がある方 |
| (2) | 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者 | 取締役会設置会社の建設業担当執行役員として5年以上の経験がある方 |
| (3) | 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者 | 個人事業主である父の経営業務全般を6年以上補助していた子 |
これは、営業取引上対外的に責任ある地位にあって、建設業の経営業務について総合的に管理した経験を指します。
対外的に責任ある地位にあたるのは、次のような立場です。
▶法人の常勤役員等
▶個人事業の事業主または支配人
▶建設業を営業する支店・営業所等の長(建設業法施行令第3条に規定する使用人)
現場代理人や工事部長といった立場は、原則としてここに含まれません。あくまで経営に関する権限があったかどうかで判断されます。
【実務上のポイント】
令和2年10月の改正で、建設業の種類ごとの区別が廃止されました。かつては「許可を受けようとする業種で5年、それ以外の業種なら6年」という取扱いがありましたが、現在は建設業の経験として統一されています。
つまり、内装工事で5年の経営経験がある方が電気工事業の許可を取る場合でも、その5年をそのまま使えます。古い解説を読んで「業種が違うから無理だ」と諦めてしまう方がいますが、現在はその制限はありません。
イに届かない場合に活用するのがロです。常勤役員等1人の経験を、補佐する人の経験で補うという考え方です。
まず、常勤役員等のうち1人が次のいずれかに該当することが必要です。
| 区分 | 必要な経験 | 具体例 |
|---|---|---|
| (1) | 建設業に関し2年以上役員等としての経験を有し、かつ5年以上役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務運営の業務を担当するものに限る)にあった者 | 建設業者で財務部門担当の執行役員を2年経験したのちに、取締役を3年経験した方 |
| (2) | 5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者 | 商社で取締役を3年経験したのちに、建設業者で取締役を2年経験した方 |
ポイントは建設業での経験が2年でよいという点です。他業種での役員経験を通算できるため、イに届かない方でも道が開けます。
加えて、その常勤役員等を直接に補佐する者として、次の3つの経験を持つ人を置く必要があります。
| 区分 | 内容(申請を行う会社での5年以上の業務経験が必要) |
|---|---|
| A 財務管理 | 建設工事の施工に必要な資金の調達、施工中の資金繰りの管理、下請業者への代金の支払いなどに関する業務経験 |
| B 労務管理 | 社内や工事現場における勤怠の管理、社会保険関係の手続きに関する業務経験 |
| C 業務運営 | 会社の経営方針や運営方針の策定、実施に関する業務経験 |
A・B・Cは1人が兼ねることもできます。したがってロで要件を満たす場合、常勤役員等と補佐する者を合わせて最低2人、最高4人という構成になります。
組織体系上も実態上も、常勤役員等との間に他の者を介在させることなく、直接指揮命令を受けて常勤で業務を行うことをいいます。
間に部長が入る、あるいは別部署に所属しているという体制では認められない可能性があります。
【実務上のポイント】
ロを使う場合、組織図・業務分掌規程・過去の稟議書・人事発令書といった会社の内部資料が必要になります。イに比べて準備の負担は大きく、審査側の判断も分かれやすい部分です。
ロで進めるかどうかは、資料が揃うかどうかで決まります。当事務所では、手元にある資料をうかがったうえで、イとロのどちらで組み立てるかを判断します。窓口への事前相談も代行しますので、迷われたらまずご連絡ください。
イまたはロと同等以上の経営体制を有すると、国土交通大臣が認定したものです。
海外の建設業者での役員経験を用いるケースなどが該当します。件数は多くありませんが、通常の方法では説明しきれない経歴をお持ちの場合に検討する余地があります。
国土交通大臣認定の要件と申請の流れについての詳しい記事はこちら。
経験の要件とあわせて、適切な社会保険に加入していることも求められます。
▶健康保険/適用事業所に該当する全ての営業所について届出済みであること
▶厚生年金保険/適用事業所に該当する全ての営業所について届出済みであること
▶雇用保険/適用事業の事業所に該当する全ての営業所について届出済みであること
適用除外に該当する場合を除き、未加入のままでは許可を受けられません。経験の要件が整っていても、ここで止まってしまうケースがあります。
要件を満たしていること自体は珍しくありません。実際につまずくのは、それを書面で証明する段階です。
▶法人の役員だった/登記事項証明書(履歴事項全部証明書)
▶個人事業主だった/確定申告書の写し
▶令3条使用人だった/当時の建設業許可申請書の副本など
地位を証明できても、その期間に建設業を営んでいた事実を別途示す必要があります。
▶許可業者だった期間/建設業許可通知書の写しで足ります
▶無許可だった期間/工事の契約書・注文書・請書などを年度ごとに揃えます
【実務上のポイント】
「20年やってきたが、契約書を交わさず口頭でやってきた」——建設業では珍しくありません。この場合でも注文書・請書、請求書と入金記録の組み合わせ、通帳の履歴などで証明できる可能性があります。
一度断られた方でも、証明方法を変えれば取得できることがあります。他の事務所で「無理だ」と言われた案件をお受けすることもありますので、諦める前にご相談ください。
常勤性の確認資料は、健康保険証の新規発行の廃止にともなって取扱いが変更されています。何を提出すればよいかは時期によって変わりますので、申請前に最新の手引きをご確認ください。当事務所にご依頼いただく場合は、こちらで最新の取扱いを確認したうえでご案内します。
資料を揃えても要件に届かない場合は、経営経験のある方を常勤役員として迎える方法があります。設立して間もない会社でも許可を取得できます。
▶経管の要件はイ・ロ・ハの3通り。まずイで検討します
▶イは個人の経験で満たす方法。5年(補助経験なら6年)が基準です
▶業種ごとの区別は廃止済み。別業種の経営経験もそのまま使えます
▶ロは組織で満たす方法。建設業での経験は2年でよく、補佐する人を置きます
▶経験の要件に加えて、社会保険への加入も必要です
経管は建設業許可の入口であり、最大の関門でもあります。要件を満たしているかどうかは、お話をうかがえばおおよそ判断できます。まずは経歴をお聞かせください。
▶建設業法(e-Gov法令検索)/第7条第1号
▶建設業法施行規則(e-Gov法令検索)/第7条第1号イ・ロ・ハ
▶建設業許可申請手引・様式ダウンロード(愛知県)/愛知県知事許可の申請手続
法令や運用は改正されます。この記事は執筆時点の内容ですが、実際の申請の際は必ず上記の一次資料でご確認ください。
経管の要件を満たすかどうか、無料で判定します。一度断られた方もご相談ください。
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