実務経験証明書(様式第9号)の書き方|愛知県の建設業許可を実務経験で取る

実務経験証明書(様式第9号)の書き方|愛知県の建設業許可を実務経験で取る

建設業許可の実務経験証明書(様式第9号)の書き方を愛知県の令和8年4月版手引に沿って解説。証明者の決め方、暦年1件の記載ルール、複数社にまたがる場合の件数、電気・消防・解体の注意点まで。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「資格は持っていないが、10年やってきた」——この経験を許可につなげる書類が、実務経験証明書(様式第九号)です。
ところが、この様式は「何年働いたか」ではなく「どの年にどの工事をしたか」を書く様式であるため、書き方を誤ると年数が足りていても認められません。


この記事では、愛知県知事許可を前提に、実務経験証明書を誰が証明し、どの工事をどう並べ、どこまで裏付け資料が必要になるのかを、愛知県の令和8年4月版の手引きに沿って整理します。



実務経験証明書(様式第九号)が必要になる場面    WHEN

建設業許可を受けるには、営業所ごとに営業所技術者等(令和6年12月13日の改正前は「専任技術者」)を置く必要があります。その資格を国家資格ではなく実務経験で証明する場合に提出するのが、実務経験証明書(様式第九号)です。


営業所技術者等証明書(様式第八号)だけでは資格の裏付けになりません。様式第八号に添える資料として、次のいずれかを提出します。


資格の根拠(一般建設業) 添付する資料
法第7条第2号イ(指定学科卒業+3年/5年) 卒業証書の写し又は卒業証明書(原本)+様式第九号
法第7条第2号ロ(10年以上の実務経験) 様式第九号
法第7条第2号ハ(資格者証等) 資格者証等の写し(実務経験が必要な資格は+様式第九号
法第7条第2号ハ(実務経験の緩和措置) 申請業種の様式第九号+技術的共通性を有する他業種の様式第九号
国土交通大臣の認定 認定書の写し(様式第九号は不要)


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」15ページ(営業所技術者等としての資格を有することを証明する資料)


特定建設業の許可を受ける場合で、法第15条第2号ロに該当する方は、様式第九号に加えて指導監督的実務経験証明書(様式第十号)も必要です。


【実務上のポイント】
監理技術者資格者証の写しを添付できる場合は、様式第九号の作成が不要になることがあります。手元に資格者証がある方は、まずその写しで足りないかを確認してから作成に取りかかると、作業量が大きく変わります。なお、監理技術者資格者証の有効期限が切れていても、資格や実務経験は認められると愛知県は回答しています。


証明者になるのは誰か    WHO

実務経験証明書でつまずきやすい最初の分岐が「誰にハンコをもらうのか」(現在は押印不要のため、正確には「誰の名義で証明するのか」)です。愛知県の記載例では、次の4パターンが示されています。


▶原則/実務経験を積んだ当時の使用者が証明者
▶個人事業主自身の経験/その事業主本人が証明者
▶勤務期間と自営期間が混在/勤務分は使用者、自営分は事業主が証明(証明書は別々に作成)
▶使用者が倒産等で証明を得られない/現在建設業許可を有する第三者が証明者


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請書記載例編)令和8年4月版」様式第九号 記載例(証明者となるものの例示)


第三者証明を使う場合は、証明者欄にその第三者の建設業許可番号と連絡先電話番号の記載が必要です。また愛知県は、疑義が生じた場合に証明者へ問い合わせをすることがあるとしています。第三者に名義だけ借りるという性質の書類ではなく、証明内容について十分な理解と了承を得たうえで証明を受けてください。


「自営のため」は理由になりません

様式第九号には「使用者の証明を得ることができない場合はその理由」を書く欄があります。ここに記入できるのは、使用者が行方不明・解散・死亡といった理由です。個人事業主も証明者になれるため、「自営のため」は使用者の証明を得られない理由になりません。自営期間は、その事業主本人の名義で証明書を作成します。

なお、法人成りした元個人事業主が個人事業当時の経験を証明する場合は、証明者欄に現在の元事業主の住所と当時の名称を記載し、「元事業主 ○○」と書きます。


過去に同じ内容で証明を受けた方が改めて許可申請をする場合は、申請者本人の証明でも差し支えありません。ただしその事実が確認できる副本の持参が必要で、業種や経験年数については再度審査されます。



様式第九号の項目別の書き方    HOW

様式第九号は、建設工事の種類・技術者・証明者・当時の使用者ごとに、それぞれ別の証明書を作成します。2業種を実務経験で取るなら2枚、勤務先が3社にまたがるならさらに枚数が増える、という構造です。


