

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「建設業をやめることにした」「今期から解体はやらないので許可を返したい」——このとき必要になるのが廃業届です。
結論として、廃業等の事実が発生した日から30日以内に届け出なければなりません。届出を怠ると10万円以下の過料の対象になります。
この記事では、廃業届が必要になるケース、誰が届け出るのか、全部廃業と一部廃業で必要書類がどう変わるのか、そして「廃業届を出す前に検討したほうがよいこと」まで整理します。
建設業許可を受けている方が一定の事由に該当した場合、30日以内に許可行政庁へ届け出る義務があります(建設業法第12条)。愛知県知事許可であれば、届出先は愛知県です。
▶根拠/建設業法第12条(廃業等の届出)
▶期限/該当することとなった日から30日以内
▶様式/廃業届(様式第二十二号の四)
▶提出部数/正本1部及び副本1部の計2部(副本は写し可)
愛知県の「許可を受けた後の届出等一覧」でも、廃業(許可を受けた建設業)の提出期限は廃業から30日以内と明記されています。
出典:愛知県「5.許可後の届出」/建設業法第12条
見落とされがちですが、廃業届は「誰が出すか」まで法律で決まっています。適法な届出者以外の方が届け出た場合、受理されません。
| 廃業等の理由 | 届出者 | 主な添付・確認資料 |
|---|---|---|
| (1) 許可に係る建設業者が死亡したため(個人事業主のみ) | 相続人 | 戸籍謄本等(相続関係及び死亡年月日が分かるもの) |
| (2) 法人が合併により消滅したため | 元役員個人 | 閉鎖事項証明書(消滅した法人のもの) |
| (3) 法人が破産手続開始の決定により解散したため | 破産管財人 | 登記事項証明書(破産が確認できるもの)又は破産管財人の証明書(裁判所証明のものに限る) |
| (4) 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したため | (代表)清算人 | 登記事項証明書(法人が解散したことが確認できるもの) |
| (5) 許可を受けた建設業を廃止したため | 許可を受けた者 | 法人:登記事項証明書(届出時3か月以内、届出時点の代表者が分かるもの)【原本提示】+本人確認資料 |
出典:愛知県「建設業法による変更届等の手引」廃業届(様式第二十二号の四)記載例/建設業法第12条各号
【実務上のポイント】
理由(5)で、届出時点で法人の代表者が変わっている場合は、届出時点での代表者が届出者になります。前代表者名義のまま作成してしまうと受理されませんので、廃業届を作る前にまず登記事項証明書を取得し、現在の代表者を確認しておくことをおすすめします。
廃業届には「1.全部の業種の廃業」と「2.一部の業種の廃業」という区分があります。どちらを選ぶかで、必要書類の量がまったく変わります。
許可を受けているすべての業種をやめる場合です。この場合、廃業届(様式第二十二号の四)のみの提出で足ります。
愛知県のFAQでは、事業年度終了届や変更届に未提出のものがあっても、未提出の変更届等の提出は不要とされています。
許可業種のうち一部だけをやめる場合は、廃業届に加えて、その業種を担当していた営業所技術者等を削除する届出書(様式第二十二号の三)や、変更届出書(様式第二十二号の二 第一面・第二面)が必要になります。
出典:愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答(令和8年4月1日版)」A6-1、A6-2
一部廃業のときは、営業所技術者等をどう扱うかで作成する様式が変わります。愛知県の手引には、次のような事例が示されています。
▶事例1/大工と内装を担当する営業所技術者Aを削除し、大工担当のBを追加、内装は一部廃業
→ 様式第二十二号の三(Aの削除)+様式第八号(Bの追加)+様式第二十二号の四(内装の一部廃業)+様式第二十二号の二(第一面・第二面)
▶事例2/営業所技術者Aの担当業種を内装のみに変更し、大工を廃業
→ 様式第八号(担当業種の変更)+様式第二十二号の四(大工の一部廃業)+様式第二十二号の二(第一面・第二面)
