【建設業許可】愛知県で事業承継するなら|譲渡・合併は事前認可、相続は30日以内

【建設業許可】愛知県で事業承継するなら|譲渡・合併は事前認可、相続は30日以内

事業譲渡・合併・分割は事前に、相続は死亡後30日以内に認可を申請しなければ、建設業許可は引き継がれず工事を請け負えない空白期間が生じます。承継できないケースや認可権者の判断まで含め、許可を切らさないための手続きを愛知県稲沢市の行政書士が解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「息子に会社を継がせたい」「同業者から事業を譲り受けることになった」——このとき、建設業許可がどうなるかを確認しないまま話を進めると、事業を引き継いだ日から工事が請け負えない期間が生まれます。
結論として、事業譲渡・合併・分割は事前に、相続は死亡後30日以内に「認可」を申請すれば、許可の空白期間なく承継できます。逆にこの認可を受けなければ、承継者は許可を取り直すことになります。


この記事では、令和2年10月1日に施行された改正建設業法による承継制度の内容と、承継できないケース、相続の30日ルールまでを整理します。



結論:事前の認可を受ければ空白期間は生じません    CONCLUSION

令和2年10月1日に施行された改正建設業法により、事業承継の際に事前に許可行政庁による認可を受けることで、空白期間なく承継者が被承継者の建設業許可を承継できるようになりました。


▶事業譲渡/譲渡人・譲受人が、あらかじめ認可を申請(法17条の2)
▶合併/合併消滅法人等が、あらかじめ認可を申請(法17条の2第2項)
▶分割/分割被承継法人等が、あらかじめ認可を申請(法17条の2第3項)
▶相続/相続人が、被相続人の死亡後30日以内に認可を申請(法17条の3)


従前は、承継者が新たに建設業許可を取り直すことが必要で、許可が下りるまでの間、建設業を営むことができないという不都合が生じていました。現行法でも、事前の認可を受けなければ承継者は許可を取り直すことになり、空白期間が生じます。


【実務上のポイント】
承継の話が具体化した時点で、真っ先に許可の取り扱いを確認してください。事業譲渡の実行日が決まってから動き出すと、認可が間に合わず空白期間が生じます。認可は「事業譲渡等の日より前」に受けておく必要があります。


許可の承継が問題になるのはどの承継か    PATTERN

事業承継には、社内における承継と、社外の第三者への承継(M&A)があります。


▶社内における承継/親族に会社を引き継ぐ親族承継、役員や社員に会社を引き継ぐ従業員承継
▶第三者承継(M&A)/社外の第三者に承継するもの


このうち、社内における承継では、株主や役員に変更があるだけで、建設業許可の要件さえ満たされていれば、建設業許可は問題なく承継することができます。法人格そのものは変わらないためです。


注意が必要なケース

第三者承継の場合で、事業譲渡・合併・分割が発生するケースでは特に注意が必要です。この場合は法人格が変わる(または消滅する)ため、認可を受けなければ許可は引き継がれません。

なお、社内承継であっても、経営業務の管理責任者(経管)や営業所技術者等(旧:専任技術者)が退任すれば要件を欠くことになります。「法人格が変わらないから大丈夫」ではなく、要件を満たす人が残るかどうかを必ず確認してください。


事業譲渡・合併・分割の承継の手順    TETSUZUKI

例として、A社の地位をB社が承継する場合の流れです。


A社・B社の許可

A社/建築(特)
B社/土木(特)、とび(般)

▶①/B社が許可行政庁に対し、事前に事業承継について認可を申請
▶②/許可行政庁において、申請の内容について審査
▶③/許可行政庁からB社に対し、認可(または不認可)について通知
▶④/事業譲渡等の日に建設業の許可についても承継。B社がA社の許可(建築(特))についても営業可能


