

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「社長が営業所技術者等になっているが、現場にも出たい」——少人数の建設会社で最も多いご相談のひとつです。
結論として、営業所技術者等は所属営業所に常勤するのが原則ですが、一定の要件を満たす場合には工事現場の主任技術者等を兼務できます。
しかも令和6年12月13日施行の改正により、これまで認められていなかった「専任が必要な工事」との兼務も可能になりました。この記事では、兼務できる3つのルートと、それぞれの要件を整理します。
営業所技術者(一般建設業)および特定営業所技術者(特定建設業)は、請負契約の締結にあたって技術的なサポートを行うことが職務です。
▶工法の検討
▶注文者への技術的な説明
▶見積り
このため、所属営業所に常勤していることが原則となります。工事現場に出ずっぱりでは、営業所での職務を果たせないからです。
従来「専任技術者(専技)」と呼ばれていた立場は、法律上「営業所技術者」(法第7条第2号)および「特定営業所技術者」(法第15条第2号)という名称になりました。これらを総称して「営業所技術者等」といいます。呼称の変更であり、求められる要件そのものは変わっていません。
営業所技術者等の資格要件については、営業所技術者等とはの記事で解説しています。
| ルート | 対象工事 | 概要 |
|---|---|---|
| ① | 専任が必要な工事 | 令和6年12月13日施行の新制度(法第26条の5)。1億円(建築一式2億円)未満・1現場まで |
| ② | 専任が不要な工事 (営業所と現場が近接) |
従来から認められている取扱い。営業所と工事現場が近接し、常時連絡を取りうる体制にあること |
| ③ | 専任が不要な工事 (近接していない) |
①と同様の要件をすべて満たす場合は可能 |
どれか1つのルートを選ぶことになります。また、いずれのルートも専任特例(主任技術者・監理技術者の現場兼任制度)との併用はできません。
出典:建設業法第26条の5/国土交通省「現場技術者の専任合理化(R6.12.13施行)」/国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」二-二(5)②
生産性向上のため、情報通信機器を活用する等の一定の要件に合致する専任工事について、営業所技術者等が当該工事の主任技術者等の職務を兼務できる制度が新設されました(建設業法第26条の5)。
| 立場 | 兼務できる職務 |
|---|---|
| 営業所技術者(一般建設業) | 主任技術者の職務 |
| 特定営業所技術者(特定建設業) | 主任技術者または監理技術者の職務 |
要件は基本的に専任特例1号と同じですが、次の点が異なります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 契約した営業所 | 営業所技術者等が置かれている営業所において請負契約が締結された建設工事であること |
| 請負金額 | 1億円(建築一式工事は2億円)未満 |
| 兼務現場数 | 1工事現場(専任特例1号は2現場) |
| 距離 | 営業所から当該工事現場までが、1日の勤務時間内に巡回可能かつ移動時間おおむね2時間以内(現場間の距離ではない) |
| 下請次数 | 3次まで |
| 連絡員の配置 | 技術者との連絡その他必要な措置を講ずるための者を配置(土木一式・建築一式の場合は実務経験1年以上の者) |
| 情報通信技術の措置 | 施工体制を確認できる情報通信技術の措置を講じていること |
| 情報通信機器 | 現場外から現場状況を確認できる機器と通信環境を確保していること |
| 計画書 | 人員の配置を示す計画書を作成・保存。営業所技術者等が所属する営業所の名称と、契約を締結した営業所の名称も記載する |
営業所技術者等が工事現場の主任技術者または監理技術者を兼務する場合には、当該請負業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があります。
【実務上のポイント】
「当該営業所で締結した契約であること」という要件は、複数の営業所を持つ会社で見落とされやすい部分です。本店で契約した工事を、支店の営業所技術者が兼務することはできません。営業所が1か所の会社であれば気にする必要はありませんが、支店を出している場合は、契約営業所と技術者の所属営業所が一致しているかを必ず確認してください。
専任が不要な工事で、かつ営業所と工事現場が近接している場合の兼務は、従来から認められており、改正後も引き続き適用可能です(平成15年4月21日付国総建第18号)。
▶①当該営業所において請負契約が締結された建設工事であること
▶②工事現場と営業所が近接し、当該営業所との間で常時連絡を取りうる体制にあること(工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度であること)
▶③所属建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
▶④当該工事の専任を要しない監理技術者等であること
【実務上のポイント】
このルートは情報通信機器や連絡員、計画書といった要件がなく、手続的な負担が最も軽いのが特徴です。請負金額4,500万円(建築一式9,000万円)未満の工事が中心で、営業所の近くの現場を回っている会社であれば、まずこのルートに該当しないかを検討するのが現実的です。
「近接」の具体的な距離は法令で数値化されていないため、営業所の職務にも実質的に従事できる状態かどうかで判断することになります。
営業所に近接していない、専任を要しない工事現場の主任技術者等の兼務は、専任を要する工事現場の兼務要件(①のルートの要件)をすべて満たす場合に可能とされています。
つまり、専任が不要な工事であっても、営業所から離れている場合は①と同水準の体制を整える必要があります。
一人親方や小規模な会社では、社長が経営業務の管理責任者(常勤役員等)と営業所技術者等を兼ねているケースが一般的です。この兼務と、今回解説した現場技術者との兼務は別の論点です。
▶経管と営業所技術者等の兼務/同一営業所内であれば可能
▶営業所技術者等と現場技術者の兼務/この記事で解説した①~③の要件を満たす場合に可能
経管と営業所技術者等を兼務できる条件については、一人親方でも許可が取れる理由の記事で解説しています。
▶営業所技術者等は所属営業所に常勤するのが原則
▶令和6年12月13日施行の改正により、専任が必要な工事現場の技術者も兼務できるようになった(法第26条の5)
▶営業所技術者は主任技術者の職務、特定営業所技術者は主任技術者または監理技術者の職務を兼務できる
▶新制度の要件は専任特例1号とほぼ同じだが、当該営業所で締結した契約であること・1現場のみ・距離は営業所から現場までで判断する点が異なる
▶営業所に近接する非専任工事との兼務は従来どおり可能で、手続的な負担が最も軽い
▶近接していない非専任工事は、専任工事の兼務要件をすべて満たす必要がある
▶3つのルートの併用、および専任特例との併用はできない
▶いずれの場合も直接的かつ恒常的な雇用関係が必要
社長や技術者に営業所と現場を兼ねてもらえるかの確認からご相談ください。
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