

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「決算は税理士さんに任せているから大丈夫」——建設業許可を持っている会社では、それだけでは足りません。
結論として、建設業許可業者は毎事業年度経過後4か月以内に、決算変更届(事業年度終了届)を提出する義務があります。これは建設業法第11条第2項に定められた法律上の義務です。
出し忘れると5年に一度の更新ができなくなります。この記事では、期限の数え方、必要書類、税務署の決算書との違い、そして愛知県での提出方法を整理します。
▶根拠は建設業法第11条第2項
▶期限は毎事業年度経過後4か月以内
▶法人も個人事業主も対象。工事の実績がなかった年も提出が必要
▶提出しないと許可の更新申請ができない
▶手数料はかからない
1年間の施工実績と財務内容を許可行政庁に報告するための届出です。決算が終わってから作るものなので、税務申告のスケジュールと連動します。
呼び方が複数あるため混乱しやすいのですが、いずれも同じ手続きを指します。
▶事業年度終了届(事業年度終了届出書)/愛知県が正式名称として使用
▶決算変更届/実務上よく使われる通称
▶決算報告、決算届/同じものを指すことがある
愛知県の様式や手引では「事業年度終了届出書」と表記されています。窓口や書類作成の場面では、この名称で統一しておくと迷いません。
「毎事業年度経過後4か月以内」ですので、決算月によって期限が変わります。
| 事業年度の末日 | 提出期限 |
|---|---|
| 3月31日 | 7月31日 |
| 5月31日 | 9月30日 |
| 9月30日 | 1月31日 |
| 12月31日(個人事業主はここ) | 4月30日 |
個人事業主の事業年度は1月1日から12月31日までですので、期限は毎年4月末です。
決算変更届は税務申告を終えてから作成します。法人税の申告期限が決算後2か月であることを考えると、届出まで実質2か月程度しかありません。「4か月あるから大丈夫」と考えていると、決算書が出来上がるのを待つうちに期限が近づきます。決算が確定した段階ですぐ着手できるよう、工事の記録は期中から整理しておくことをおすすめします。
| 書類 | 様式 | 法人 | 個人事業主 |
|---|---|---|---|
| 表紙(愛知県独自様式) | - | ○ | ○ |
| 工事経歴書 | 第2号 | ○ | ○ |
| 直前3年の各事業年度における工事施工金額 | 第3号 | ○ | ○ |
| 貸借対照表 | 第15号/第18号 | ○ | ○ |
| 損益計算書(法人は完成工事原価報告書を含む) | 第16号/第19号 | ○ | ○ |
| 株主資本等変動計算書 | 第17号 | ○ | - |
| 注記表 | 第17号の2 | ○ | - |
| 事業税の納税証明書(県税事務所発行) | - | ○ | ○ |
| 事業報告書(写し可) | 任意様式 | 株式会社のみ | - |
| 附属明細表 | 第17号の3 | 一定規模のみ | - |
| 使用人数(変更があれば) | 第4号 | △ | △ |
| 定款又は議事録(変更があれば) | - | △ | - |
| 健康保険等の加入状況(従業員数欄の変更のみ) | 第7号の3 | △ | △ |
出典:愛知県「建設業法による変更届等の手引(事業年度終了届編)」
附属明細表(様式第17号の3)が必要なのは、資本金の額が1億円を超える、又は直前の貸借対照表の負債合計が200億円以上の株式会社に限られます。中小の建設業者では通常必要ありません。
【実務上のポイント】
表紙は愛知県の独自様式で、JCIP(電子申請)で届け出る場合も必ず作成・添付が必要とされています。システム上で作成される書類だけで完結すると思い込まないよう、提出前にご確認ください。
決算変更届でいちばん時間がかかるのが工事経歴書(様式第2号)です。許可を受けている業種ごとに1枚ずつ作成します。
記載する範囲(経営事項審査を受けない場合)
▶申請する日の属する事業年度の「前事業年度に完成した工事」を記載する
▶年間完成工事高の60%を超えるまで、又は10件までの、どちらか少ない件数
▶請負金額の大きい順に記載する
▶工事実績がない業種は「該当工事なし」と記載する
許可を受けていない業種の工事
許可業種以外の建設工事を請け負った場合は「その他工事」として別に工事経歴書を作成します。実績がなければ、その他工事の工事経歴書は作成しません。
【実務上のポイント】
工事名は契約書のとおりで構いませんが、それだけでは工事内容が分からないことがあります。例えば「交通安全施設工事」では業種が特定できません。区画線の設置であれば「(区画線設置工事)」と補記して塗装工事に、防護柵の設置であれば「(防護柵設置工事)」と補記してとび・土工・コンクリート工事に振り分けます。公共工事の発注業種が、そのまま建設業法上の業種とは限らない点にご注意ください。
【実務上のポイント】
着工年月は契約書の着工日ではなく実際に工事に着手したとき、完成年月は引き渡したときを記載します。また、注文者名や工事名は、その内容によって個人の氏名が特定されないように記載します。個人宅の工事は「A邸」「E邸改築工事」のように書きます。
保守点検や維持管理業務(樹木の剪定など)は役務の提供にあたり、工事には該当しません。完成工事高に含めないよう注意してください。
決算変更届でつまずきやすいのがここです。税理士が作成した決算書をそのまま提出することはできません。建設業法施行規則で定められた様式(様式第15号〜第19号)に組み替える必要があります。
| 一般的な決算書 | 建設業財務諸表 |
|---|---|
| 売上高 | 完成工事高/兼業事業売上高 |
| 売上原価 | 完成工事原価/兼業事業売上原価 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 |