【実務上のポイント】
愛知県の届出一覧では、営業所技術者等の削除(交替者がいない場合)は事実発生後2週間以内とされています。廃業届自体は30日以内ですが、一部廃業に伴って営業所技術者等を削除する場合は、より短い2週間の期限にも注意が必要です。「30日あるから」と考えず、業種をやめると決めた時点で準備を始めてください。
様式第二十二号の四は1枚の用紙ですが、記入欄ごとにルールがあります。
| 記入欄 | 書き方 |
|---|---|
| 届出者の住所 | 廃業届は、法人は登記上の住所、個人は住民票の住所を記載します(他の変更届のように主たる営業所の所在地を書くのではない点に注意) |
| 届出の区分(項番54) | 全部廃業は「1」、一部廃業は「2」 |
| 許可番号(項番55) | 右詰めで記入。有効な許可年月日が複数ある場合は最も古いものを記入 |
| 廃止した建設業(項番56) | 今回廃業する業種を上段に記入 |
| 届出時に許可を受けている建設業(項番57) | 廃業する業種を含めた現在の全許可業種を下段に記入 |
| 一般・特定の別 | 一般は「1」、特定は「2」で記入 |
| 廃業等の理由 | (1)〜(5)のうち不要の文字を消します |
| 行政庁側記入欄 | 枠内は記入しません |
出典:愛知県「建設業法による変更届等の手引」廃業届(建設業の廃業)記載例
【実務上のポイント】
様式の上段には法人の所在地及び商号、下段には相続人・破産管財人・代表清算人・元役員の住所及び職氏名を書きます。理由(5)以外のケースでは、この二段書きになる点を押さえておいてください。届出者が誰になるかは前掲の表で確認できます。
廃業届は、許可を消滅させるという重い効果を持つ届出です。そのため愛知県では、適法な届出者であるかどうかを窓口で確認することとされています。
▶法人/登記事項証明書(届出時3か月以内、届出時点の法人代表者が分かるもの)【原本提示】
▶さらに本人確認資料として①許可通知書・許可申請書副本・届出書副本のいずれか【原本提示】
▶①が提示できない場合は、②ア 事業所名が確認できる書類等(名刺、社員証等)/イ アが提示できない場合は登記事項証明書に記載された役員の運転免許証等
▶個人/上記①、①が提示できない場合は事業主本人の運転免許証等
愛知県の手引には、「登記事項証明書は本人確認書類ではないので、代行申請の場合も必要です」と注意書きがあります。登記事項証明書を持っていけば本人確認は不要、と考えないようにしてください。
なお、一部廃業で経営業務の管理責任者等又は営業所技術者等の変更を伴う場合は、確認書類で本人であることが担保されるため、本人確認資料の提示は不要とされています。
建設業法第55条第1号は、第12条の規定による届出を怠った者を10万円以下の過料に処すると定めています。
【実務上のポイント】
過料そのものが直ちに科されるかは個別の事情によりますが、届出をしないまま放置すると、行政庁の許可業者データと実態がずれたままになります。廃業したはずの許可番号が残っていると、取引先や元請から「まだ許可があるのでは」と照会を受けることもあります。期限を過ぎていることに気づいた場合でも、届出自体は受け付けられますので、気づいた時点で速やかに提出してください。
すべての「やめる場面」で廃業届が必要になるわけではありません。
▶許可の有効期間が満了し、更新せずに許可が失効した場合/廃業届の提出は不要
▶事業譲渡・合併・分割・相続について認可を受けて許可を承継する場合/被承継者の廃業届は不要
出典:愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答(令和8年4月1日版)」A6-3/愛知県「建設業許可申請の手引き」Ⅵ 許可の承継について
なお、許可の更新手続きの流れと期限については、更新申請を解説した記事で詳しくまとめています。更新期限を過ぎると更新申請はできず、改めて新規申請(手数料9万円)が必要になりますので、「廃業か更新か」で迷っている段階での確認をおすすめします。
「廃業届を出す」という判断は、それまで積み上げた許可年数や許可番号を手放すことを意味します。次の2つのケースでは、廃業届以外の選択肢があります。
