役員に前科があると建設業許可は取れない?欠格要件14項目と確認書類【愛知県】

役員に前科があると建設業許可は取れない?欠格要件14項目と確認書類【愛知県】

建設業許可の欠格要件は全14項目。役員1人でも該当すると許可されません。5年の起算点、更新時の扱い、身元証明書など確認書類まで愛知県の実務にそって解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


経管も技術者も財産要件も揃っている。それでも許可が下りないことがあります。その原因の多くが「欠格要件」です。
欠格要件は社長だけでなく、役員全員・支店長・支配人まで含めて判断されます。1人でも該当者がいれば、会社として許可を受けられません。


この記事では、建設業法第8条が定める14項目の欠格要件を一覧で整理し、「5年」をいつから数えるのか、更新のときはどう扱われるのか、そして該当していないことをどの書類で証明するのかまで解説します。



欠格要件とは    DEFINITION

欠格要件とは、これに該当すると建設業許可を受けられない事由のことです。建設業法第8条は、許可を受けようとする者が各号のいずれかに該当するとき、または許可申請書やその添付書類に重要な事項について虚偽の記載があり、もしくは重要な事実の記載が欠けているときは、国土交通大臣または都道府県知事は許可をしてはならないと定めています。


経管や営業所技術者等の要件が「満たすべき条件」であるのに対し、欠格要件は「該当してはいけない条件」です。他の要件がすべて揃っていても、欠格要件に該当すれば許可されません。


▶欠格要件=該当すると許可されない事由(建設業法第8条)
▶申請者本人だけでなく、役員等・令3条使用人についても判断される
▶書類の虚偽記載・重要な記載漏れも、それ自体が許可されない理由になる


建設業許可の要件全体の位置づけは、建設業許可の5つの要件をまとめた記事で確認できます。


誰について判断されるのか    TARGET

欠格要件の該当性は、会社に関係する一定の範囲の人について判断されます。


対象 具体的に誰か
申請者本人 法人そのもの/個人事業主本人
役員等 業務を執行する社員、取締役、執行役、法人格のある各種組合等の理事等。取締役会の決議を経て具体的な権限委譲を受けた執行役員等を含む
令3条使用人 支配人、および従たる営業所(支店等)の代表者=支店長・営業所長
法定代理人 申請者が営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合のその法定代理人


顧問・相談役・株主等の扱い

役員等の一覧表(様式第一号別紙一)には、役員のほか顧問、相談役、総株主の議決権の5%以上を有する株主等も記載します。このうち「取締役等と同等以上の支配力を有すると認められる者」は従来の役員と同様に扱われますが、顧問・相談役・株主等については、支配力を有すると認められる者かどうかが個別に判断されます。監査役や会計参与は原則として役員には含まれません。

出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第5条及び第6条関係】【第8条関係】



欠格要件14項目の一覧    LIST

愛知県の手引きでは、次の1〜14のいずれかに該当する場合は許可を受けられないと整理されています。


No. 欠格要件の内容
1 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
2 法第29条第1項第7号または第8号に該当することにより許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
3 上記の取消処分に係る聴聞の通知があった日から、処分があった日(または処分をしないことの決定があった日)までの間に廃業の届出をした者で、その届出の日から5年を経過しない者
4 3の期間内に廃業の届出があった場合に、3の通知の日前60日以内にその法人の役員等・令3条使用人であった者(個人の場合は令3条使用人であった者)で、届出の日から5年を経過しない者
5 法第28条第3項または第5項の規定により営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
6 許可を受けようとする建設業について法第29条の4の規定により営業を禁止され、その禁止の期間が経過しない者
7 禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
8 建設業法または一定の法令の規定により罰金の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、またはその刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
9 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員、または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(暴力団員等)
10 精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができない者
11 営業に関し成年者と同一の能力を有しない未成年者で、その法定代理人が1から10まで(または12の一部)のいずれかに該当する者
12 法人で、その役員等または令3条使用人のうちに1から4までまたは6から10までのいずれかに該当する者があるもの
13 個人で、令3条使用人のうちに1から4までまたは6から10までのいずれかに該当する者があるもの
14 暴力団員等がその事業活動を支配する者