書き方
建設工事の種類 許可を受けようとする業種を1枚につき1業種書く
技術者の氏名・生年月日 営業所技術者等となる方(被証明者)を記載
被証明者との関係 証明者から見た関係。「使用人」「本人」「法人の役員」「元使用人」「第三者(同業者)」など
使用者の商号又は名称 経験を積んだ当時の使用者。商号変更があれば変更前後の両方を記載
使用された期間 その使用者に雇用されていた期間(実務に従事した期間ではありません)
職名 所属していた部課名等。明確な所属がない小規模事業者は「取締役」「事業主」「現場監督」「職長」など
実務経験の内容 従事した主な工事名等を具体的に記載(次項の暦年ルールに沿って1行1件)
実務経験年数 左の工事に従事した期間を記載
合計 満 年 月 使用された期間のうち、建設工事の実務に従事した期間の合計
証明を得られない理由 第三者証明のときのみ記載(行方不明・解散・死亡など)


【実務上のポイント】
「使用された期間」と「実務経験年数の合計」は一致しないことがあります。愛知県では、許可を受けようとする業種に従事した割合を聞き取りしたうえで年数を確認します。建設業以外の職種を兼業している場合は、そのことを加味した割合で聞き取りが行われます。申請前に、その期間中どの程度その業種の工事に携わっていたかを、ご本人に整理してもらっておくとスムーズです。


愛知県の書き方の要点は「暦年1件・直近から」    RULE

様式第九号で最も間違いが多いのが「実務経験の内容」欄です。愛知県は、次のように取り扱っています。


愛知県の記載ルール

▶直近の年から順に、暦年(1月から12月)ごとに従事した工事内容を具体的に1件記載する
▶必要年数分を記載する(10年必要なら10件)
▶年またぎの工事は、原則として工期の始期か終期のどちらか一方の年の工事として扱う
▶年またぎ工事が複数ある場合、始期と終期のどちらを採るかは統一する
▶記載する工事は最新のものとする

出典:愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答 令和8年4月1日版」Q2-21、同「申請書記載例編」様式第九号 記載例


つまり、10年の実務経験で申請するなら「10年分・10件」を、直近の年から1年に1件ずつ並べていく形になります。1年に何十件も工事をしていても、書くのは代表的な1件です。逆に、ある年に該当業種の工事がまったく記載できないと、その年の経験が確認できません


工事名は、契約書の文言そのままである必要はありませんが、その業種の工事であることが読み取れる書き方にしてください。「○○邸改修工事」だけでは業種が判別できないため、「○○邸改修工事の内 内装仕上工事」のように、施工箇所と工事内容が分かるように補記します。


【実務上のポイント】
愛知県はすでに他業種の営業所技術者等になっている方について、営業所技術者等としての業務期間、提出済みの実務経験証明書、事業年度終了届による請負実績を考慮して経験年数を確認するとしています。過去の提出書類と矛盾する内容を書いてしまうと確認が止まります。申請前に、前回の申請書副本と直近の事業年度終了届(決算変更届)を手元に出して、記載しようとしている工事と食い違いがないかを見ておくことをおすすめします。


複数の会社にまたがる場合の枚数と件数    MULTI

勤務先が複数ある場合は、使用者ごとに別々の様式第九号を作成します。ここで問題になるのが「1社あたり何件書けばよいのか」です。


愛知県の記載例では、次の考え方が示されています。


複数枚になる場合の考え方(愛知県の例示)

直近からa社10年、b社5年、c社6年の勤務があり、許可を受けようとする業種に従事した割合がいずれも50%で、合計10年を証明したい場合
①a社の証明書で直近から10行記載(証明年数は5年)
②b社の証明書で直近から5行記載(証明年数は2年6月/①+②で7年6月)
③c社の証明書で直近から3行記載(残り2年6月分)

直近の証明書から順に「1枚で何年分の証明になるか」を計算し、必要年数に到達するまで次の証明書で積み上げていく、という組み立て方です。従事割合が100%でなければ、書いた件数がそのまま年数にはならない点に注意してください。


なお、実務経験の期間は連続している必要はなく、積み上げた合計で判断されます。記載例にも「実績がない時期は空いても問題ありません」と明記されています。


営業所技術者等になるために必要な実務経験の年数と、指定学科・技術検定による短縮については、別記事で詳しく解説しています。


年数が積み上がらない3業種    NG

実務経験証明書を書き始める前に、必ず確認しておきたいのが次の3業種です。本人の感覚では長年やってきたつもりでも、法令上の制約で年数がまったく積み上がらないことがあります。


業種 実務経験として算入できる範囲

電気工事業
消防施設工事業

電気工事士免状・消防設備士免状等の交付を受けた者等でなければ直接従事できない工事については、免状等の交付を受けた者として従事した期間のみ算入できる
解体工事業 平成13年12月1日以降に請け負った解体工事は、解体工事業登録又は建設業許可(平成28年5月31日までは土・建・とび、平成28年6月1日以降は土・建・解体及び一定のとび)を受けた者として請け負った工事に従事した経験のみ算入できる


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」7ページ(営業所技術者等について 2)、同「よくある質問と回答」Q2-22・Q2-23


愛知県は、資格がなくても従事できる工事は実務経験証明書に記載できるとしつつ、認定にあたっては各法令を遵守した作業内容であったかを確認できる資料を求めるとしています。さらに、その作業内容が単なる部品交換やメンテナンス、整備等でないことが必要です。


