

【この記事を書いた人】行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県の稲沢市を中心に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
許可取得後に毎年発生する手続きまで含めて、継続的にサポートしています。
「県外の工事を請けることになったが、うちは愛知県知事許可のままで大丈夫なのか」——これは当事務所でも定期的にお受けするご相談です。
結論から申し上げると、愛知県知事許可のままで、東京でも大阪でも工事を施工できます。大臣許可と知事許可を分けているのは工事をする場所ではなく、営業所をどこに置いているかだけです。
この記事では、両者の違いと、実務で本当に注意すべき「営業所」の考え方を整理します。
【全体像】
▶営業所が1つの都道府県内にのみある/その都道府県の知事許可
▶営業所が2つ以上の都道府県にある/国土交通大臣許可
▶工事を施工できる範囲/どちらの許可でも全国どこでも可能
「大臣許可のほうが格上で、大きな工事を請けられる」という誤解をよく耳にしますが、そうではありません。
請け負える工事の規模を分けているのは一般建設業と特定建設業の区分であって、大臣・知事の区分ではありません。
根拠となるのは建設業法第3条第1項です。
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。
条文を読むと、判断基準として書かれているのは「営業所をどこに設けるか」だけで、工事の施工場所については一切触れられていないことがわかります。
| 営業所の置き方 | 施工する場所 | 必要な許可 |
|---|---|---|
| 本店(稲沢市)のみ | 愛知県内 | 愛知県知事許可 |
| 本店(稲沢市)のみ | 東京都・大阪府など県外 | 愛知県知事許可 |
| 本店(稲沢市)+支店(名古屋市) | 全国 | 愛知県知事許可 |
| 本店(稲沢市)+支店(岐阜市) | 全国 | 国土交通大臣許可 |
営業所が何か所あっても、それが1つの県内に収まっていれば知事許可です。
名古屋・豊橋・豊田に営業所を出しても愛知県知事許可のままで問題ありません。逆に、岐阜県に1か所出した時点で大臣許可になります。
建設業法には、施工できる区域を制限する規定がありません。したがって愛知県知事許可の業者が東京都内の現場で施工することも、九州の工事を請け負うことも法律上は可能です。
実際、元請から県外の応援を頼まれるケースや、既存の取引先が県外に出店するのに合わせて動くケースは珍しくありません。そのたびに大臣許可へ切り替える必要はありません。
ここが実務上の唯一かつ最大の注意点です。建設工事の請負契約を締結できるのは、許可を受けた営業所に限られます。
つまり愛知県知事許可の事業者が東京の工事を施工する場合、契約は愛知県内の営業所で締結し、施工だけを東京で行うという形になります。
県外の現場に事務所を構え、そこで継続的に契約を結んでしまうと、その事務所が建設業法上の「営業所」に該当し、大臣許可が必要な状態になります。無許可営業と評価されるおそれがあるため、県外に拠点を置く場合は必ず事前にご相談ください。
大臣か知事かの判断がすべて「営業所」にかかっている以上、この定義を正確に押さえる必要があります。
(支店に準ずる営業所)
第一条 建設業法(以下「法」という。)第三条第一項の政令で定める支店に準ずる営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所とする。
ポイントは名称ではなく実態で判断されるという点です。「支店」「営業所」「出張所」「センター」など呼び方は関係なく、常時建設工事の請負契約を締結している事務所であれば営業所に該当します。
契約書に押印する行為だけを指すわけではありません。見積りの作成・提示、入札への参加、契約条件の交渉など、契約締結に至る実質的な行為が含まれます。
「うちの県外事務所は見積りを出しているだけで、契約書は本社で押している」という運用でも、営業所と判断される可能性があります。
▶該当する/常時請負契約を締結している事務所(名称は問わない)
▶該当する/契約締結権限が委任され、見積り・入札を行っている拠点
▶該当しない/資材置場・作業員詰所・車庫のみの拠点
▶該当しない/単に登記上の本店になっているだけで実態のない場所
▶該当しない/特定の工事期間だけ設置する現場事務所
▶該当しない/海外にある支店等
【実務上のポイント】
逆に見落としやすいのが、登記上の本店が営業所ではないケースです。社長の自宅を本店登記したまま、実際の業務は別の事務所で行っている——建設業では珍しくない形ですが、この場合に営業所として届け出るのは実際に契約を締結している事務所のほうです。登記と許可申請の内容がずれていると、申請時に説明を求められます。
営業所として届け出るには、実体を備えている必要があります。愛知県の場合、写真の提出により確認されます。
▶外部から来客を迎え入れ、契約締結の業務を行える構造であること
▶事務所として使用する権原があること(自己所有・賃貸借契約など)
▶看板・標識等により建設業の営業所であることが外部から認識できること
▶固定電話・机・各種事務台帳等が備えられていること
▶その営業所に専任技術者が常勤していること
▶契約締結の権限を委任された者が常勤していること
住居兼用の場合は、居住スペースと事務所スペースが明確に区分されていることが求められます。玄関から居室を通らずに事務所へ入れるか、といった点も確認されます。判断に迷う場合は、間取りがわかる写真を送っていただければその場でお答えできます。
事業の拡大にともない、実際に県外へ営業所を設けることになった場合は「許可換え新規」という手続きになります。変更届では足りません。
| 愛知県知事許可 | 国土交通大臣許可 | |
|---|---|---|
| 新規の法定費用 | 許可手数料 90,000円 | 登録免許税 150,000円 |
| 標準処理期間の目安 | 約1か月 | 約3か月 |
| 専任技術者 | 営業所ごとに常勤 | 営業所ごとに常勤 |
【実務上のポイント】
許可換え新規で最も注意が必要なのは審査期間です。大臣許可は知事許可より審査に時間がかかります。新しい許可が下りるまで従前の許可は有効ですが、営業所の実体が先にできあがってしまうと、その期間の契約の扱いが問題になりかねません。賃貸借契約を結ぶ前の段階でご相談いただくのが最も安全です。
また、許可換え新規では有効期間が新たに5年となり、許可番号も新しいものになります。取引先へ許可番号を通知している場合は、切り替えの案内が必要です。
許可換え新規の手続きについては、建設業許可の申請代行ページで費用と流れをご案内しています。
施工場所は許可区分に影響しません。愛知県知事許可のまま全国で施工できます。
上下関係はありません。請負金額の上限に関わるのは一般か特定かの区分です。大臣許可の一般建設業より、知事許可の特定建設業のほうが大きな工事を下請に出せます。
判断されるのは登記の有無ではなく実態です。他県に支店登記をしていても、そこで建設工事の請負契約を締結していないのであれば営業所には該当しません。ただし説明を求められることがあるため、事前の整理をおすすめします。
▶大臣許可と知事許可の違いは、営業所が2県以上にまたがるかどうかだけ
▶知事許可でも全国で施工できる/許可を取り直す必要はない
▶ただし請負契約は許可を受けた営業所で締結する
▶県外に常時契約する拠点を置くと大臣許可が必要になる
▶切り替えは「許可換え新規」/審査に時間がかかるため早めの相談を
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