

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
建設業許可には、経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者等の両方が必要です。ここで多いのが「うちは社長ひとりだから、2人そろえられない=許可は取れない」という思い込みです。
結論から言うと、同じ人が経管と営業所技術者等を兼務することはできます。一人親方でも、要件さえ満たしていれば建設業許可は取得できます。
ただし、兼務が認められるのは同一の営業所内に限られます。この記事では、兼務の根拠と、認められる範囲・認められない範囲を整理します。
経営業務の管理責任者と営業所技術者等(旧:専任技術者)は、役割が違うため兼務できないと思われがちですが、そうではありません。
役員という地位は、経管としても営業所技術者等としても認められます。つまり、本店(主たる営業所)に常勤する役員が、経管の要件も満たし、一定の国家資格を持っていて営業所技術者等の要件も満たしている場合は、その両方になれるということです。
これは行政の解釈でもはっきりしていて、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」に明記されています。
【第5条及び第6条関係】
2.許可申請書類の審査要領について
(5)常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(様式第七号)について
①規則第7条第1号イに該当する常勤役員等(以下「常勤役員等」という。)が同時に営業所技術者等の要件を備えている場合には、同一営業所(原則として本社又は本店等)内に限って当該営業所技術者等を兼ねることができる。
出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」より
逆に言えば、兼務を検討するときに確認すべきなのは「兼務していいかどうか」ではなく、常勤と専任の条件をクリアできているかどうかです。ここから順に見ていきます。
建設業許可の要件である経管も営業所技術者等も、どちらも営業所に常勤することが求められています。
【実務上のポイント】
「常勤」とは、原則として勤務しない日を除き、一定の計画の下に毎日所定の時間中、その職務に従事していることをいいます。
そのため、複数の会社に所属して、そのいずれでも常勤である、という状態は認められません。
A社で経管になろうとしている人が、他社の役員も兼ねている場合の判定です。
| 判定 | A社(許可申請者) | B社 | 理由 |
|---|---|---|---|
| × | 常勤 代表取締役 | 常勤 取締役 | 両方で常勤は成り立たない |
| ○ | 常勤 代表取締役 | 非常勤 取締役 | 常勤はA社のみ |
他社の役員を兼ねていること自体が問題なのではなく、常勤が二重になっていることが問題です。B社側を非常勤に整理できるのであれば、A社での要件は満たせます。
常勤であることの証明や確認の方法はいくつかあり、許可行政庁によって確認方法は異なります。
▶健康保険/建設業許可を申請する建設業を営む者で適用されているか
▶役員報酬/常勤に相応した金額であるか
▶通勤距離/住所と営業所の所在が毎日通勤できる距離であるか
確認方法は行政庁ごとに違いますが、いずれの場合も実態として「常勤」であれば、証明することが難しいものではありません。逆に、実態が伴っていない場合にここを取り繕おうとすると、まず通りません。
営業所技術者等には、常勤に加えてもう一つ「専任」という条件がつきます。ここが兼務の範囲を決める部分です。
営業所技術者等は、建設業を営む営業所ごとに配置しなければなりません。そのため本店(主たる営業所)以外にも複数の支店(従たる営業所)等がある建設業者の場合、営業所技術者等が営業所ごと・許可業種ごとに、何名も必要になります。
そして、営業所技術者等は配置された営業所において専任でなければなりません。
本店の営業所技術者等となった場合、支店の営業所技術者等を兼ねることはできません。
営業所技術者等がどの営業所に配置されているのかは、許可行政庁のデータベースで管理されています。配置された営業所が変更になる場合には、建設業法で定められた変更の手続きが必要です。
兼務を考えるうえで、そもそも「なれる人」の条件が両者で違う点も押さえておく必要があります。
| 経営業務の管理責任者 | 営業所技術者等 | |
|---|---|---|
| 地位(役職) |
役員であることが必要 |
問われない |
| 常勤 | 必要 | 必要 |
| 専任 | - | 営業所ごとに必要 |
| その他 | 経営経験 | 一定の資格または実務経験 |
経管には地位(役職)の条件があるのに対し、営業所技術者等はその営業所に常勤で、一定の資格や実務経験があれば、役員でも従業員でもなれるという違いがあります。営業所技術者等には、経管のような地位の要件は求められていません。
支配人とは
営業主に代わって、その営業に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をなす権限を有する使用人をいいます。これに該当するか否かは、商業登記の有無を基準として判断されます。
ここまでの条件を組み合わせると、兼務の可否は次のように整理できます。
▶本店で経管となっている人が、本店の営業所技術者等を兼務する/○ できる
▶本店で経管となっている人が、支店の営業所技術者等を兼務する/× できない
本店で経営業務の管理責任者となっていれば、本店の営業所技術者等を兼務することはできますが、常勤性の問題から、他の営業所の営業所技術者等を兼ねることはできません。
つまり兼務ができるのは、あくまで営業所が同一の場合です。ガイドラインが「同一営業所(原則として本社又は本店等)内に限って」と書いているのは、この趣旨です。
【実務上のポイント】
支店を出すときに見落とされやすい部分です。本店の社長が経管と営業所技術者等を兼務している会社が支店を新設する場合、支店には別の営業所技術者等を用意しなければなりません。人員の手当てがつかないまま支店を建設業の営業所として届け出ると、要件を欠くことになります。
営業所技術者等の資格要件や実務経験の考え方については、別記事で詳しく解説しています。
経管の要件そのもの(誰がなれるか)についても、別記事にまとめています。
兼務ができないとすると、一人親方や社長ひとりの会社は建設業許可が取れないことになってしまいます。実際にはそうではありません。
本店に常勤する役員(個人の場合は本人または支配人)が、経管の要件を満たし、かつ資格または実務経験で営業所技術者等の要件も満たしていれば、その人ひとりで両方を担えます。営業所が本店だけであれば、専任の問題も起きません。
許可を検討する段階で確認すべきなのは、次の2点です。
▶経営経験/建設業に関する経営業務の経験年数が足りているか
▶資格・実務経験/取りたい業種で営業所技術者等になれる資格または実務経験があるか
このどちらかが欠ける場合は、外部から人を迎えるという選択肢もあります。その場合も、迎えた人が自社で常勤になれるかが判断の分かれ目になります。
▶経管と営業所技術者等は、同じ人が兼務できる(建設業許可事務ガイドラインに明記)
▶ただし兼務できるのは同一営業所内に限られる
▶どちらも常勤が必要で、複数社での二重の常勤は認められない
▶営業所技術者等は営業所ごとに専任。本店と支店の掛け持ちはできない
▶経管は役員(個人は本人または支配人)であることが必要、営業所技術者等は地位を問わない
▶一人親方・社長ひとりの会社でも、要件を満たせば建設業許可は取得できる
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