

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「受注は増えたが、現場を任せられる技術者がいない」——建設業許可を持つ会社の多くが直面している問題です。
結論として、技術者が複数現場を兼務できるかどうかは、その工事に「専任」が必要かどうかで決まります。そして令和6年12月13日の改正により、専任が必要な工事であっても、要件を満たせば2現場までの兼任ができるようになりました。
この記事では、専任が不要な工事での兼務と、新設された「専任特例1号」による兼任の2つを分けて、それぞれの条件を整理します。
| ルート | 対象となる工事 | 兼務できる範囲 |
|---|---|---|
| ①従来からの兼務 | 専任が不要な工事 (請負金額4,500万円/建築一式9,000万円未満の工事など) |
職務を誠実に行える範囲であれば複数現場を兼務できる |
| ②専任特例1号 | 専任が必要な工事 (1億円/建築一式2億円未満) |
8つの要件をすべて満たせば2現場まで |
②は令和6年12月13日施行の新しい制度です。監理技術者だけでなく主任技術者にも使えます。
そもそも自社の工事に専任が必要かどうかは、技術者の専任とはの記事で判定方法を解説しています。まずはそちらで自社の工事がどちらに当たるかを確認してください。
請負金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)未満の工事など、専任が求められない工事であれば、主任技術者は複数の工事現場を兼務することが可能です。これは改正前から認められている取扱いです。
兼務が認められるのは、当該技術者が各工事現場においてその職務(施工の技術上の管理等)を誠実に行うことが可能な範囲に限られます。何現場までという上限が法令で定められているわけではありませんが、物理的に管理できない数を抱えれば、配置の実態がないと判断されます。
【実務上のポイント】
公共工事では、発注者が独自に兼務の取扱い(兼務できる現場数、事前の承諾手続など)を定めている場合があります。入札公告や特記仕様書、発注者の技術者取扱い基準を確認したうえで配置を決めることをおすすめします。建設業法上は問題なくても、発注者の基準に反すれば契約上の問題になります。
令和6年12月13日施行の改正により、生産性向上のため、情報通信機器を活用する等の一定の要件に合致する工事については、専任が必要な工事でも兼任が可能になりました(建設業法第26条第3項第1号、第4項)。これを実務上「専任特例1号」と呼びます。
▶主任技術者・監理技術者のどちらにも適用できる
▶兼任できるのは2工事現場まで
▶8つの要件をすべて満たす必要がある(1つでも欠ければ使えない)
出典:国土交通省「現場技術者の専任合理化(R6.12.13施行)」/建設業法第26条第3項第1号・第4項
| No | 要件 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 請負金額 | 兼任する各工事が1億円(建築一式工事は2億円)未満であること(施行令第28条) |
| ② | 兼任現場数 | 2工事現場以下であること(施行令第30条) |
| ③ | 工事現場間の距離 | 1日の勤務時間内に巡回可能であり、かつ一方の現場で災害・事故等が発生した場合の現場間の移動時間がおおむね2時間以内であること(移動時間は片道) |
| ④ | 下請次数 | 当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて3次までに限られること |
| ⑤ | 連絡員の配置 | 技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者を各工事に置くこと |
| ⑥ | 施工体制の確認措置 | 情報通信技術を利用して現場の施工体制を確認するための措置を講じていること |
| ⑦ | 人員配置計画書 | 人員の配置を示す計画書を作成し、工事現場に備え置き、帳簿の保存期間と同じ期間営業所で保存すること |
| ⑧ | 情報通信機器の設置 | 現場外から現場の状況を確認できる映像・音声の送受信が可能な機器と通信環境が確保されていること |
連絡員は、技術者が遠隔から指示を出す際に、現場側で適切に伝達し、円滑な施工管理の補助(事故等への対応を含む)を行う役割を担います。
▶各工事に置く必要があるが、同一の連絡員が複数工事を兼務することは可能
▶1つの工事に複数の連絡員を配置することも可能
▶当該工事への専任や常駐は求められない
▶直接的・恒常的な雇用関係は必要ない