建設業許可を受けて営業している個人事業主が法人化する場合、方法は2通りあります。
| 方法 | 許可番号 | 許可の空白期間 |
|---|---|---|
| 個人の廃業届+法人の新規申請 | 新たに付与 | 生じ得る |
| 事業譲渡の認可(法第17条の2) | 従前の番号を引き継ぐ | 空白期間なく承継 |
【実務上のポイント】
承継の認可を使う場合、事業譲渡の日より前に認可通知を受ける必要があります。愛知県では、事業譲渡日の3か月前を目処に申請窓口へ事前相談するよう案内されています。また、譲渡の日までは個人事業主として営業を続ける必要があり、その間は経営業務の管理責任者等・営業所技術者等といった許可要件を欠いてはいけません。法人設立の登記日から逆算したスケジュールを、早めに組んでおくことをおすすめします。
事業譲渡・合併・分割については事前に、相続については被相続人死亡後30日以内に認可申請を行うことで、建設業者としての地位を空白期間なく承継できます。ただし被承継者の建設業許可の全部を承継する必要があり、一部だけの承継はできません。承継しない業種がある場合は、認可申請の前にその業種を廃業する必要があります。
愛知県では、窓口での対面審査は行わず、郵送・投函・窓口での仮受付(預かり)という方法がとられています。
▶提出先/主たる営業所の所在地を管轄する建設事務所等(名古屋市内は都市総務課建設業・不動産業室)
▶部数/正本1部及び副本1部の計2部(副本は写し可)
▶手数料/変更届・廃業届に許可手数料はかかりません
▶副本の返却/仮受付時に返信用封筒を提出すれば郵送で返却されます
▶電子申請/廃業届はJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)でも提出可能です
で、GビズIDの準備から手数料の納付方法まで整理しています。
全部の業種を廃業する場合は、廃業届(様式第二十二号の四)のみの提出で足り、未提出の変更届等の提出は不要とされています(愛知県FAQ A6-1)。ただし一部廃業の場合は、変更届出書などが別途必要になります。
可能です。ただし、その時点で改めて新規申請となり、手数料は9万円(知事許可)です。許可番号も新たに付与されます。また、経営業務の管理責任者等・営業所技術者等・財産的基礎といった許可要件を、申請時点で改めて満たしている必要があります。要件を満たせるかどうかは個別事情によって判断が変わりますので、再取得を視野に入れている場合は廃業届を出す前にご相談ください。
必要です。愛知県の手引では、廃業等の届出の委任の範囲について「以下の許可業種に係る建設業法第12条の規定に基づく廃業等の届出に関する一切の件 ○○工事業、○○工事業」という記載例が示されています。委任状は届出ごとに1部作成して原本を提出し、日付は届出の日から3か月以内のものとします。
なお、廃業の理由(5)の場合は、代行申請であっても本人確認資料に代えて届出者からの委任状の提出が必要とされています。
必要になる場合があります。解体工事業の登録を受けている方は、解体工事業を廃業したときは30日以内に解体工事業廃業等届出書(様式第1)の提出が必要です。また、土木工事業・建築工事業・管工事業の建設業許可を廃業した場合は、建設業許可の廃業届の写しを添えて浄化槽工事業の廃業等届出が必要とされています。ご自身がどの登録を持っているか、許可通知書とあわせて確認してください。
▶廃業届は事実が発生した日から30日以内(建設業法第12条)
▶様式は様式第二十二号の四、正本1部・副本1部の計2部
▶届出者は事由ごとに法定されており、適法な届出者以外の届出は受理されない
▶全部廃業なら廃業届のみで足り、未提出の変更届等は不要
▶一部廃業は様式第二十二号の三・第二十二号の二などが別途必要
▶一部廃業に伴う営業所技術者等の削除は2週間以内が期限
▶届出を怠ると10万円以下の過料の対象(建設業法第55条第1号)
▶許可が失効した場合、廃業届の提出は不要
▶法人成りや後継者への引継ぎでは、承継の認可により許可番号を引き継げる場合がある
「廃業届を出すべきか、承継の認可を使えるか」の判断からご相談いただけます。
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