【建設業許可】出向社員でも経管・営業所技術者等になれる?|愛知県で必要な確認資料

【建設業許可】出向社員でも経管・営業所技術者等になれる?|愛知県で必要な確認資料

親会社からの出向で建設業許可の要件を満たせるか。建設業法が求めるのは常勤・専任であり直接雇用は要件ではありません。在籍出向と移籍出向で変わる常勤性の確認方法を、愛知県稲沢市の行政書士が解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「営業所技術者等になれる人が社内にいないので、親会社から出向で来てもらおうと思っている」——建設業許可の相談ではよくある話です。
結論から言うと、経営業務の管理責任者も営業所技術者等も、他社からの出向者がなることは可能です


ただし、条件は出向先で「常勤」といえるかどうか。特に在籍出向の場合は、通常の常勤性の確認に加えて出向契約の中身まで見られます。この記事では、出向の種類ごとの扱いと、確認される資料を整理します。



結論:出向社員でも経管・営業所技術者等になれます    CONCLUSION

建設業法上、経営業務の管理責任者と営業所技術者等(旧:専任技術者)に求められているのは常勤や専任です。

経管と営業所技術者等は、それぞれ所属建設業者との間で直接の雇用になければならない、という規定はありません。そもそも役員の場合、会社との関係は委任関係にあたりますので、雇用関係は求められていません。


▶直接の雇用関係がある場合/もちろんなれる
▶他社からの出向により常勤・専任ができる場合/常勤性・専任性が認められればなれる


この取扱いは、国土交通省の「建設業許可事務ガイドライン」にも明記されています。


建設業許可事務ガイドライン

【第7条関係】
2.営業所技術者等について(第2号)
(1)「専任」の者とは、その営業所に常勤(テレワークを行う場合を含む。)して専らその職務に従事することを要する者をいう。会社の社員の場合には、その者の勤務状況、給与の支払状況、その者に対する人事権の状況等により「専任」か否かの判断を行い、これらの判断基準により専任性が認められる場合には、いわゆる出向社員であっても営業所技術者等として取り扱う


出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」より

判断されるのは、勤務状況・給与の支払状況・人事権の状況です。書類上の所属がどこかではなく、実態として誰の指揮命令下で毎日働いているかを見られます。


そもそも「出向」とは    SHUKKOU

出向とは、労働者が雇用先の会社(出向元)との雇用契約を維持したまま、別の会社(出向先)に異動し、出向先の指揮命令下において勤務するという雇用形態をいいます。


出向には2種類あり、建設業許可の場面では、このどちらなのかで確認のされ方が変わります。


在籍出向 移籍出向(転籍)
出向元の籍 置いたまま 移す
出向元との雇用契約 維持したまま 終了する
出向先との関係

指揮命令関係
(雇用契約は出向元)

新たに雇用契約を結ぶ
実質 2社にまたがる状態 転職と同じ


親会社から人を出してもらうケースの多くは在籍出向です。籍が出向元に残るため、常勤性の確認が一段細かくなります。



出向で経管や営業所技術者等になる場合の注意点    CHECK

経営業務の管理責任者も営業所技術者等も、他社からの出向者がなることは可能ですが、出向先において「常勤」でなければなりません。ここが唯一にして最大の関門です。


移籍出向(転籍)の場合

移籍出向は出向先に籍を移動させてしまうので、転職と同じことになります。したがって、通常の方法で常勤性を判断することができます。


▶健康保険/出向先で適用されているか
▶役員報酬/常勤に相応した金額であるか
▶通勤距離/住所と営業所の所在が毎日通勤できる距離であるか


在籍出向の場合

在籍出向は出向元に籍を置いたままになるため、出向先での常勤性の確認には出向契約の内容も加味されます


在籍出向で見られるポイント

出向者の出向期間給与支払い社会保険の適用に関してなど、複数の点から常勤性の確認を行います。
出向期間が極端に短い、給与が実質的に出向元からしか出ていないといった状態では、出向先の常勤とは認められにくくなります。

常勤性の確認資料については、許可行政庁によって異なります。愛知県知事許可の場合は、手引きに具体的な資料が示されています。


愛知県の場合に必要な確認資料

愛知県では、常勤性の確認資料として次の①~④を挙げ、①から順に確認して、最初に当てはまった資料を用意するよう求めています(いずれも申請時直近のもの)。


順番 確認資料

健康保険・厚生年金標準報酬額決定通知書【写し】
又は厚生年金保険70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ【写し】

住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)【写し】
所得証明書(市区町村発行のもの)【原本】+源泉徴収票【写し】

雇用保険被保険者証【写し】+雇用保険被保険者資格取得等確認通知書【写し】
(被保険者区分が「1」のものに限る)


そのうえで、出向者の場合は上記に加えて、出向契約書等(該当者・出向元・出向先・出向期間の確認できる資料等)の写しの提示が必要とされています。出向者が役員である等の理由で出向契約書等を提示できない場合は、別途相談することとされています。


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」(令和8年4月)


【実務上のポイント】
出向で要件を満たす段取りを組む場合、先に出向契約書を整えてから申請の準備に入るのが安全です。人を動かしてから書類を後追いで作ると、出向期間や給与負担の記載が実態と合わず、作り直しになることがあります。
なお愛知県の手引きでは、健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定一覧表は公的な資料ではないため常勤性の確認資料として使用できないとされています。①は「決定通知書」である必要があります。また、住民税特別徴収税額決定通知書に個人番号が印字されている場合は、その部分を隠してから複写します。


出向を使う前に確認したいこと    POINT

出向は「社内に人がいない」という状況を解決する有効な手段ですが、次の点は事前に整理しておく必要があります。


▶在籍出向か移籍出向か/確認される資料が変わります
▶出向先で常勤といえるか/勤務状況・給与の支払状況・人事権の状況で判断されます
▶出向元での立場/出向元で常勤のままでは、出向先の常勤は認められません


特に3つ目は見落とされがちです。経管も営業所技術者等も常勤が要件である以上、2社で同時に常勤という状態は成り立ちません


経管と営業所技術者等の常勤・専任の考え方そのものについては、別記事で解説しています。
外部から人を迎えて経管の要件を満たす方法についても、別記事にまとめています。


まとめ    SUMMARY

▶建設業法が求めているのは常勤・専任であり、直接の雇用関係は要件ではない
▶役員は会社と委任関係のため、そもそも雇用関係は求められていない
▶出向社員でも、常勤性・専任性が認められれば経管・営業所技術者等になれる
▶移籍出向(転籍)は転職と同じ扱いで、通常の方法で常勤性を判断できる
▶在籍出向は出向契約の内容(出向期間・給与支払い・社会保険)も加味される
▶愛知県では、通常の常勤性確認資料に加えて出向契約書等の提示が必要


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