建設業許可の誠実性とは|不正・不誠実な行為の意味と判断される人の範囲【愛知県】

建設業許可の誠実性とは|不正・不誠実な行為の意味と判断される人の範囲【愛知県】

誠実性は「請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」。定義・対象者・他資格の処分歴の影響・欠格要件との違いを解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


建設業許可の要件のなかで、いちばん説明されないまま通り過ぎるのが「誠実性」です。
抽象的な言葉に見えますが、建設業法にも国土交通省のガイドラインにも、何が「不正な行為」で何が「不誠実な行為」かの定義が置かれています


この記事では、誠実性の要件が具体的に何を指すのか、誰について判断されるのか、他の資格の処分歴がどう影響するのかを整理します。よく混同される欠格要件との違いも表で比較します。



誠実性の要件とは    DEFINITION

建設業法第7条第3号は、許可の基準のひとつとして「請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」を挙げています。これが誠実性の要件です。


注意したいのは、条文が「おそれが明らかな者でないこと」という書き方をしている点です。過去に何かをしたかどうかだけでなく、これから不正・不誠実な行為をするおそれが明らかかどうかという将来に向けた判断を含みます。


▶根拠は建設業法第7条第3号(特定建設業も同じ基準)
▶請負契約に関する不正・不誠実な行為の「おそれ」が判断対象
▶判断は申請者本人だけでなく、役員や営業所の代表者にも及ぶ


建設業許可の要件全体のなかでの位置づけは、建設業許可の5つの要件をまとめた記事をご覧ください。


「不正な行為」「不誠実な行為」の意味    MEANING

それぞれの意味は、国土交通省の建設業許可事務ガイドラインと愛知県の手引きに定義があります。


用語 意味
不正な行為 請負契約の締結または履行の際における詐欺、脅迫、横領、文書偽造等の法律に違反する行為
不誠実な行為 工事内容、工期、天災等不可抗力による損害の負担等について請負契約に違反する行為


出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第7条関係】3/愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」誠実性について


いずれも「請負契約に関して」という限定が付いている点がポイントです。建設工事の請負契約をめぐる行為が対象であり、日常的なトラブル一般を広く指すものではありません。


【実務上のポイント】
定義に「文書偽造」が含まれていることには注意が必要です。実務経験証明書や経営経験の証明資料を実態と異なる内容で作成することは、許可申請そのものが虚偽申請として扱われるだけでなく、誠実性にもかかわる問題になり得ます。証明できない期間は無理に埋めず、証明できる範囲で組み立ててください。実務経験の証明方法は実務経験証明書(様式第9号)の書き方を解説した記事にまとめています。


誰について判断されるのか    TARGET

誠実性は、会社の代表者だけを見て判断されるものではありません。


申請者の区分 判断の対象となる者
法人 当該法人自身、非常勤役員を含む役員等、一定の使用人(支配人および支店・常時建設工事の請負契約を締結する営業所の代表者=支店長、営業所長)
個人 個人事業主本人、一定の使用人(支配人・支店長・営業所長)
未成年者の場合 申請者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であるときは、その法定代理人も対象


非常勤の役員も対象に含まれます。名前だけ役員に入っている方がいる場合も、判断の対象から外れるわけではありません。


他の資格の処分歴が影響するケース    MENKYO

誠実性の判断で具体的な基準が示されているのが、他の法令による免許等の取消処分です。


免許取消しから5年

法人・役員等・一定の使用人(個人の場合は本人・一定の使用人)が、建築士法、宅地建物取引業法等の規定により、不正または不誠実な行為を行ったことをもって免許等の取消処分を受け、その最終処分の日から5年を経過しない者である場合は、原則としてこの基準を満たさないものとして取り扱われます。

建設業以外の許認可で処分を受けた場合でも、建設業許可の可否に影響し得るということです。建設業と兼業で不動産業や設計事務所を営んでいる会社、あるいはそうした経歴を持つ方を役員に迎える場合は、この点を確認しておく必要があります。