③の通知の際には、もともとの許可に付されていた条件の変更や、新たな条件の付与が可能とされています。認可が下りれば従前どおり、とは限らない点に注意してください。


認可を申請する行政庁はどこか    GYOSEICHO

承継元と承継先のどちらが大臣許可・知事許可かによって、認可権者が変わります。事業譲渡(法17条の2第1項)の場合は次のとおりです。


譲渡人(承継元) 譲受人(承継先) 認可行政庁
国土交通大臣の許可 問わない 国土交通大臣
都道府県知事の許可

同じ都道府県知事の許可
または許可なし

当該都道府県知事
都道府県知事の許可 国土交通大臣の許可 国土交通大臣
都道府県知事の許可

当該知事以外の
都道府県知事の許可

国土交通大臣


合併・分割についても同じ考え方です。合併消滅法人や分割被承継法人が二以上ある場合において、その全てが都道府県知事の許可を受けており、かつ、当該許可をした都道府県知事が同一でないときは、国土交通大臣が認可権者になります。


【実務上のポイント】
承継先がすでに他県の知事許可を持っている、というだけで認可権者が国土交通大臣に変わります。「うちは愛知県知事許可だから県に出せばいい」と思い込んで進めると、提出先そのものが違うことになりかねません。両社の許可状況を突き合わせてから判断してください。



承継規定の対象外となるケース    TAISHOGAI

事業承継におけるあらゆるケースで建設業許可の承継ができるわけではなく、対象外となるケースがありますので注意が必要です。


対象外となる組み合わせ

▶一般建設業の許可を受けている建設業者が、同一業種の特定建設業の許可を受けている者の地位を受け継ぐケース
▶特定建設業の許可を受けている建設業者が、同一業種の一般建設業の許可を受けている建設業者の地位を受け継ぐケース


これらは、この制度による承継の対象外となります。同一業種について一般と特定を同時に持つことはできないためです。

ただし、これらに該当する場合であっても、事前の廃業により承継が可能になります。前者であれば承継先が当該同一業種について事前に廃業すること、後者であれば承継元が当該同一業種について事前に廃業することで承継可能となります。


  承継元 承継先 承継後
1

土木(特定)
鉄筋(一般)
舗装(一般)
造園(一般)

建築(特定)
鉄筋(一般)
大工(一般)
左官(一般)

すべて承継可
土木(特定)/建築(特定)/鉄筋(一般)/舗装(一般)/大工(一般)/造園(一般)/左官(一般)

2

土木(特定)
鉄筋(特定)
舗装(一般)
造園(一般)

建築(特定)
鉄筋(一般)
大工(一般)
左官(一般)

承継不可
※承継先が、鉄筋(一般)を事前に廃業することで承継可能。

3

土木(特定)
鉄筋(一般)
舗装(一般)
造園(一般)

建築(特定)
鉄筋(特定)
大工(一般)
左官(一般)

承継不可
※承継元が、鉄筋(一般)を事前に廃業することで承継可能。


出典:国土交通省「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~」(PDF)P40をもとに作成


整理すると、次の3点がポイントになります。


▶①/異業種間の承継は可能
▶②/同一業種でも、一般・特定の区分が同じなら承継は可能
▶③/承継元となる建設業者の許可の一部のみを承継することは不可能


【実務上のポイント】
③は見落としやすい論点です。「必要な業種だけもらう」ということはできず、承継元の許可は全部まとめて承継することになります。不要な業種がある場合は、承継元が事前に廃業届を出しておく必要があります。


承継後の許可の有効期間は5年に更新される    YUKO KIKAN

事前の認可を受け事業承継を行った場合、承継する許可と、もともと持っている許可の両方の有効期間が更新されることとなります。つまり、承継後の全ての許可の有効期間は、事業譲渡等の日から5年間となります。


具体例

建設業者A/建築(特)→残り3年
建設業者B/土木(特)→残り2年、大工(般)→残り2年、とび・土(般)→残り1年


この状態でBがAを承継すると、承継後は土木(特)・建築(特)・大工(般)・とび・土(般)のすべてが残り5年になります。

出典:国土交通省「新・担い手三法について~建設業法、入契法、品確法の一体的改正について~」(PDF)P41をもとに作成


【実務上のポイント】
更新期限がばらばらだった許可が、承継を機に1つの期日にそろいます。承継後は更新のスケジュールが変わりますので、社内の管理台帳を必ず書き換えてください。


個人事業主の相続は死亡後30日以内    SOZOKU

個人事業主の相続による事業承継の場合も、認可を受けることにより、被相続人の受けていた建設業許可を承継することが可能です。被相続人である個人事業主Xの地位を、相続人である個人事業主Yが承継する場合の手順は次のとおりです。