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」Ⅲ 欠格要件(許可を受けられない方)/建設業法第8条


実務で問題になりやすいのは、色を付けた1・7・8・12です。とくに12は、役員のうち1人でも該当者がいれば会社全体が許可を受けられないという規定であり、社長本人に問題がなくても許可が下りない原因になります。


8の「一定の法令の規定」とは

罰金刑であっても欠格要件になるのは、対象となる法令が限定されているためです。愛知県の手引きでは、建設業法のほか、次のような規定が挙げられています。


▶暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反した者に係る同法第46条、第47条、第49条または第50条
▶刑法第204条(傷害)、第206条(現場助勢)、第208条(暴行)、第208条の2(凶器準備集合及び結集)、第222条(脅迫)、第247条(背任)


【実務上のポイント】
「罰金だから大丈夫だろう」という判断は危険です。対象となるのは限定された法令ですが、建設業法違反と、暴行・傷害・脅迫・背任といった刑法上の罪が含まれている点は押さえておいてください。心当たりがある場合は、判決の内容と、刑の執行が終わった日(または執行を受けることがなくなった日)がいつかを確認したうえで、申請時期を検討する必要があります。


「5年」はいつから数えるのか    5YEARS

欠格要件の多くには「5年を経過しない者」という期間が付いています。起算点は事由ごとに異なります


事由 起算点
許可の取消し(2) 取消しの日
聴聞通知後の廃業届(3・4) 廃業の届出の日
禁錮以上の刑(7) 刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日
一定の罰金刑(8) 刑の執行を終わった日、または刑の執行を受けることがなくなった日
暴力団員(9) 暴力団員でなくなった日


「判決が出た日」ではなく「刑の執行が終わった日等」が基準である点に注意してください。なお、営業の停止(5)や営業の禁止(6)は5年ではなく、その停止・禁止の期間が経過するまでが対象です。


更新のときは一部の項目が適用されない    UPDATE

あまり知られていませんが、許可の更新を受けようとする場合は、欠格要件のうち1と7から14までだけが対象となります。2から6までに該当しても、更新の拒否事由にはなりません。


【実務上のポイント】
これは、許可が業種ごとに与えられるものであり、取消しを受けていない他の業種の許可については更新をする必要があること、また営業の停止や禁止は許可の更新自体を認めないものではないことによる取扱いです。営業停止処分の期間中であっても、許可の有効期間が満了するのであれば更新申請は必要になります。更新の手続きは更新申請の期限・必要書類・費用を解説した記事をご覧ください。


出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」【第8条関係】1


「心身の故障」(10)と医師の診断書    SHINDANSHO

10の欠格要件は、法律上は「心身の故障により建設業を適正に営むことができない者として国土交通省令で定めるもの」とされ、建設業法施行規則第8条の2で「精神の機能の障害により建設業を適正に営むに当たって必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と定められています。


▶成年被後見人・被保佐人に該当しない者は、この欠格事由に該当しない
▶成年被後見人・被保佐人に該当する場合でも、医師の診断書などにより、回復の見込みや医師の所見を考慮したうえで、建設業を適正に営むために必要な認知・判断・意思疎通を適切に行うことができると認められる場合は、欠格事由に該当しないものとして取り扱われる


この場合は、後見等登記事項証明書・身元(身分)証明書に代えて、契約の締結およびその履行にあたり必要な認知、判断および意思疎通を適切に行うことができる能力を有する旨とその根拠が記載された医師の診断書(申請日前3か月以内に発行されたもの)を提出します。愛知県の手引きでは、この取扱いを希望する場合は事前に窓口に相談するよう案内されています。


欠格要件に該当しないことを証明する書類    DOCUMENTS

愛知県知事許可の申請では、次の書類で確認されます。


書類 内容・取得先 対象者

誓約書
(様式第6号)

欠格要件に該当しない旨を誓約する書面 申請者

後見等登記事項証明書
(登記されていないことの証明書)

成年被後見人・被保佐人とする記録がない旨の証明。法務局・地方法務局(本局)の戸籍課で発行(愛知県内は名古屋法務局戸籍課。東京法務局は郵送請求も受付)

