

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
愛知県の建設業許可申請は、窓口でその場で受け付けて終わり、という手続きではありません。
いったん書類を預かる「仮受付」を行い、書類不備等の補正を済ませてから手数料を納める「本受付」に進む、二段階の運用です。
つまり、不備があるかぎり本受付に進まず、標準処理期間のカウントも始まりません。更新のように期限がある申請では、不備がそのまま失権リスクにつながります。
この記事では、愛知県の令和8年4月版の手引き・記載例・よくある質問から読み取れる「引っかかりやすい箇所」を、書類の種類ごとに整理します。
愛知県では、窓口での対面審査は行わず、申請・届出の方法を郵送、投函、窓口での仮受付(預かり)としています。
▶仮受付/書類を預かる段階。手数料はまだ納めない
▶補正/不備があれば修正・追加提出の指示を受ける
▶本受付/補正が済んでから手数料を納める段階
▶標準処理期間/行政庁の休日を除き、受付後23日(電子申請は書類の到達日から38日間)
出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」26ページ、55~56ページ/愛知県「建設業許可申請手引・様式ダウンロード」(仮受付について)
なお「よくある質問と回答」では、許可通知書の発行までは本受付してから概ね30日程度と説明されています。手引きの標準処理期間(23日)は行政庁の休日を含まない日数であるため、実際のカレンダー上の日数とは差が出ます。いずれにしても、起点は本受付であって、書類を出した日ではありません。
愛知県手数料条例第6条の規定により、申請を取り下げた場合や申請が不許可となった場合でも手数料の還付はありません。要件を満たしているかが曖昧なまま本受付まで進めるのは避けてください。
どの申請区分でも共通して起きやすいのが、次の項目です。
| 項目 | 注意点 |
|---|---|
| 押印 | 令和3年1月4日から全様式で押印廃止。申請(届出)書は印のないものを提出。ただし行政書士が作成した場合は行政書士氏名の記載と職印の押印が必要 |
| 様式のバージョン | 建設業法施行規則の一部改正(令和6年12月13日施行)に伴い一部様式に字句の修正あり。新様式での提出が求められている(当面の間は旧様式も可) |
| 提出部数 | 正本1部および副本1部の計2部(副本は写し可)。左とじ |
| 各種証明書の原本 | 後見等登記事項証明書・身元(身分)証明書は、正本に原本、副本に写しを添付 |
| 証明書の有効期間 | 後見等登記事項証明書、身元(身分)証明書、履歴事項全部証明書はいずれも申請時3か月以内 |
| 住民票 | 個人番号(マイナンバー)の記載がされていないものを取得する |
| 使用文字 | 法人の商号は登記事項証明書の文字、氏名は原則として戸籍上の文字。全体で統一する |
| 記載事項がない用紙 | 空欄にせず「記載事項なし」等と記載する |
【実務上のポイント】
使用文字は見落とされやすい箇所です。法人の役員および個人事業主の支配人については、新字旧字(例:栄と榮)や異体字(例:高と髙)の違いであれば、戸籍・商業登記のどちらの文字でも使用できます。ただし様式第七号の項番20・21、様式第七号の二の項番20・21・25・26・29・30・33・34、様式第八号の項番63は、原則どおり戸籍上の文字で記載する必要があります。申請前に、これらの項番だけは戸籍(身元証明)の表記と突き合わせておきましょう。
補正に最も時間がかかるのが、経営業務の管理責任者と営業所技術者等の要件確認です。書き直せば済むものではなく、資料の収集からやり直しになるためです。
経営業務の管理責任者(様式第七号)
▶監査役としての経験では経営業務の管理責任者になれない
▶他社の常勤役員との兼務は、勤務場所が同じであっても認められない
▶原則として、経験期間における使用者の証明が必要(使用者の建設業許可の有無は問わない)
▶請負確認の資料は、契約書/注文書+請書控/注文書・請書控・請求書のいずれか+入金が明確に分かるもの