▶土木一式工事・建築一式工事の場合は、その工事の実務経験を1年以上有する者に限る
【実務上のポイント】
連絡員には雇用関係の縛りがないため、技術者本人ほど確保は難しくありません。ただし施工管理の最終的な責任は請負会社が負うことに変わりはなく、連絡員を置いたからといって技術者の責任が軽くなるわけではありません。誰を連絡員にするかは、緊急時に現場で判断・伝達ができる人物かどうかで選ぶ必要があります。
▶⑥施工体制の確認/現場作業員の入退場を遠隔から確認できるものとし、CCUS(建設キャリアアップシステム)またはCCUSとAPI連携したシステムが望ましいが、遠隔から入退場を確認できるシステムであれば他のものでも可
▶⑧現場状況の確認/遠隔の現場との情報のやりとりが確実にできればよく、一般的なスマートフォンやタブレット端末、WEB会議システムでも差し支えない
山間部等で遠隔からの確実な情報のやりとりができない工事現場は、この要件に該当しないとされています。着工前に現場の通信環境を確認しておく必要があります。
⑦の計画書は、専任特例1号を使ううえで実務的な負担が最も大きい部分です。記載事項は施行規則で定められています。
▶建設業者の名称および所在地
▶主任技術者または監理技術者の氏名
▶当該技術者の1日あたりの時間外労働の見込みおよび実績
▶各工事の名称・所在地・工事内容・請負代金の額
▶工事現場間の移動時間
▶実際に締結された一次・二次・三次下請契約
▶連絡員の氏名・所属会社(一式工事の場合は実務経験の内容も)
▶施工体制を確認する情報通信技術の措置の内容
▶現場状況確認のための情報通信機器の内容
計画書は工事現場に備え置き、あわせて帳簿の保存期間と同じ期間、営業所で保存する必要があります。国土交通省が参考様式を公開しています。
【実務上のポイント】
「技術者の1日あたりの時間外労働の見込みと実績」を記載させる点に、この制度の趣旨が表れています。兼任は人手不足を補うための制度ですが、技術者1人に長時間労働を集中させることを容認する制度ではありません。実績まで記録が求められる以上、労働時間の管理体制も併せて整備しておく必要があります。
専任特例1号は、工事の全期間を通じて要件を満たしている必要があります。
| 状況 | その後の扱い |
|---|---|
| 工事途中で請負代金が1億円(建築一式2億円)以上になった | それ以降は専任特例を活用できず、専任で配置しなければならない |
| 工事途中で下請次数が3を超えた | それ以降は専任特例を活用できず、専任で配置しなければならない |
増額変更や下請次数の増加が見込まれる工事では、兼任を前提とした人員計画を組むこと自体がリスクになります。
▶専任特例1号と専任特例2号(監理技術者補佐を置く方法)の併用はできない
▶営業所技術者等が現場を兼務する制度と、専任特例の併用はできない
▶専任特例1号の現場と「専任を要しない現場」を兼務することは可能。ただしその非専任現場も請負金額以外の全要件を満たし、かつ全工事現場数が2を超えてはならない
3つ目は見落としやすい点です。「専任特例1号で1現場、加えて小規模な現場をもう2つ」といった持ち方はできません。
専任特例1号を適用している場合、工事現場に掲げる標識の「専任の有無」欄には、「非専任(情報通信技術利用)」と記載します。
| 該当する規定 | 「専任の有無」欄の記載 |
|---|---|
| 法第26条第3項本文(原則) | 専任 |
| 法第26条第3項第1号(専任特例1号) | 非専任(情報通信技術利用) |
| 法第26条第3項第2号(専任特例2号) | 非専任(監理技術者を補佐する者を配置) |
許可票(金看板)のサイズ・様式・掲示場所のルールもあわせてご確認ください。
▶専任が不要な工事(4,500万円/建築一式9,000万円未満など)は、職務を誠実に行える範囲で複数現場を兼務できる
▶専任が必要な工事でも、令和6年12月13日施行の専任特例1号により2現場まで兼任が可能になった
▶専任特例1号は主任技術者にも使える
▶要件は8つあり、1つでも欠ければ使えない
▶請負金額は1億円(建築一式2億円)未満、下請次数は3次まで、現場間の移動時間はおおむね2時間以内
▶各工事に連絡員を置き、情報通信技術による施工体制の確認と現場状況確認の機器が必要
▶人員の配置を示す計画書を作成し、現場に備え置き、営業所で保存する
▶途中で1億円以上または下請4次になったら、以降は専任配置に戻す
▶専任特例2号や営業所技術者等の兼務制度との併用はできない
限られた技術者で現場を回すための配置の考え方についてご相談ください。
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