個人事業主本人、役員等の一覧表(別紙一)および令3条使用人一覧表(様式第11号)に記載した方全員
※顧問・相談役・株主等、常勤役員等を直接に補佐する者を除く

身元(身分)証明書 ①成年被後見人・被保佐人とみなされる者に該当しない旨、②破産者で復権を得ない者に該当しない旨が記載された証明書。本籍地の市区町村役場で発行(自治体により名称が異なります)

調書
(様式第12号・第13号)

住所、生年月日等に関する調書。「賞罰」欄には行政処分等についても記載する 役員等・令3条使用人


証明書は「申請時3か月以内」

後見等登記事項証明書と身元(身分)証明書は、いずれも申請時3か月以内に交付されたものが必要です。両方の証明書が必要で、どちらか一方では足りません。役員が多い会社では取り寄せに時間がかかるため、本籍地が遠方の方から先に手配すると全体が滞りません。

【実務上のポイント】
調書の「賞罰」欄は、賞罰がなければ「なし」と記載します。ただし記載がないのに行政処分等の事実が確認され、それが法第8条に該当する場合は、原則として「虚偽申請」として取り扱われます。心当たりがある場合は、隠さずに記載したうえで取扱いを確認するほうが安全です。申請書類でつまずきやすい点は愛知県の仮受付で止まらないための確認事項をまとめた記事にも整理しています。



該当者がいるかもしれない場合にすること    ACTION

欠格要件は、申請してから発覚すると影響が大きい項目です。虚偽申請として扱われれば、許可の拒否や取消しにつながります。


▶役員・支店長・支配人の全員について、対象となる事由の心当たりを確認する
▶心当たりがある場合は、判決や処分の内容と日付が分かる資料を確認する
▶「5年を経過しているか」は起算点によって変わるため、日付を特定してから判断する
▶自己判断で「該当しない」と決めずに、許可行政庁に確認する


条文上、12の欠格要件は「法人で、その役員等または令3条使用人のうちに該当する者があるもの」と定められています。したがって、該当する方が役員等でなくなれば、その号による拒否事由は解消されることになります。もっとも、実際の取扱いは変更の時期や登記の状況など個別の事情によって変わりますので、役員構成の変更を検討する場合は事前に確認してください。役員が変わった場合の届出は変更届の期限と必要書類を解説した記事で扱っています。


よくある質問    FAQ


Q. 更新のときも欠格要件は審査されますか?

審査されます。ただし対象は1と7から14までに限られ、2から6まで(許可の取消し、聴聞通知後の廃業届、営業停止、営業禁止)は更新の拒否事由になりません。新規許可より対象が狭くなる、という違いです。


Q. 外国籍の役員がいる場合、身元(身分)証明書はどうすればよいですか?

愛知県の手引きでは、外国人住民の方については身元(身分)証明書に代えて、氏名、通称名、生年月日、住所、国籍などが確認できる住民票(申請時3か月以内)を持参し原本を提示することとされています。なお、後見等登記事項証明書は必要で、証明を受ける際の記載事項の書き方についても手引きに案内があります。


Q. 許可を取った後に役員が欠格要件に該当したらどうなりますか?

欠格要件は許可の取消し事由にもなっています。役員等が欠格要件に該当することとなった場合は、許可の存続にかかわる問題になりますので、その事実を把握した段階で、速やかに許可行政庁に相談してください。役員の変更が生じた場合は変更届の提出も必要です。


まとめ    SUMMARY

▶欠格要件は建設業法第8条に定められた「該当すると許可されない事由」で全14項目
▶申請者本人だけでなく、役員等・支配人・支店長(令3条使用人)についても判断される
▶役員のうち1人でも該当者がいれば、法人として許可を受けられない
▶「5年」の起算点は事由ごとに異なり、禁錮以上の刑は刑の執行を終わった日等から数える
▶更新の場合は1と7から14までのみが対象になる
▶成年被後見人等でも、医師の診断書により該当しないと扱われる場合がある
▶確認は後見等登記事項証明書と身元(身分)証明書の両方(申請時3か月以内)で行う
▶賞罰欄の記載漏れは「虚偽申請」として扱われることがある


欠格要件に当たるかどうかは、処分や判決の内容・日付によって結論が変わります。推測で判断せず、資料をもとに確認することが何より大切です。


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