▶①/個人事業主Xの死亡後30日以内に、相続人である個人事業主Yが、許可行政庁に対して相続の認可を申請
▶②/許可行政庁において、申請の内容について審査
▶③/許可行政庁から個人事業主Yに対し、認可(または不認可)について通知


30日という期限は建設業法17条の3に定められた法定期限です。相続が発生してから遺産分割の話し合いを始めていては、まず間に合いません。


承継しない場合

建設業許可を承継しない場合は、廃業届を提出します。事業をたたむ場合でも、届出は必要です。

認可の通知までは許可を受けたものとして扱われる

認可の申請をした場合、認可・不認可の通知があるまでは、相続人は建設業許可を受けたものとして取り扱われるため、空白期間なく建設業許可を承継することができます。


建設業法17条の3第2項でも、相続人が認可の申請をしたときは、被相続人の死亡の日からその認可を受ける日または認可をしない旨の通知を受ける日までは、被相続人に対してした建設業の許可は、その相続人に対してしたものとみなす、とされています。


【実務上のポイント】
つまり、30日以内に申請さえ出しておけば、審査中も工事を続けられるということです。逆に言えば、30日を過ぎてしまうとこのみなし規定が働きません。施工中の工事を止めないためにも、まず申請を出すことを優先してください。


相続人が二人以上いる場合

相続人が二人以上ある場合において、その全員の同意により、被相続人の営んでいた建設業の全部を承継すべき相続人を選定したときは、その者が申請者となります(法17条の3第1項)。


【実務上のポイント】
「全員の同意」が必要です。相続人の一人が県外にいる、連絡がつかない、といった事情があると、30日はあっという間に過ぎます。生前に後継者を決めておき、他の相続人にも共有しておくことが、結局いちばんの対策になります。


許可の要件を満たす人がいるか

認可を受けるには、相続人の側で建設業許可の要件を満たしている必要があります。特に問題になりやすいのが次の2点です。


▶経営業務の管理責任者(経管)/被相続人本人が経管だったケースが多く、後継者に経営経験があるかが問われる
▶営業所技術者等(旧:専任技術者)/被相続人が資格者だった場合、後継者や従業員に該当者がいるか


被相続人ひとりが経管と営業所技術者等を兼ねていた個人事業では、亡くなった時点で両方の要件が同時に欠けます。これが相続で許可を失う最大の原因です。


事前の認可を受けなかったらどうなるか    RISK

現行の建設業法においても、事業承継の際に事前の認可を受けない場合は、承継者が新たに建設業許可を取り直すことが必要となり、空白期間が生じてしまいます。


空白期間に起こること

▶500万円以上(建築一式は1,500万円以上等)の工事を請け負えない
▶施工中の工事の取り扱いを発注者・元請と協議する必要が生じる
▶入札参加資格や経営事項審査の取り扱いにも影響が及ぶ

承継そのものは有効に成立しているのに、許可だけが引き継がれていない——という状態が最も危険です。M&Aや事業譲渡のスケジュールを組む段階から、認可申請の審査期間を織り込んでおいてください。



まとめ    SUMMARY

▶令和2年10月1日施行の改正建設業法で、認可により空白期間なく許可を承継できるようになった
▶事業譲渡・合併・分割は「事前」に認可を申請する(法17条の2)
▶相続は被相続人の死亡後30日以内に認可を申請する(法17条の3)
▶相続は申請さえ出せば、認可・不認可の通知までは許可を受けたものとして扱われる
▶相続人が二人以上いる場合は、全員の同意で承継する相続人を選定する
▶承継先がすでに他県知事許可や大臣許可を持つ場合、認可権者は国土交通大臣になる
▶同一業種で一般と特定が食い違う場合は承継の対象外(事前の廃業で回避可能)
▶承継元の許可の一部のみを承継することはできない
▶承継後は、承継した許可ともともとの許可の両方が、事業譲渡等の日から5年に更新される
▶事前の認可を受けなければ、承継者は許可を取り直すことになり空白期間が生じる


事業譲渡・合併の予定がある方、相続が発生してしまった方、どちらもご相談ください。


初回相談は無料です

相続の30日は待ってくれません。「何から手をつければいいか」の確認だけでも構いません。LINEなら夜間・土日も対応します。


\『建設業許可の相談』と送るだけ/