

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「前期に特定建設業許可を取ったが、今期の業績が悪そう。決算が締まったら特定建設業許可は無くなってしまうのか」——決算前によくいただくご相談です。
結論から言うと、決算内容が悪くても、それだけで直ちに許可が無くなることはありません。
財産的基礎等の要件は常時満たしている必要はなく、確認されるのは「許可申請」のタイミングだけだからです。ただし、翌事業年度に更新を控えている場合は話が別になります。
この記事では、要件の中身と確認されるタイミング、愛知県の救済措置までを整理します。
一般建設業許可・特定建設業許可のいずれにも財産的基礎等の要件がありますが、この要件は常時満たしている必要はありません。要件の確認は「許可申請」のタイミングで行われます。
建設業者は毎年、事業報告(決算変更届)を提出しますので、決算の内容は許可行政庁が確認できる状態にあります。しかし財産的基礎等の要件確認は決算ごとに行われるものではなく、「許可申請」直前の決算内容で行われます。そのため、決算後1年以内に許可申請がない場合、決算変更届をもって財産的基礎等の要件が確認されるということはありません。
翌事業年度内に建設業許可の期限を迎えて更新申請を行わなければならない場合、更新申請直前の決算内容によって財産的基礎の要件が確認されます。
つまり今期の決算内容で特定建設業の要件を満たしていなければ、特定建設業許可の更新ができません。手続きについては事前に許可行政庁に相談してください。
ここでいう「許可申請」とは、建設業許可の新規申請、更新申請、業種追加申請等のことをいいます。
般特新規申請とは、①一般建設業の許可のみ受けている建設業者が新たに特定建設業の許可を申請する場合、②特定建設業の許可のみ受けている建設業者が新たに一般建設業の許可を申請する場合、のいずれかに該当するものです。
建設業許可の要件の一つに「財産的基礎又は金銭的信用があること」があります。建設業を営むには準備として資材や機材の購入が必要となり、その購入資金が要るため、最低限の基準を定めてその資金を有することを要件としています。
| 一般建設業の許可を受ける場合 | 特定建設業の許可を受ける場合 |
|---|---|
| 次のいずれかに該当すること | 次のすべてに該当すること |
|
①自己資本の額が500万円以上であること |
①欠損の額が資本金の額の20%を超えていないこと |
▶自己資本/法人は貸借対照表における純資産合計の額。個人は期首資本金・事業主借勘定・事業主利益の合計額から事業主貸勘定の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益保留性の引当金及び準備金の額を加えた額
▶500万円以上の資金を調達する能力/担保とすべき不動産等を有していること等により、金融機関等から500万円以上の資金について融資を受けられる能力。預金残高証明書又は融資証明書等により確認
▶欠損の額/法人は貸借対照表の繰越利益剰余金が負である場合に、その額が資本剰余金・利益準備金及びその他の利益剰余金の合計額を上回る額
▶流動比率/流動資産を流動負債で除して得た数値に100を乗じた数
▶資本金/法人は株式会社の払込資本金、持分会社等の出資金額。個人は期首資本金
財産的基礎の要件は一般建設業許可と特定建設業許可とで異なり、特定建設業許可の方が厳しい要件となっています。理由は2つです。
▶特定建設業者は多くの下請業者を使用して工事を施工するための許可であり、特に健全な経営が求められること
▶発注者から請負代金の支払いを受けていない場合であっても、下請負人から工事の目的物の引渡しの申し出がなされてから50日以内に下請代金を支払う義務があること
元請が資金繰りに詰まると下請への支払いが止まる構造になっているため、入口の段階で財務の健全性を求めているわけです。
財産的基礎等の要件は、建設業許可の新規申請や更新申請等の際、申請直前の決算内容で確認が行われます。具体的には財務諸表で確認されます。
会社を設立したばかりでまだ決算を迎えていない建設業を営む者でも、許可申請の際には必ず財産的基礎等の要件が確認されますが、その場合は創業時の財務諸表で要件を満たすかどうかが判断されます。
【実務上のポイント】
一般建設業許可の場合、要件に「許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること」が含まれています。そのため許可取得後5年を経過した後は、許可申請の際も財産的基礎等の要件は確認されません。
最初の更新を無事に迎えられれば、その後は資金面での心配が減る、という構造になっています。
特定建設業許可の要件について、申請直前の決算における財務諸表で「資本金」の額だけ要件を満たしていない場合、許可申請までに増資をして資本金の要件を満たせば、財産的基礎等の要件を満たしていることになります。
愛知県の手引きでも、直前の決算期において資本金の要件のみを満たさないが増資を行うことによって要件を満たすことになった場合には、「資本金」についてのみ要件を満たしているものとして取り扱うとされています。この場合、資本金増資の変更届出書(副本)の提示が必要です。
出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」
裏を返せば、欠損の額・流動比率・自己資本については、増資のような直前の手当てが効きません。決算を締める前の段階で数字を確認しておく必要があります。
愛知県では、経営再建中の方について、更新に限り特例措置が設けられています。今期の決算で特定建設業の要件を満たせないまま更新時期を迎える場合の受け皿です。
次のいずれかに当たる場合、許可条件を付与したうえで更新されます。
▶申請日直前の決算期の財務諸表上では要件を満たさないが、許可の更新の日までに要件を満たすことになる場合
▶申請日までに法的手続等を開始しており、許可の日以降近い将来に要件を満たす可能性が高いと判断できる場合
次の条件を満たす場合、それぞれに対応する時期までの間、許可の更新が留保されます。
| 条件 | 留保される期間 |
|---|---|
| 許可の更新の日の直前の決算において要件を満たす見込みの場合 | 当該決算についての財務諸表の提出を受け、要件を満たすことを確認するまでの間 |
| 更新の申請日までに会社更生手続開始の申立てをした場合 | 裁判所の更生手続開始決定がなされるまでの間(許可時に条件を付与) |
| 更新の申請日までに民事再生手続開始の申立てをした場合 | 裁判所の再生手続開始決定がなされるまでの間(許可時に条件を付与) |
| 特定調停に関する法律に基づき、調整に係る調停の申立てをした場合 | 債務者の当該調停に係る判断が明らかになるまでの間(許可時に条件を付与) |
出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」
なお、特例措置の詳細については管轄の窓口に問い合わせることとされています。
【実務上のポイント】
この特例は更新に限られます。新規申請や般特新規申請では使えません。また「近い将来に要件を満たす可能性が高い」という判断が入るため、決算が出てから慌てて持ち込むより、見込みの段階で窓口に相談しておくほうが選択肢が残ります。
特定建設業と一般建設業の区分そのものについては、別記事で解説しています。
▶財産的基礎等の要件は常時満たしている必要はなく、「許可申請」のタイミングで確認される
▶決算変更届をもって要件が確認されることはないため、決算後すぐに許可が無くなることはない
▶ただし翌事業年度内に更新を迎える場合、その決算内容で更新の可否が決まる
▶特定が厳しいのは、多くの下請を使う許可であり、50日以内の下請代金支払義務があるため
▶資本金だけ足りない場合は、申請までの増資で要件を満たせる(愛知県では増資の変更届出書副本の提示が必要)
▶愛知県では経営再建中の方に、更新に限り許可条件付与・更新留保の特例措置がある
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