▶押印を求める手続の見直しに伴い、経験内容の確認に用いていた「発注証明書」は廃止されている
請負確認の資料は、単に工事の書類であればよいわけではありません。愛知県は工事の内容が確認できるか、業種が特定できるか、建設工事の請負であることが確認できるかを見ています。現場名しか書かれていないもの、「修繕工事」「改修工事」としか書かれていないものは、それだけでは資料として使えません。いわゆる人工出しや応援などの常用工事、建設資材の販売の実績も、建設業の経営経験にはなりません。
経営業務の管理責任者の経験をどこまで、どの資料で証明するのか(愛知県の請負確認方法)は、別記事で詳しく解説しています。
営業所技術者等(様式第八号・第九号)
▶実務経験証明書は、直近の年から暦年ごとに1件、必要年数分を具体的に記載する
▶建設工事の種類・技術者・証明者・当時の使用者ごとに、それぞれ別の証明書を作成する
▶「自営のため」は使用者の証明を得られない理由にならない
▶電気工事・消防施設工事・解体工事は、免状や許可・登録がない期間を年数に算入できない
▶指導監督的実務経験は元請かつ請負金額4,500万円以上、2年以上(指定建設業7業種は不可)
令和7年2月1日から、特定建設業許可が必要となる下請契約の金額は建築工事業以外4,500万円→5,000万円、建築工事8,000万円へ引き上げられました。一方、特定建設業の営業所技術者等に必要な指導監督的実務経験の金額要件は4,500万円以上のままです(令和8年4月版の手引きの記載)。数字が近いため取り違えやすい箇所です。
指導監督的実務経験証明書(様式第十号)については、確認書類の要求水準が高い点にも注意が必要です。愛知県は、記載した工事について契約書(原本)、又は注文書(原本)および請書(控え)の持参を求めており、注文書のみ等、この方法以外での確認は認められず、発注証明書での確認も認められないとしています。
実務経験証明書(様式第九号)の具体的な書き方は、別記事にまとめています。
常勤性の確認
常勤性の資料は「どれか1つあればよい」ではなく、①から順に確認して、最初に当てはまった資料(申請時直近のもの)を持参します。あわせて、次の点で補正になりやすい傾向があります。
▶健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定一覧表は公的な資料ではないため使用できない
▶住民税特別徴収税額決定通知書にマイナンバーが印字されている場合は、隠してから複写する
▶源泉徴収票は、所得証明書に対応する年次のものが必要
▶雇用保険関係の資料は被保険者区分が「1」のものに限る(「11」の場合は勤務状態を確認できる資料が必要)
▶出向者の場合は、出向契約書等(該当者・出向元・出向先・出向期間が確認できるもの)の写しの提示が必要
▶住所(居所)が営業所からおおむね片道2時間以上の場合、通勤確認資料を求められることがある
数字の整合が取れていない申請は、その場では気づかれても後から必ず戻ってきます。次の一致関係を先に確認してください。
| 確認する箇所 | 一致すべき相手 |
|---|---|
| 様式第二号(工事経歴書)の業種ごとの合計 | 様式第三号の同じ業種の「計」 |
| 様式第三号の工事施工金額の合計 | 損益計算書の完成工事高 |
| 様式第十五号「純資産の部」の①~⑮ | 様式第十七号(株主資本等変動計算書)の①~⑮ |
| 損益計算書の当期純利益 | 株主資本等変動計算書の「当期純利益」と「繰越利益剰余金」が交差するマス |
工事経歴書では、小計と合計の考え方も間違えやすい箇所です。愛知県は、各工事の請負代金を千円未満切捨てで記載した場合、合計金額の欄には円単位で合計してから千円未満を切り捨てた額を記載すると説明しています。105,500円と120,900円の工事であれば、各行は105千円・120千円でも、小計は225千円ではなく226千円になります。
▶実績がない場合も工事経歴書・様式第三号は作成し、「該当工事なし」「0」と記載する
▶公共工事は発注業種ではなく、請け負った工事内容から建設業法上の業種に振り分ける