【実務上のポイント】
新たに役員を迎えるとき、確認するのは経営経験や資格だけになりがちです。他の許認可業種での処分歴がないかもあわせて確認しておきましょう。特に、経管を外部から招く場合は、その方の過去の事業での処分歴が会社全体の許可に影響することがあります。外部から経管を迎える際の注意点は経管を外部から迎えて建設業許可を取る方法を解説した記事で扱っています。


すでに許可を受けて営業している場合の扱い    KEIZOKU

更新や業種追加の際に、誠実性が改めて厳しく問われるのかという疑問があります。ガイドラインでは次のように整理されています。


▶許可を受けて継続して建設業を営んでいた者については、①不正・不誠実な行為をした事実が確知された場合、または②他法令による免許取消しから5年を経過しない場合を除き、この基準を満たすものとして取り扱う


つまり、問題となる事実が確認されない限りは、基準を満たしているものとして扱われるという運用です。逆にいえば、不正・不誠実な行為をした事実が確知されれば、継続して営業していても問題になります。


欠格要件との違い    VS

誠実性(法第7条第3号)と欠格要件(法第8条)は、どちらも「過去に問題がないか」を見る要件のため混同されがちですが、性質が異なります。


誠実性(法第7条第3号) 欠格要件(法第8条)
位置づけ 満たすべき許可の基準 該当すると許可されない事由
判断の性質 不正・不誠実な行為をする「おそれ」があるかどうかの評価 列挙された事由に形式的に該当するかどうか
主な対象 請負契約に関する行為、他法令による免許等の取消処分 破産、許可の取消し、禁錮以上の刑、一定の罰金刑、暴力団員等 など
更新時 継続営業者は原則として基準を満たすものとして扱われる 1と7から14までのみが対象


欠格要件の中身は欠格要件14項目を解説した記事で詳しく確認できます。



許可を取った後も問われます    AFTER

誠実性は入口だけの話ではありません。建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をした場合には、許可行政庁から指示または営業停止の処分を受けることがあります(建設業法第28条第1項第2号、第28条第3項)。


そして、営業停止を命じられてその期間が経過していない状態は、欠格要件(前掲5)に当たります。誠実性の問題は、監督処分を通じて欠格要件につながっていくという構造になっています。


【実務上のポイント】
日々の実務でこの要件を意識する場面は多くありませんが、請負契約書を交わさずに工事を進める、工期や請負代金の変更を書面に残さないといった運用は、契約をめぐるトラブルの温床になります。契約関係を書面で残しておくことは、誠実性の観点からも、後の紛争を避けるうえでも意味があります。


申請前に確認しておきたいこと    CHECK

誠実性に関するチェックポイント

 役員(非常勤を含む)、支配人、支店長・営業所長の全員を把握しているか
 その方々に、建築士法・宅地建物取引業法等による免許等の取消処分の履歴がないか
 処分歴がある場合、最終処分の日から5年を経過しているか
 申請書類に、実態と異なる経歴や経験期間を記載していないか
 請負契約に関して、発注者や下請業者との間で未解決の紛争を抱えていないか

該当しそうな事情がある場合、その事実だけで直ちに許可されないと決まるわけではありません。ただし判断は個別の事情によって変わりますので、申請前に許可行政庁または行政書士に確認することをおすすめします。


まとめ    SUMMARY

▶誠実性とは「請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと」(法第7条第3号)
▶「不正な行為」は請負契約の締結・履行の際の詐欺、脅迫、横領、文書偽造等
▶「不誠実な行為」は工事内容・工期・損害の負担等について請負契約に違反する行為
▶判断は法人自身、非常勤を含む役員等、支配人・支店長・営業所長にまで及ぶ
▶建築士法・宅建業法等による免許等の取消処分から5年を経過しない場合は、原則として基準を満たさない
▶継続して営業している許可業者は、問題となる事実が確知されない限り基準を満たすものとして扱われる
▶許可後も、請負契約に関する不誠実な行為は指示・営業停止処分の対象になる


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