配置技術者の「直接的かつ恒常的な雇用関係」とは|出向・派遣・応援の可否を解説【愛知県の建設業許可】

配置技術者の「直接的かつ恒常的な雇用関係」とは|出向・派遣・応援の可否を解説【愛知県の建設業許可】

工事現場に配置する主任技術者・監理技術者は、その工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があります。在籍出向者や派遣社員が原則として認められない理由、公共工事の3か月ルール、企業集団制度などの特例を行政書士が解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「グループ会社から出向してきた技術者を現場に配置できるか」「人手が足りないので知り合いの会社から応援を呼びたい」——技術者不足のなかでよくあるご相談です。
結論として、工事現場に配置する主任技術者・監理技術者・監理技術者補佐は、その工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者でなければなりません。在籍出向者や派遣社員は、原則としてこれに当たりません。


この記事では、この要件の正確な意味、確認に使える資料、公共工事で必要になる3か月ルール、そして例外的に出向者を配置できる特例制度を整理します。



結論:自社の社員でなければ配置できません    CONCLUSION

建設工事の適正な施工を確保するため、監理技術者等(主任技術者・監理技術者・監理技術者補佐)は、所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあることが必要とされています。


▶直接的な雇用関係/第三者が介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係があること
▶恒常的な雇用関係/一定の期間にわたり継続している雇用関係であること


この2つは別々の要件で、両方を満たす必要があります


出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」二-四(監理技術者等の雇用関係)(最終改正 令和7年1月28日)


配置技術者そのものの制度については、主任技術者の配置が必要な工事とはの記事をご覧ください。


直接的な雇用関係とは    DIRECT

直接的な雇用関係とは、技術者とその所属建設業者との間に、第三者の介入する余地のない雇用に関する一定の権利義務関係が存在することをいいます。具体的には次の4点です。


▶賃金
▶労働時間
▶雇用
▶権利構成


在籍出向者・派遣社員は認められません

運用マニュアルは、在籍出向者や派遣社員については直接的な雇用関係にあるとはいえないと明記しています。出向元との雇用関係が残っている在籍出向は、第三者が介入している状態と評価されるためです。
なお、建設業務への労働者派遣はそもそも労働者派遣法により禁止されています。


「応援」も配置技術者にはできません

他社の技術者に一時的に来てもらう、いわゆる応援も、その会社との雇用関係がない以上、自社の配置技術者として届け出ることはできません


【実務上のポイント】
現場を手伝ってもらうこと自体を否定するものではありませんが、他社の技術者を自社の主任技術者・監理技術者として書類に記載することはできません。技術者を確保できない工事は、受注前の段階で判断する必要があります。
どうしても対応したい場合は、その業種の許可を持つ会社に下請けに出す、あるいは共同企業体を検討するといった別の方法を考えることになります。


恒常的な雇用関係とは    PERMANENT

恒常的な雇用関係とは、次の状態をいいます。


▶一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていること
▶技術者と所属建設業者が双方の持つ技術力を熟知していること
▶建設業者が責任を持って技術者を工事現場に配置できること
▶建設業者が組織として有する技術力を、技術者が十分かつ円滑に活用して工事の管理等の業務を行えること


つまり、工事のたびに短期契約で雇い入れるような形態は、恒常的な雇用関係とはいえません


継続雇用制度の適用者は問題ありません

定年後の再雇用制度や勤務延長制度の適用を受けている技術者については、その雇用期間にかかわらず、常時雇用されている(=恒常的な雇用関係にある)ものとみなすとされています。1年ごとの契約更新であっても、この点は差し支えありません。


【実務上のポイント】
ベテラン技術者を定年後も再雇用して現場に配置している会社は多いと思われます。契約期間が1年更新であることを理由に配置を諦める必要はありません。ただし、実際に日々一定時間以上職務に従事している実態は必要です。



公共工事は入札申込日以前3か月    THREE-MONTH

国、地方公共団体および公共法人等が発注する建設工事(公共工事)については、より具体的な基準が設けられています。


3か月ルール

公共工事において、元請の専任の主任技術者、専任の監理技術者、専任特例の場合の監理技術者および監理技術者補佐については、所属建設業者から入札の申込のあった日以前に3か月以上の雇用関係にあることが必要です。


契約方式 起算日
一般競争入札等 入札の申込のあった日
指名競争(入札の申込を伴わないもの) 入札の執行日
随意契約 見積書の提出のあった日


組織変更があった場合

合併、営業譲渡または会社分割等の組織変更に伴う所属建設業者の変更(契約書または登記簿の謄本等により確認)があった場合、変更前の建設業者と3か月以上の雇用関係にある者については、変更後に所属する建設業者との間にも恒常的な雇用関係にあるものとみなすとされています。


災害時の例外

震災等の自然災害の発生またはそのおそれにより、最寄りの建設業者により即時に対応することが被害の発生・拡大を防止する観点から最も合理的であって、当該建設業者に要件を満たす技術者がいない場合など、緊急の必要その他やむを得ない事情がある場合は、この限りではないとされています。


JV工事での技術者配置と3か月ルールの関係は、JV工事の配置技術者の記事で解説しています。


雇用関係を確認する資料    DOCUMENT

直接的な雇用関係は、次の資料により建設業者との雇用関係が確認できることが必要とされています。


▶監理技術者資格者証の写し
▶市区町村が作成する住民税特別徴収税額通知書の写し
▶健康保険・厚生年金被保険者標準報酬決定通知書の写し
▶所属会社の雇用証明書の写し
▶これらに準ずる資料


