【愛知県の建設業許可】海外での役員経験は建設業許可に使える?|国土交通大臣認定の要件と申請の流れ

【愛知県の建設業許可】海外での役員経験は建設業許可に使える?|国土交通大臣認定の要件と申請の流れ

外国の建設会社での取締役経験も、国土交通大臣認定を受ければ経営業務の管理責任者の経験として認められます。対象となるケース、必要書類、翻訳と公証、申請の流れまで愛知県稲沢市の行政書士が国交省の一次資料に基づいて解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「海外の建設会社で長く取締役をやっていた。この経験は建設業許可に使えるのか」——外国人経営者の方だけでなく、海外赴任の経験がある日本人の方からもいただくご質問です。
結論から申し上げると、使えます。ただし通常の許可申請とは別に、国土交通大臣の認定を受ける必要があります


建設業許可の経験要件は、原則として日本国内での経験を前提に組み立てられています。そのため外国での経験をそのまま許可申請書に書いても、そのままでは認められません。この記事では、大臣認定という制度の中身と、申請の進め方を解説します。


経営業務の管理責任者(経管)についてはこちらの記事で詳しく解説しています。



結論:大臣認定を受ければ外国での経験も使えます    CONCLUSION

建設業法第7条第1号は、経管(常勤役員等)の要件としてイ・ロ・ハの3つを定めています。このうちハが大臣認定の根拠です。


建設業法 第7条第1号ハ

国土交通大臣がイ又はロに掲げるものと同等以上の経営体制を有すると認定したもの
建設業法(e-Gov法令検索)

イ(個人の経験で満たすパターン)にもロ(補佐者を置くパターン)にも当てはまらない場合でも、大臣が個別に「同等以上」と認めれば経管になれるという規定です。


国土交通省は、この制度について次のように説明しています。


▶原則/実務経験・学歴・資格の要件は、日本国内のものを前提に定められている
▶例外/外国での実務経験・学歴・資格を加味して要件を満たす者として取り扱うことができる
▶対象者は日本人・外国人を問わず、実務経験も日本企業・外国企業を問わない


「外国人のための制度」と誤解されがちですが、日本人の海外赴任経験にも使えます
(参照:国土交通省「建設業に関する外国での経験等を有する者の認定について(大臣認定)」


経管以外にも使えます

大臣認定の対象は経管だけではありません。想定されているのは次の3つのケースです。


ケース 認定を受けられる立場
外国での実務経験がある 常勤役員等(経管)、営業所技術者等、現場配置技術者
外国の学校を卒業した 営業所技術者等、現場配置技術者
外国の資格(検定・免許など)を持っている 営業所技術者等(特定建設業)、現場配置技術者


国土交通省のページでは現在も「営業所専任技術者」という表記が使われていますが、2024年12月13日の改正建設業法施行により、名称は「営業所技術者等」に変わりました。呼び方が変わっただけで、役割も要件も同じです。


そもそも「経管としての経験」とは何を指すのか    EXPERIENCE

大臣認定の話に入る前に、前提を確認します。経管に求められる「経営業務の管理責任者としての経験」とは、次のような経験をいいます。


▶営業取引上、対外的に責任ある地位にあること
▶建設業の経営業務について、総合的に管理した経験であること


具体的には、法人の役員・個人事業主・支店長などの地位で、建設業の経営を総合的に行った経験です。


【実務上のポイント】
肩書きだけでは足りません。たとえば支店長という地位にあっても、実態としては工事の施工しか行っておらず、経営業務に携わっていなかったという場合、経管としての経験には認められません。
海外での経験を証明する場合も、この「総合的に管理していたか」が問われます。現場の技術者として駐在していた期間は、経管の経験にはなりません。


日本国内の経管要件そのものについては、別記事で詳しく解説しています。まずはそちらで自社に候補者がいないかを確認してから、大臣認定を検討する順序をおすすめします。

大臣認定の申請に必要な書類    DOCUMENTS

経管について大臣認定を受ける場合の提出書類は、施行規則第7条第1号のイで申請するかロで申請するかによって変わります


▶①認定申請書(別紙様式1)

▶②認定を受けようとする者の履歴書

▶③常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(別紙様式2)

▶④役員就任・退任議事録 または 会社登記簿謄本

▶⑤会社組織図

▶⑥建設工事を施工した契約書の写し

▶⑦会社概要資料(パンフレット、建設業許可証の写し、会社登記簿謄本 等)

▶①認定申請書(別紙様式1)

▶②認定を受けようとする者、補佐人の履歴書

▶③常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者の証明書(別紙様式3)

▶④役員就任・退任議事録 または 会社登記簿謄本

▶⑤補佐人に対する確認資料(組織図、業務分掌規程、人事発令 等)

▶⑥会社組織図

▶⑦建設工事を施工した契約書の写し(国内経験で許可業者であれば許可通知書)