▶工事名から工事内容が明確でない場合は、当該業種の工事と分かるよう補記する
▶法人設立直後で決算未到来なら、余白に「該当工事なし」「決算未到来」と記載する
▶保守点検や維持管理業務(例:樹木の剪定)など役務の提供にあたる業務は工事に該当しない
財産的基礎の確認資料でも次の点に注意してください。
▶残高証明書は基準日が申請直前4週間以内(初日算入)、融資証明書は発行日が申請直前4週間以内
▶残高証明書と融資証明書の合算は認められない
▶残高証明書が2枚以上になる場合は、基準日が同じでなければならない
▶証明書は、主要取引金融機関名(様式第二十号の三)に記載のある金融機関から取得する
▶融資証明書は融資残高の証明ではなく、融資可能額の証明
【実務上のポイント】
4週間という期間は想像以上に短く、仮受付から補正を経て本受付に至るまでの間に基準日が古くなってしまうことがあります。残高証明書は他の書類がすべてそろってから最後に取得する段取りにしておくと、取り直しを避けられます。
新規申請・許可換え新規で必ず必要になり、かつ撮り直しが多いのが営業所の写真です。愛知県が求めているのは直近3か月以内に撮影した次の4点です。
| ① | 営業所の外観(建物の全景がわかるもの)。ビル内等の場合は、建物入口部分・テナント表示(テナント表示がない場合は商号が判読できる集合郵便受け)も必要 |
| ② | 営業所の名称が確認できる入口付近 |
| ③ | 営業所の内部(建設業で使う事務用品や電話などを含む事務スペースの様子) |
| ④ | 建設業法第40条に規定する標識の写真(許可がある場合のみ。掲示状況および記載内容がわかるもの) |
愛知県の参考様式には、注意点として建物の一部しか写っていないものは差し替えが必要なことがある、来客対応用の応接室ではなく事務スペースを撮影すると明記されています。あわせて、写真内に撮影日を印字するか台紙等に撮影日を記載し、建物の権利関係(自己所有、賃貸借等)も記載します。
なお、営業所の確認資料は、般・特新規申請・業種追加申請で営業所の新設を伴わない場合および更新申請では不要です。
書類そのものは正しいのに、順番や時期を誤ったために受け付けられないケースがあります。書き直しでは解決できないため、影響が最も大きい類型です。
▶経営業務の管理責任者や営業所技術者等を変更したのに変更届を出していない場合、更新申請に現在の状況を記載して届出を省略することはできません。これらの変更届は、変更の事由が発生してから14日以内に提出する必要があります。
▶建設業許可の更新申請の際には、前回申請から更新申請までの間の事業年度終了届出書が提出されている必要があります。
そのほか、期限に関して押さえておきたい点は次のとおりです。
▶更新申請は、原則として有効期間満了の日の3か月前から30日前までに行う
▶許可の有効期間を経過すると更新はできず、新規申請となる(財産要件の確認も省略されない)
▶有効期間の満了日が日曜日等の閉庁日でも、その日が満了日
▶業種追加+更新(申請区分7・8・9)は、必ず許可期間満了の日の30日前までに申請する。30日前以降の本受付になる場合は、更新と業種追加をそれぞれ別の申請に分けることになる
▶愛知県では、更新等で有効期限の30日前までに提出できない場合、電子申請システムでの受付を行わない(紙申請となる)
▶決算期末から間もない場合、愛知県は事業年度末から4か月以内の申請(本受付)について前々年度決算での提出も認めている
出典:愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答 令和8年4月1日版」Q1-15、Q3-1~Q3-6、Q4-6、Q4-7、Q5-1、Q2-28/同「申請手続編」56ページ
受付が済んだ後で記載の誤りに気づいた場合、対応は閲覧に供されているかどうかで変わります。
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 受付したばかりで、まだ閲覧に供していない | 訂正・差替願の提出は不要。窓口で修正・差替 |