一方で、平成28年5月31日までにとび・土工工事業の許可で請け負った解体工事に係る実務経験の期間は、平成28年6月1日以降、とび・土工工事業と解体工事業の両方の期間として二重に計算できるという例外があります。


また、そもそも実務経験に含まれないものもあります。実務経験とは建設工事の施工に関する技術上のすべての職務経験をいい、単なる建設工事の雑務の経験や、庶務経理事務の経験は含まれません。反対に、発注に当たって設計技術者として設計に従事した経験、現場監督技術者として監督に従事した経験、土工およびその見習いに従事した経験は含まれます。


裏付け資料はどこまで必要か    PROOF

経営業務の管理責任者の経験については、愛知県は契約書・注文書・請求書+入金確認といった請負確認資料を必要年数分そろえることを求めています。これに対し、営業所技術者等の実務経験については、確認資料の一覧表に必要年数分の請負確認は掲げられていません。


ただし、これは資料が不要という意味ではありません。記載例には次のとおり明記されています。


▶証明書に記載する工事について、記載内容の確認ができる契約書等の資料を求める場合がある
▶実務経験の内容を確認するために、契約書、見積書、工程表等の提示を求める場合がある


【実務上のポイント】
求められてから探すと日程が崩れます。実務経験証明書に書いた工事の契約書・注文書・請求書は、記載した年ごとにファイルして手元に用意してから申請することをおすすめします。特に、証明者が現在の自社ではない場合(前職の会社が証明者になる場合)は、書類を出してもらうこと自体に時間がかかります。証明を依頼する段階で、あわせて工事資料の写しももらえないか相談しておくと安全です。


これとは別に、様式第九号を出す・出さないにかかわらず、営業所技術者等については常勤性の確認資料が必須です。個人事業主本人を除き、次の順に確認して最初に当てはまった資料(申請時直近のもの)を用意します。


健康保険・厚生年金標準報酬額決定通知書【写し】又は厚生年金保険70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ【写し】
住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)【写し】
所得証明書(市区町村発行のもの)【原本】+源泉徴収票【写し】
雇用保険被保険者証【写し】+雇用保険被保険者資格取得等確認通知書【写し】(被保険者区分が「1」のものに限る)


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」22ページ(常勤性の確認)


常勤性の確認資料の選び方と、健康保険証が使えなくなった後の対応は、別記事にまとめています。

よくあるご質問    FAQ

Q.以前勤めていた会社が倒産しています。誰に証明してもらえばよいですか。
本人の実務経験について証明しうる、現在建設業の許可を有する第三者が証明者となります。証明者欄に許可番号と連絡先電話番号の記載が必要です。証明内容について、その第三者の十分な理解と了承を得たうえで証明を受けてください。


Q.2業種を実務経験だけで取りたいのですが、10年で足りますか。
足りません。経験期間は業種ごとに重複して計算できないため、10年の実務経験が必要な業種を2つ取るには、経験割合が均等の場合で最低20年の実務経験が必要になります。ただし業種の組み合わせによっては、愛知県の緩和措置により必要年数が最大2年間緩和される場合があります。


Q.実務経験証明書に押印は必要ですか。
不要です。愛知県は令和3年1月4日から、建設業法施行規則に定める様式および県が提出を求めている様式のすべてについて押印を廃止しています。申請書は印のないものを提出してください。ただし、行政書士が作成した場合は行政書士氏名の記載と職印の押印が確認されます。


Q.10年に2年ほど足りません。あきらめるしかありませんか。
指定学科の卒業や技術検定の合格があれば、必要年数が3年または5年に短縮されます。また愛知県には、近い業種の経験を合わせて12年以上あり、そのうち当該業種の経験が8年を超えている場合に有実務経験者として認定する実務経験の緩和措置があります。この場合は申請業種と他業種の両方について様式第九号を作成します。個別の経歴によって結論が変わりますので、年数が足りないと感じた段階で一度ご相談ください。


まとめ    SUMMARY

▶様式第九号は、資格ではなく実務経験で営業所技術者等を証明するときに提出する
▶建設工事の種類・技術者・証明者・当時の使用者ごとに、それぞれ別の証明書を作成する
▶証明者は原則として当時の使用者。倒産等の場合のみ、現在許可を有する第三者が証明する
▶「自営のため」は使用者の証明を得られない理由にならない
▶愛知県では、直近の年から暦年(1月~12月)ごとに1件、必要年数分を具体的に記載する
▶年またぎ工事は始期か終期のどちらか一方に寄せ、全体で統一する
▶「使用された期間」は雇用期間、「合計 満 年 月」は実務に従事した期間の合計
▶電気工事・消防施設工事・解体工事は、免状や許可・登録の有無で年数が積み上がらないことがある
▶記載した工事の契約書等の提示を求められることがあるため、年ごとに資料を用意しておく
▶様式第九号とは別に、営業所技術者等の常勤性の確認資料が必要


実務経験で許可を取れるかどうかは、年数の長さよりも「その年数を書類の形にできるか」で決まります。手元の資料で10年分が並ぶかどうかは、経歴と保管資料を見ないと判断できません。


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