▶⑧会社概要資料(パンフレット、建設業許可証の写し、会社登記簿謄本 等)


いずれも一例であり、審査の過程で追加資料を求められることがあります
(参照:国土交通省「大臣認定申請の方法について」


【実務上のポイント】
③の証明書は勤務先が複数ある場合、証明者ごとに作成します。⑥の契約書は原則として1年につき1件ずつ必要です。5年分を証明するなら最低5件、海外の会社から取り寄せることになります。
④について公的な資料が用意できない場合は、客観的に信用に足りる書類を代わりに準備します。国によっては日本の登記簿謄本にあたる制度がないため、ここが最初の関門になります。


翻訳と公証というもう一つの壁    NOTARIZATION

外国語で作られた書類は、そのまま提出できません。和訳をつけ、さらにその和訳について公証を受ける必要があります。


公証とは

国民の私的な法律紛争を未然に防ぎ、私的法律関係の明確化・安定化を図ることを目的として、証書の作成等の方法により一定の事項を公証人に証明させる制度です。
認定申請では、外国語の書類とその和訳書類について、①署名または記名押印の認証②宣誓認証のいずれかの手続きが必要になります。

公証を受ける場所は、最寄りの公証役場です。手続きの詳細は事前に問い合わせておくとスムーズです。


和訳は全文を訳す必要はありません。申請内容が確認できる箇所だけで足ります。契約書1通をすべて翻訳すると費用も日数も跳ね上がりますので、どこを訳すかの見極めが実務上のコスト差になります。


申請の流れ    FLOW

大臣認定は、建設業許可の申請より先に行う手続きです。順序を間違えると許可申請そのものが進みません。


順序 手続き 相手方
大臣認定申請 国土交通省 不動産・建設経済局 国際市場課
認定証の交付 同上
建設業許可申請(②を確認資料として添付) 許可行政庁(愛知県知事許可なら愛知県)
許可通知書の交付 許可行政庁


提出先は許可行政庁ではなく、国土交通省の国際市場課 国際調査係に直接です。愛知県の事業者であっても、愛知県庁ではなく霞が関に提出します。


提出前に電話が必要です

国土交通省は、申請書類がそろった段階で提出前に必ず電話で問い合わせるよう求めています。書類の整理状況を確認するためです。


さらに、いきなり正式な申請書類を出すのではなく、次の順序を踏むよう案内されています。


▶①「申請(案)」として事前確認を受ける
▶②確認が取れてから公証手続きを行う
▶③あらためて正式な申請書類として提出する


この順序を守らずに先に公証を済ませてしまうと、書類の差し替えを求められた際に公証費用が無駄になります。また、書類は1部を順番どおりにそろえて提出し、原則として返却されません。整理状況が非常に悪い場合は再提出を求められることもあります。

準備には数か月かかります

国土交通省自身が、申請書類の準備に数か月を要することが多いと案内しています。外国からの資料取り寄せ、和訳、公証、事前確認と工程が多いためです。


「今月中に許可がほしい」というスケジュールでは、まず間に合いません。役員就任や事業計画から逆算して、早めに着手する必要があります。


外国での経験と日本での経験を通算して申請する場合は、日本での経験に関する確認資料も併せて提出します。「海外部分だけ見てもらえばいい」わけではなく、日本国内の経験についても通常どおりの立証が必要です。


申請先・問い合わせ先    CONTACT

窓口 国土交通省 不動産・建設経済局 国際市場課 国際調査係
所在地 〒100-8918 東京都千代田区霞が関2-1-3 中央合同庁舎第3号館3階
電話 03-5253-8280(直通)


申請様式(別紙様式1〜3)と記載例は、国土交通省のページからダウンロードできます。
(参照:国土交通省「大臣認定」申請様式ページ


なお、外国籍の方を経管や営業所技術者等として迎える場合は、在留資格でその活動が認められているかという別の問題も生じます。就労系の在留資格には活動範囲の制限がありますので、大臣認定と並行して確認が必要です。

まとめ    SUMMARY

▶外国での役員経験も、大臣認定を受ければ経管の経験として認められる(建設業法第7条第1号ハ)
▶対象は日本人・外国人を問わず、経管だけでなく営業所技術者等・現場配置技術者にも使える
▶肩書きではなく「経営業務を総合的に管理していたか」が問われる
▶外国語書類は和訳と公証が必要。ただし全文翻訳は不要
▶提出先は許可行政庁ではなく国土交通省。提出前の電話と事前確認が必須
▶準備に数か月かかるため、逆算した早めの着手が必要


大臣認定は件数が少なく、手引きのようなマニュアルが公表されていない手続きです。1件ごとに担当官と相談しながら進めることになるため、通常の許可申請とは進め方が大きく異なります。


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