| 買掛金 | 工事未払金 |
| 仕掛品 | 未成工事支出金 |
| 前受金 | 未成工事受入金 |
法人の場合は、損益計算書とあわせて完成工事原価報告書(材料費・労務費・外注費・経費の内訳)の作成が必要です。この4区分に振り分ける作業が、初めて作る方にとって最も手間のかかる部分になります。
【実務上のポイント】
長期借入金のうち、決算後1年以内に返済する予定額は流動負債(短期借入金)に振り替える必要があります。分割返済の定めがあるものは、返済予定表から1年以内の返済額を算定してください。ここを誤ると流動比率が実態と変わってしまい、特定建設業の財産的基礎の判定や経営事項審査の評点にも影響します。
愛知県知事許可の場合、県税事務所が発行する事業税の納税証明書(納付すべき額及び納付済額の記載のあるもの、原本)を添付します。
赤字決算などで課税額が無い場合であっても、納税証明書の添付が必要とされています(愛知県FAQ A5-1)。「税金がかかっていないから不要だろう」と省略すると補正になります。県税事務所で取得できるようになるタイミングは申告後になりますので、申告が済んだら早めに請求しておきましょう。
(1)許可の更新ができない
更新申請の際には、前回申請から更新申請までの間の事業年度終了届出書がすべて提出されている必要があります。1期でも欠けていると更新手続きに進めません。5年分をまとめて作ることになれば、当時の契約書や請求書を掘り起こす作業から始まります。
(2)経営事項審査が受けられない
経営事項審査は事業年度終了届の提出が前提です。未提出のままでは審査が受けられず、公共工事の入札参加資格にも影響します。
(3)罰則
建設業法第50条第1項第2号により、第11条第1項から第4項までの書類を提出せず、又は虚偽の記載をして提出した者は、6月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金の対象となります。
愛知県の手引でも、複数年分をまとめて提出することのないように、提出期限を守るよう明記されています。
公共工事の入札に参加するために経営事項審査(経審)を受ける場合は、決算変更届の作り方が変わります。
▶工事経歴書の記載範囲が「60%・10件」ではなく、元請工事70%基準などのルールになる
▶財務諸表は税抜処理とする必要がある(免税事業者を除く)
▶表紙の「経営事項審査を申請する」欄に「○」を付し、提出時にその旨を申し出る
▶JCIPで提出する場合は「経営事項審査 受審の有無」をシステム上で入力する
愛知県の手引には、表紙の該当欄に「○」を付さない場合、職員は経営事項審査申請についての意思確認を行わないと明記されています。経審の審査予約は事業年度終了届の提出時に申し出る仕組みですので、忘れると審査のスケジュールが1か月単位でずれます。経審を受ける予定がある方は、決算変更届の作成に入る前に必ず確認してください。
経営事項審査の流れとスケジュールについては別記事で解説しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出部数 | 正本1部及び副本1部の計2部(副本は写し可) |
| 提出先 | 主たる営業所の所在地により異なる。名古屋市内は建設業・不動産業室、それ以外は各建設事務所総務課 |
| 提出方法 | 郵送・投函・窓口での仮受付(対面審査は行わない) |
| 提出票 | 「提出票(事業年度終了届)」を添付(郵送・投函用と窓口用で様式が分かれています) |
| 費用 | 不要 |
| 電子申請 | JCIPで提出可能(GビズIDが必要)。表紙は電子申請でも作成・添付 |
副本は返却されます。返却された副本は更新申請や経営事項審査で使いますので、必ず保管してください。
必要です。工事経歴書には「該当工事なし」と記載し、直前3年の各事業年度における工事施工金額も実績なしとして作成します。財務諸表や納税証明書も通常どおり必要です。
受付はされますが、愛知県の手引では複数年分をまとめて提出することのないようにと明記されています。過去分は当時の様式・当時の決算内容で作成する必要があり、資料の掘り起こしに時間がかかります。更新期限が近い場合は特に急いでください。未提出分が残っていると更新申請に進めません。
決算変更届に添付する事業報告書は、会社法上、株式会社が「計算書類等」として作成を義務づけられているものです。定時株主総会で取締役が提出し報告した、既に作成されている事業報告書の写しを添付します。非公開会社の場合は、その株式会社の状況に関する重要な事項のみを記載することとされています。詳しい記載内容は、計算書類等を作成した会計士・税理士にご確認ください。なお、株式会社のみが対象で、特例有限会社・合同会社・個人事業主は不要です。
記載します。外国での工事は建設業法の適用外ですが広義の完成工事には該当するため、工事経歴書及び直前3年の工事施工金額に記載します。ただし建設業法上の業種区分になじまないことから「その他工事」として記載し、現場名は国名及び州・省まで記載します。建設業法の適用外であるため、配置技術者は記載しません(愛知県FAQ A5-5)。
▶決算変更届=事業年度終了届。毎事業年度経過後4か月以内が期限(建設業法第11条第2項)
▶個人事業主は毎年4月30日が期限
▶工事実績がない年も提出が必要
▶工事経歴書は、経審を受けない場合「完成工事高の60%超まで、又は10件まで」の少ないほう
▶許可業種以外の工事は「その他工事」として別に作成する
▶財務諸表は建設業法の様式に組み替えが必要。税務署の決算書はそのまま使えない
▶事業税の納税証明書は、課税額がゼロでも添付が必要
▶事業報告書は株式会社のみ
▶未提出のままでは更新申請も経営事項審査もできない
▶手数料は不要。愛知県では郵送・投函・窓口仮受付、JCIPでの電子申請も可能
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