【愛知県の建設業許可】建設業許可の経管には誰がなれる?|常勤役員等の要件と令3条使用人を解説

【愛知県の建設業許可】建設業許可の経管には誰がなれる?|常勤役員等の要件と令3条使用人を解説

経営業務の管理責任者は「現在の地位」と「過去の経験」の掛け算で判断されます。常勤役員等になれる人・なれない人、令3条使用人の扱い、部長を経管にする方法、経験年数が足りない場合の組織パターンまで愛知県稲沢市の行政書士が解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


建設業許可でつまずく理由の大半は、経営業務の管理責任者——いわゆる「経管」です。
「社長が長年やってきたから大丈夫だろう」と思っていたら、過去の地位が要件に合わず不許可になる、というケースがあります。


経管は「誰でもいい」わけではなく、現在どの立場にいるか過去にどの立場で何年経験したかの両方で判断されます。この記事では、経管になれる人・なれない人を整理します。



結論:経管は「現在の地位」と「過去の経験」の掛け算です    CONCLUSION

経営業務の管理責任者の要件は、条文を分解すると次の式で表せます。


経営業務の管理責任者要件の方程式

経営業務の管理責任者(個人)=「現在の地位」+(「過去の地位」×「経験年数」)


現在の地位:常勤の取締役、個人事業主、支配人 等(=常勤役員等)
過去の地位:取締役、令3条使用人、個人事業主、支配人 等
経験年数:建設業に関する5年以上の経営業務の管理責任者としての経験 等

重要なのは、すべての要素が揃わなければ要件を満たさないという点です。「経験は十分だが今の立場が違う」「立場は役員だが経験年数が足りない」——どちらも不許可になります。


判定 現在の地位 過去の地位 経験年数
不適合 常勤の取締役 ○ 個人事業主 ○ 3年 ×
適合 常勤の取締役 ○ 常勤の取締役 ○ 5年 ○
適合 常勤の取締役 ○ 令3条使用人 ○ 5年 ○
不適合 令3条使用人 × 令3条使用人 ○ 5年 ○


一番下の行にご注目ください。経験は文句なしに足りているのに、現在の地位が令3条使用人であるために不適合となっています。ここが実務で最もつまずきやすいポイントです。


なお、2020年10月の法改正により、条文上の呼称は「経営業務の管理責任者」から「常勤役員等」に変わりました。現場では今も「経管」と呼ばれていますので、この記事でも経管という表現を使います。


「現在の地位」=常勤役員等になれる人    POSITION

まず、現在の地位から確認します。建設業法施行規則第7条第1号は、経管となる者を「常勤役員等」と定めています。


この常勤役員等に該当するのは、次の者です。


▶業務を執行する社員/持分会社(合同会社・合名会社・合資会社)の業務を執行する社員
▶取締役/株式会社の取締役
▶執行役/指名委員会等設置会社の執行役
▶これらに準ずる者/法人格のある各種組合等の理事 等
▶個人事業主本人、またはその支配人


法人であれば「役員のうち常勤であるもの」、個人であれば「その者本人または支配人」という整理です。


原則として常勤役員等に含まれない人

逆に、次の立場の方は原則として常勤役員等に含まれません。名刺の肩書きに「役員」と入っていても、建設業法上は別の扱いになります。


立場 扱い
執行役員 原則として含まない(条件を満たせば例外あり/後述)
監査役 含まない
会計参与・監事 含まない
事務局長 原則として含まない
令3条使用人(支店長・営業所長) 含まない(ただし過去の経験としては有効)


監査役は会社の業務執行を監督する立場ですから、自ら経営業務を執行する経管とは両立しません。ここは例外なく認められないとお考えください。


【実務上のポイント】
非常勤の取締役も経管にはなれません。「役員として登記はされているが、実際は別の会社で常勤している」という方を経管として申請すると、常勤性の確認資料の段階で必ず問題になります。
登記上の役員であることと、常勤であることは別の話です。
なお、愛知県では令和7年12月2日以降、健康保険被保険者証を常勤性の確認資料として使用できません。現在は健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定通知書の写しが第一順位の資料になります。用意できる資料があるか、申請前に確認しておいてください。



