【愛知県の建設業許可】社会保険に入ってない一人親方でも許可は取れる?|加入義務の判定基準

【愛知県の建設業許可】社会保険に入ってない一人親方でも許可は取れる?|加入義務の判定基準

社会保険加入義務がなければ許可を申請できますが、法律上加入すべき義務がある場合は加入していないと許可は取得できません。一人親方と法人で異なる加入義務、従業員雇用時の対応を解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「一人親方で社会保険に入っていない。建設業許可は取れないのか」——令和2年10月に社会保険の加入が要件化されて以降、増えたご相談です。
答えは、法律上加入義務があるのに加入していない場合に許可が取れない、というものです。裏を返せば、法律上の加入義務がなければ問題ありません。


自分に加入義務があるかどうかは、事業所の形態と常用労働者の数で決まります。この記事では、その判断表と、元請から求められる確認まで整理します。



結論:加入義務があるのに未加入だと申請できません    CONCLUSION

令和2年10月に施行された改正建設業法において、「適切な社会保険の加入」が要件化されました。すべての建設業を営む者が建設業許可の申請の際に、適切な社会保険に加入しているか確認されます。


建設業で求められる社会保険とは、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つです。


▶これらの保険について法律上加入義務があるのに加入していない場合/建設業許可の申請ができません
▶法律上の加入義務がない場合/未加入でも申請できます


つまり争点は「入っているかどうか」ではなく、「あなたに加入義務があるかどうか」です。


なぜ要件化されたのか    HAIKEI

建設業においては、社会保険等の法定福利費を適正に負担しない保険未加入企業が存在し、若年入職者減少の原因の一つとなっていました。


さらに、関係法令を遵守して適正に法定福利費を負担する事業者ほど競争上不利になるという矛盾した状況が生じていました。


このため国土交通省では、平成24年度から社会保険未加入対策が進められてきました。建設業者の社会保険加入率100%を目標に様々な取り組みが行われ、加入率は年々上がってきましたが、残り数パーセントの社会保険未加入建設業者が無くなりません。そこで令和2年10月の改正で要件化に至った、という経緯です。


「適切な社会保険」の判断表    HANDAN

事業所の形態(法人や個人)、常用の労働者数、就労形態によって加入すべき社会保険が異なります。次の表で判断してください。


事業所の形態 常用労働者の数 就労形態 雇用保険 医療保険(いずれか加入) 年金保険
法人 1人~ 常用労働者 雇用保険 協会けんぽ/健康保険組合/適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等) 厚生年金
法人 役員等 協会けんぽ/健康保険組合/適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等) 厚生年金
個人事業主 5人~ 常用労働者 雇用保険 協会けんぽ/健康保険組合/適用除外承認を受けた国民健康保険組合(建設国保等) 厚生年金
個人事業主 1人~4人 常用労働者 雇用保険 国民健康保険/国民健康保険組合(建設国保等) 国民年金
個人事業主 事業主、一人親方 国民健康保険/国民健康保険組合(建設国保等) 国民年金


▶法人(常用労働者1人~)/3保険
▶法人(役員等)/医療保険及び年金保険
▶個人事業主(常用労働者5人~)/3保険
▶個人事業主(常用労働者1~4人)/雇用保険(医療保険と年金保険については個人で加入)
▶個人事業主(事業主、一人親方)/医療保険と年金保険については個人で加入


※1 年金事務所において健康保険の適用除外の承認を受けることにより、国民健康保険組合に加入する(この場合は、協会けんぽに加入し直す必要は無い)。
※2 週所定労働時間が20時間以上等の要件に該当する場合は、常用であるか否かを問わない。
※3 一人親方については、請負としての働き方をしている場合に限る


出典:国土交通省「「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」における「適切な保険」について」をもとに作成


【実務上のポイント】
一人親方本人は、医療保険と年金保険を個人の責任において加入するものと整理されています。国民健康保険と国民年金に加入していれば、社会保険の要件との関係で許可申請ができない、ということにはなりません。
注意したいのは法人の役員です。従業員がゼロでも、法人であれば役員は医療保険と年金保険(厚生年金)への加入が必要になります。「一人でやっているから同じ」ではありません。



一人親方は「請負としての働き方」が前提    UKEOI

上の表で一人親方が個人加入で足りるとされているのは、請負としての働き方をしている場合に限られます


この点は、国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」でも、元請の役割として明記されています。


元請による一人親方の実態の適切性の確認

労災保険料の適切な算出や、令和6年4月1日以降に適用される時間外労働規制の導入への対応に向けて、当該作業員が工事を請け負う個人事業主として現場に入場するのか実態が雇用契約を締結すべきと考えられる雇用労働者として現場に入場するのか、十分確認することが必要である。

下請企業の側も、労働者である社員と請負関係にある一人親方の二者を明確に区別したうえで、労働者である社員については社会保険加入手続を適切に行うことが必要とされています。


つまり、名目上は一人親方でも、実態が雇用労働者であれば、雇う側に社会保険の加入手続が求められることになります。


未加入だと元請から選ばれなくなります    SENTEI

許可の要件を満たすかどうかとは別に、受注そのものに影響します。下請指導ガイドラインでは、元請の役割として次のように定められています。


▶下請契約に先立って、選定の候補となる建設企業について社会保険の加入状況を確認し、適用除外でないにもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続を進めるよう指導を行うこと
▶健康保険、厚生年金保険、雇用保険の全部又は一部について、適用除外でないにもかかわらず未加入である建設企業は、下請企業として選定しないとの取扱いを徹底すべきである
▶確認は、登録時に社会保険の加入証明書類の確認を行うなど情報の真正性が厳正に担保されている建設キャリアアップシステムを活用して行うこと
▶新規入場者の受け入れに際して、各作業員について作業員名簿の社会保険欄を確認すること
▶保険加入状況が確認できない場合は、特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いを徹底すべきである


さらに、令和2年10月の改正法施行により建設業者は社会保険の加入が要件となりましたが、無許可業者に対しても建設業者と同様に取り扱うべきとされています。元請は、選定候補となる建設業を営む者が無許可業者であったとしても、社会保険未加入で建設業を営む者は下請として選定しないという取扱いをすべきでしょう。


【実務上のポイント】
許可が取れるかどうか以前に、現場に入れるかどうかの問題になっています。作業員名簿と建設キャリアアップシステムで確認される以上、書類上だけ整えるという対応は通用しません。
なお、法定福利費については、元請・下請とも見積時から必要経費として適正に確保することが求められています。再下請負させる場合は、標準見積書の活用等により法定福利費相当額を内訳明示した見積書を提出するよう再下請負人に働きかけ、提出された見積書を尊重して契約を締結しなければなりません。


一人親方でも経管と営業所技術者等を兼務して許可を取れる点については、別記事で解説しています。


まとめ    SUMMARY

▶令和2年10月の改正建設業法で「適切な社会保険の加入」が要件化された
▶対象は健康保険・厚生年金保険・雇用保険の3つ
▶法律上加入義務があるのに未加入だと、建設業許可の申請ができない
▶加入すべき保険は、事業所の形態・常用労働者数・就労形態で決まる
▶個人事業主の事業主・一人親方は、医療保険と年金保険を個人で加入する扱い
▶ただし一人親方として扱われるのは、請負としての働き方をしている場合に限られる
▶元請は未加入企業を下請として選定しない取扱いを徹底すべきとされている


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