| 閲覧に供している | 訂正・差替願の提出が必要(1部)。修正する副本も持参 |
内容によっては修正・差替ができない場合(経営事項審査を受けた後の当該事業年度終了届出書の修正や差替など)があります。閲覧に供されているかどうか、修正・差替ができるかどうかは、管轄の窓口へ確認してください。
▶申請書に押印していないか(行政書士作成分は記名・職印があるか)
▶令和6年12月13日施行の改正に対応した新様式か
▶正本1部・副本1部がそろい、証明書は正本に原本・副本に写しか
▶後見等登記事項証明書・身元証明書・履歴事項全部証明書が申請時3か月以内か
▶氏名・商号の使用文字が全体で統一されているか(様式第七号項番20・21、様式第八号項番63は戸籍上の文字)
▶様式第二号の業種別合計=様式第三号の計=損益計算書の完成工事高になっているか
▶常勤性の資料は①から順に確認した結果のものか(標準報酬決定一覧表を使っていないか)
▶マイナンバーや被保険者記号・番号のマスキングをしたか
▶残高証明書の基準日が申請直前4週間以内か
▶営業所の写真は4点そろい、撮影日と権利関係を記載しているか
▶未提出の変更届・事業年度終了届が残っていないか
▶提出票を添付したか(郵送・投函の場合)
Q.すでに提出済みの資格証の写しを、また出さなければいけませんか。
既に写しを提出済みの資格証明書等により、今回申請する許可の営業所技術者等としての資格を有することを証明できる場合、同じ資格証明書等を再度提出する必要はありません。ただし、営業所技術者等をやめた方が再度営業所技術者等になる場合は、前回と同じ資格であっても資格証の写しの添付が必要です。
Q.技術検定に合格しましたが、合格証明書がまだ届きません。申請できませんか。
原則は合格証明書により確認されますが、合格証明書の交付までに時間がかかることから、合格後6か月までの期間においては、試験実施機関が発行する合格通知書により確認できるとされています。合格証明書を受領した後は、合格通知書による確認はできません。この取扱いは建設業法の「技術検定」の資格のみに認められています。
Q.変更届と更新申請を同時に出します。身元証明書は1部でよいですか。
変更届出書と申請書はそれぞれ別の手続きの提出書類となるため、どちらにも添付が必要です。
Q.健康保険等について、一部加入していない従業員がいます。未加入になりますか。
加入の確認は従業員ごとではなく事業所ごとに行われるため、一部加入していない従業員がいても、事業所として加入していれば加入有の「1」を記載します。ただし、加入義務があるのに加入していない場合は許可を受けられません。加入義務の有無は、健康保険(協会けんぽ)・厚生年金は年金事務所、雇用保険はハローワークへ確認してください。
▶愛知県は仮受付→補正→本受付の二段階。不備があるかぎり本受付に進まない
▶取り下げても不許可でも手数料は還付されない
▶押印は廃止、ただし行政書士作成分は記名・職印が必要
▶令和6年12月13日施行の改正に伴う新様式での提出が求められている
▶要件証明(経管・営業所技術者等)の不備は資料収集からやり直しになるため影響が大きい
▶特定建設業の下請金額5,000万円と、指導監督的実務経験の4,500万円を混同しない
▶工事経歴書・様式第三号・損益計算書の数字は必ず突き合わせる
▶残高証明書は基準日4週間以内。最後に取得する段取りにする
▶営業所の写真は4点。応接室ではなく事務スペースを撮る
▶更新の前に、変更届と事業年度終了届の未提出をすべて解消しておく
▶閲覧に供された後の修正には訂正・差替願が必要
不備の多くは、書き方そのものより準備の順番で決まります。特に更新は、期限から逆算して変更届と決算報告を先に片づけておくかどうかで、余裕がまったく変わります。
書類を作ってから見直すのではなく、着手前に要件と資料の当たりをつけるところからお手伝いします。
「自分で作ったが不安なので見てほしい」「補正の指示が来たが意味が分からない」といったご相談も承ります。LINEなら夜間・土日も対応します。
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