令3条使用人は経管になれるのか    SHIYONIN

上の表で唯一「ただし書き」がついているのが令3条使用人です。ここは誤解が多いので、独立して整理します。


令3条使用人とは、建設業法施行令第3条に規定する使用人の略称で、本店以外の営業所で請負契約を締結する権限を与えられた責任者のことです。支店長、営業所長、支配人といった立場の方が該当します。


この令3条使用人は、経管との関係でまったく逆の2つの顔を持ちます。


場面 可否 理由

現在の地位として
 (今から経管になる)

× 令3条使用人は常勤役員等に含まれないため

過去の地位として
 (経験年数を数える)

経営業務の管理責任者としての経験として、年数に算入できる


つまり、支店長を5年務めた方が、その後に取締役へ就任すれば経管になれます。逆に、支店長のままではいくら経験を積んでも経管にはなれません。


親会社や他社で令3条使用人だった期間も、建設業に関する経験であれば算入できます。ただし前職での経験を使う場合は、その会社に証明者になってもらう必要があります。円満退社でないと資料が集まらず、事実上使えないケースもあります。


令3条使用人そのものの要件(常勤性・テレワークの可否・様式第十一号の届出・変更届の期限)については、令3条使用人の要件と届出を解説した記事で詳しく整理しています。支店の新設や支店長の交代を予定されている方は、あわせてご覧ください。

部長・執行役員は経管になれるのか    EXCEPTION

「取締役ではないが、実質的に経営を任されている部長」を経管にできないか——これは非常によくあるご相談です。


結論として、部長や執行役員は「業務を執行する社員」「取締役」「執行役」のいずれにも該当しません。ただし、常勤役員等の4つ目である「これらに準ずる者」として認められる余地があります。


「これらに準ずる者」の要件と確認資料

国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」では、次の要件をすべて満たす執行役員等は常勤役員等に含まれるとされています。


要件 確認資料
①業務を執行する社員、取締役又は執行役に次ぐ職制上の地位にあること ・組織図 等
②業務執行を行う特定の事業部門が、許可を受けようとする建設業に関する事業部門であること ・業務分掌規程 等
③取締役会の決議により特定の事業部門に関して業務執行権限の委譲を受ける者として選任され、かつ、取締役会の決議により決められた業務執行の方針に従って、代表取締役の指揮及び命令のもとに、具体的な業務執行に専念する者であること

・定款
・執行役員規程
・執行役員職務分掌規程
・取締役会規則
・取締役就業規程
・取締役会の議事録 等


なお、建設業に関する事業の一部のみを分掌する事業部門(一部の営業分野のみを分掌する場合や、資金・資材調達のみを分掌する場合等)の業務執行に係る権限委譲を受けた執行役員等は、「これらに準ずる者」から除かれます。建設部門全体を任されていることが必要です。

証明のハードルは決して低くありません

取締役であれば、登記されているため登記事項証明書1通で地位と権限を証明できます


しかし「これらに準ずる者」は登記される役員ではないため、上の表のような社内規程を一式そろえて、地位と権限を立証しなければなりません。


【実務上のポイント】
会社によって体制は異なり、規程類の内容もさまざまです。また許可行政庁により細部の取扱いが分かれる可能性もあります。
用意した資料で地位と権限を証明できるかどうかは、必ず管轄窓口で事前に確認してください。規程の新規作成や取締役会決議のやり直しが必要になることもありますので、時間に余裕をもって準備することをおすすめします。


「経験」として認められる3つのパターン    EXPERIENCE

次に、過去の地位と経験年数を確認します。建設業法施行規則第7条第1号イは、次の3つを定めています。


建設業法施行規則 第7条第1号イ

(1)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
(2)建設業に関し五年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る。)として経営業務を管理した経験を有する者
(3)建設業に関し六年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者


出典:建設業法施行規則(e-Gov法令検索)

整理すると次のとおりです。


類型 内容 具体例
(1) 経管としての経験5年 建設会社の取締役、個人事業主、令3条使用人 として5年
(2) 経管に準ずる地位で、権限委任を受けて経営業務を管理した経験5年 権限委譲を受けた執行役員として5年
(3) 経管に準ずる地位で、経管を補助した経験6年 個人事業主の配偶者・後継者、専務・常務の補佐 として6年