恒常的な雇用関係については、これらの資料の交付年月日等により確認できることが必要とされています。つまり、雇用開始時期が分かる資料である必要があります。


健康保険証は確認資料から外れました

令和6年12月13日のマニュアル改正により、確認資料の例示から健康保険被保険者証が削除されました。健康保険証は令和6年12月2日以降、新規発行が終了しているためです。
建設業許可申請における常勤性の確認資料についても同様の見直しが進んでいますので、住民税特別徴収税額通知書や標準報酬決定通知書を準備しておくことをおすすめします。


【実務上のポイント】
発注者は、設計図書の中で雇用関係に関する条件や雇用関係を示す書面の提出義務を明示するなど、あらかじめ雇用関係の確認に関する措置を定めることとされています。公共工事に参加する際は、どの資料の提出を求められるかを入札公告・特記仕様書で確認し、技術者ごとに準備しておくとスムーズです。


資格者証の所属建設業者名の変更届も忘れずに

監理技術者資格者証には所属建設業者名が記載されています。所属建設業者名の変更があった場合には、30日以内に指定資格者証交付機関に対して記載事項の変更の届出または新たな資格者証の交付を受けなければなりません


監理技術者資格者証と講習については、監理技術者の配置が必要な工事とはの記事で解説しています。


例外的に出向者を配置できる4つの特例    EXCEPTION

建設業を取り巻く経営環境の変化等に対応するため、次の4つの場面については特例が定められています。


特例 概要
①営業譲渡・会社分割 建設業者の営業譲渡または会社分割に係る技術者の直接的かつ恒常的な雇用関係の確認の事務取扱い(平成13年5月30日付 国総建第155号)
②持株会社 持株会社の子会社が置く主任技術者または監理技術者の直接的かつ恒常的な雇用関係の確認の取扱い(平成28年12月19日付通知)
③企業集団 企業集団内の出向社員に係る監理技術者等の直接的かつ恒常的な雇用関係の取扱い等(令和6年3月26日付通知、令和6年4月1日適用)
④官公需適格組合 官公需適格組合における組合員からの在籍出向者たる監理技術者または主任技術者の直接的かつ恒常的な雇用関係の取扱い等(令和5年3月13日付 国土建第601号)


企業集団制度は令和6年4月1日に合理化されました

建設技術者の減少にも対応できるよう、企業集団制度が見直され、親会社と連結子会社の間だけでなく、同一の親会社である連結子会社の間の出向社員も対象となりました。


▶親子間および連結子会社間の在籍出向社員を監理技術者等として配置できる
▶ただし、公共工事における親子間の出向社員(元請に限る)と、連結子会社間の出向社員については、出向先と3か月以上の雇用関係が必要
▶出向元会社および出向先会社が、一の親会社およびその連結子会社からなる企業集団に属する会社であることが要件


【実務上のポイント】
これらの特例は、いずれもあらかじめ所定の手続や確認書類の準備が必要です。「グループ会社だから大丈夫だろう」と考えて出向者を現場に配置してしまうと、後から要件を満たしていないことが判明する可能性があります。
グループ内で技術者を融通する体制を検討している場合は、実際に配置する前に、国土交通省の企業集団制度のページで要件と確認方法を確認することをおすすめします。


出典:国土交通省「企業集団制度について」/「監理技術者制度運用マニュアル」二-四(4)


許可申請の「常勤性」とは別の話です    JOKIN

建設業許可の申請では、経営業務の管理責任者や営業所技術者等について「常勤性」を証明する書類を提出します。これと、今回解説した配置技術者の雇用関係は別の制度です。


項目 許可申請の常勤性 配置技術者の雇用関係
対象 常勤役員等(経管)、営業所技術者等 主任技術者、監理技術者、監理技術者補佐
確認する場面 許可の申請・更新時(愛知県) 工事現場への配置時(発注者等)
根拠 建設業法第7条・第15条、愛知県の手引 監理技術者制度運用マニュアル


愛知県で許可申請をする際の常勤性の確認書類については、常勤性を証明する書類の記事で解説しています。


まとめ    SUMMARY

▶配置技術者は、その工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要がある
▶直接的な雇用関係とは、第三者の介入する余地のない賃金・労働時間・雇用・権利構成に関する関係
▶在籍出向者・派遣社員は原則として認められない
▶他社からの応援技術者を、自社の配置技術者として届け出ることはできない
▶恒常的な雇用関係とは、一定期間にわたり勤務し、日々一定時間以上職務に従事することが担保されていること
▶定年後の再雇用・勤務延長制度の適用者は、雇用期間にかかわらず恒常的な雇用関係にあるとみなされる
▶公共工事の元請の専任技術者等は、入札の申込のあった日以前に3か月以上の雇用関係が必要
▶確認資料は資格者証、住民税特別徴収税額通知書、標準報酬決定通知書、雇用証明書等(健康保険証は例示から削除された)
▶営業譲渡・持株会社・企業集団・官公需適格組合には特例がある
▶企業集団制度は令和6年4月1日に合理化され、連結子会社間の出向も対象になった


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