(3)は補助でも認められる代わりに、必要年数が6年に伸びる点が特徴です。親の個人事業を手伝ってきた後継者の方は、この類型で通ることがあります。


建設業許可を受けている会社での経験である必要はありません。許可がなくても、軽微な工事だけを請け負ってきた実績で経験年数を証明できます。この場合は、期間中の工事請負契約書・注文書・請求書などを年ごとに提出することになります。


経験の証明資料の集め方と、証明者が確保できない場合の対応については、別途整理しています。契約書や注文書が手元にどれだけ残っているか不安な方は、早めに確認しておくことをおすすめします。


経験年数が足りない場合の選択肢    ORGANIZATION

ここまでは個人の経験で要件を満たすパターン(施行規則第7条第1号イ)でした。


実は、2020年10月の改正により、組織として体制を整えることで要件を満たすパターン(同号ロ)も用意されています。経験年数が足りない方にとっては現実的な選択肢です。


常勤役員等+直接補佐者という体制

このパターンでは、常勤役員等本人の経験年数が短くても、それを直接補佐する担当者を置くことで要件を満たします。建設業での経験が2年あれば届く可能性があるのが最大の特徴です。


常勤役員等に求められる経験は、次の2類型のいずれかです。


類型 建設業での経験 業種を問わない経験
役員等として2年以上 役員等または役員等に次ぐ職制上の地位(財務管理・労務管理・業務運営のいずれかを担当)として、通算5年以上
役員等として2年以上 役員等として通算5年以上


どちらも建設業での役員等経験2年以上が土台になります。違いは残りの3年分をどう埋めるかで、①は部長クラスの地位でもよいのに対し、②は役員等である必要があります。①のほうが認められる範囲が広いとお考えください。


直接補佐者に求められる経験

そのうえで、常勤役員等を直接に補佐する者を置きます。


担当業務 求められる経験
財務管理 資金調達、施工に必要な資金の出納など
労務管理 社内・工事現場の人員の配置、労働条件の整備など
業務運営 会社の運営方針や経営計画の策定など
年数 それぞれ5年以上。かつ、申請する会社(申請者)における経験に限られます


補佐者は3つの業務を1人で兼ねても、複数人で分担しても構いません。ただしいずれも申請する会社における経験に限られる点にご注意ください。他社での財務経験は使えません。


【実務上のポイント】
このロのパターンは、社内資料の整備量がイのパターンより格段に多くなります。組織図・業務分掌・補佐者の業務実績を示す書類などを、5年分そろえる必要があるためです。
まずはイのパターンで通せないかを検討し、どうしても届かない場合の次善策と位置づけるのが実務的です。なお愛知県では、常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の変更については事前に相談するよう案内されています。


社内に候補者がまったくいない場合は、要件を満たす方を役員として外部から迎え入れる方法もあります。招へいの進め方と注意点は経管を外部から迎えて建設業許可を取る方法を解説した記事で整理しています。


また、経管と営業所技術者等を同一人物が兼ねられるかについては、経管と営業所技術者等の兼務を解説した記事をご覧ください。一人親方でも許可が取れる理由もこちらで説明しています。


まとめ    SUMMARY

▶経管は「現在の地位」+(「過去の地位」×「経験年数」)で判断される
▶現在の地位は常勤役員等(常勤の取締役・個人事業主・支配人 等)に限られる
▶監査役・会計参与・監事は経管になれない
▶令3条使用人は「今の地位」としては不可だが、「過去の経験」としては算入できる
▶部長・執行役員も、権限委譲を証明できれば「これらに準ずる者」として認められる余地がある
▶経験年数が足りない場合は、補佐者を置く組織パターン(施行規則第7条第1号ロ)も検討できる


経管の要件は、誰を経管に据えるかを決める前に確認すべき事項です。役員登記や人事異動を済ませた後で要件を満たさないと分かると、やり直しに数か月かかることもあります。


経管になれる人がいるかどうかの判定だけでも承ります。役職と在籍年数をお聞かせいただければ、その場でお答えできます。


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・経管候補者の現在の役職:(例:取締役、部長 など)
・建設業での経験年数:(例:前職の支店長を6年 など)