

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
支店や営業所を出すときに必要になるのが令3条使用人です。「経管や営業所技術者等と同じように常勤でないとダメなのか」というご質問をよくいただきます。
結論を先にお伝えすると、建設業法の条文に「常勤でなければならない」という定めはありませんが、愛知県の手引は常勤に相当する勤務を求めています。実務上は常勤を前提に人選してください。
この記事では、令3条使用人の定義と常勤性、テレワークの扱い、そして支店を出すとき・担当者が代わったときの届出まで、一通り整理します。
令3条使用人とは、正式には「建設業法施行令第3条に規定する使用人」といいます。建設業法施行令第3条は、この使用人を「支配人及び支店又は常時建設工事の請負契約を締結する事務所の代表者」と定めています。
支店長や営業所長などが該当しますが、役職名だけで令3条使用人に該当するわけではありません。
▶本店(主たる営業所)の代表者/経営業務の管理責任者
▶支店などの従たる営業所の代表者/令3条使用人
愛知県も、令3条使用人を次のように説明しています。
法人等の代表権者から、見積や契約締結・入札参加等の委任を受けている支店や営業所の代表者(支店長や営業所長等)を指します。また、個人事業主のもとで、支配人登記された方も該当します。
出典:愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答」令和8年4月1日版
つまり、判断の軸は権限です。その営業所における建設工事の見積り・入札・請負契約の締結等をする権限が与えられているかで決まります。この権限が与えられている人が令3条使用人に該当するのであって、役職名は例えば副支店長等であっても問題ありません。
また、令3条使用人は役員であることを求められていません。従業員でも該当します。
【実務上のポイント】
肩書きと権限がずれている会社は少なくありません。「支店長」という名前でも見積や契約締結の権限がなければ該当しませんし、逆に「副支店長」でも権限を持っていれば該当します。
支店を出す前に、誰にどこまでの権限を持たせるかを社内で決めておくと、申請時に迷わずに済みます。権限が曖昧なまま届け出ると、後から実態と合わなくなります。
なお、そもそも建設業法上の「営業所」に何が該当するのかは、令3条使用人を置くかどうかの前提になります。単なる作業所・現場詰所・資材置き場は営業所にあたらないため、令3条使用人を置く必要もありません。建設業許可の「営業所」の定義を解説した記事もあわせてご覧ください。
経管(常勤役員等)と営業所技術者等については、建設業法が常勤・専任を明確に求めています。一方、令3条使用人については、建設業法の条文に「常勤でなければならない」という定めがありません。
しかし、条文に明文がないことと、非常勤で通ることは別の話です。国土交通省の建設業許可事務ガイドラインは、令3条使用人について次のように説明しています。
2.許可申請書類の審査要領について
(12)建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表(様式第十一号)について
「建設業法施行令第3条に規定する使用人」とは、建設工事の請負契約の締結及びその履行に当たって、一定の権限を有すると判断される者、すなわち支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者である者が該当する。これらの者は、当該営業所において締結される請負契約について総合的に管理することや、原則として、当該営業所において休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事(テレワークを行う場合を含む。)していることが求められる。
なお、この表は、これらの者のうち役員を兼ねている者についても記載させるものとする。
出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」
「休日その他勤務を要しない日を除き一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している」——これは常勤の説明そのものです。
そして愛知県の手引は、様式第十一号の説明欄で、この部分を「その職務に従事している必要があります」と書いています。ガイドラインの「求められる」より踏み込んだ表現です。
出典:愛知県「建設業許可の手引き(申請書記載例編)」P23(令和8年4月版)、同「建設業法による変更届等の手引」P15
条文に明文がないことを根拠に非常勤の方を令3条使用人として届け出ると、ガイドラインと愛知県の手引の記載を根拠に指摘を受ける可能性があります。
令3条使用人は営業所で契約を締結する立場の人です。その営業所にいない人を代表者として届け出ること自体、制度の趣旨に合いません。実務上は、常勤を前提に人選してください。
営業所以外の場所で職務に従事する場合でも、次の条件を満たすのであれば、令3条使用人のテレワークが認められます。
▶ICTの活用により、営業所で職務に従事している場合と同等の職務を遂行できること
▶所定の時間中において常時連絡を取ることが可能な環境下にあること
▶その環境下でその職務に従事すること
先ほどのガイドラインでも、令3条使用人が職務に従事することの中にテレワークを行う場合が含まれると明記されています。
【実務上のポイント】
テレワークは「常勤の要件をテレワークという形で満たす」という位置づけです。所定の時間中に常時連絡が取れることが条件になっているので、勤務時間そのものが短くなるわけではありません。
常勤の代わりにテレワークを使う、という発想ではなく、常勤の形態としてテレワークが選べるとお考えください。テレワークを前提にする場合は、申請前に勤務実態を説明できるよう、就業規則や勤務管理の記録を整理しておくことをおすすめします。
テレワークの扱いは、経管(常勤役員等)や営業所技術者等についても同じ考え方です。経管・営業所技術者等のテレワークと常勤性を解説した記事で詳しく整理しています。
建設業許可は会社単位で受けますが、実際に契約を結ぶのは各営業所です。そこで、どの営業所で誰が契約権限を持っているのかを行政庁に明らかにしておく必要があります。そのための書類が、様式第十一号「建設業法施行令第3条に規定する使用人の一覧表」です。
従たる営業所がある場合、または個人事業主で支配人を置いている場合に、該当する営業所長・支配人等を記載します。
▶記載するのは「従たる営業所」のみ。主たる営業所(本店)の代表者は記載しません
▶該当者がいない場合も「該当なし」と書いて添付します
▶様式第十三号(住所、生年月日等に関する調書)の記載内容と一致させます
出典:愛知県「建設業許可の手引き(申請書記載例編)」P23(令和8年4月版)
令3条使用人に変更があったときは、事実発生後30日以内に変更届出書(様式第二十二号の二)を提出します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提出期限 | 事実発生後30日以内 |
| 提出様式 | 変更届出書(様式第二十二号の二)/届出事項は「令第3条に規定する使用人」 |
| 添付書類 |
・誓約書(様式第六号) |
| 提出部数 | 正本1部及び副本1部の計2部(副本は写し可) |
| 手数料 | 不要 |
出典:愛知県「建設業法による変更届等の手引」P1・P11・P15(令和8年4月版)
なお、すでに役員等または令第3条の使用人であった方が別の営業所へ異動する場合など、添付書類の一部が不要になるケースがあります。異動の内容によって変わりますので、手引の該当ページで確認してください。
経管(常勤役員等)と営業所技術者等の変更は2週間以内ですが、令3条使用人の変更は30日以内です。同じ変更届でも期限が分かれています。
支店長の交代と同時に営業所技術者等も入れ替わる、というケースでは2週間以内のほうに合わせて動くのが安全です。人事異動の内示が出た段階で、どの届出が必要かを洗い出しておくことをおすすめします。
変更届全般の期限と必要書類は、建設業許可の変更届を解説した記事にまとめています。
見落とされやすい点ですが、令3条使用人は欠格要件の審査対象です。建設業法第8条は、法人の役員等または政令で定める使用人(=令3条使用人)のうちに一定の欠格事由に該当する者がいる場合、許可をしてはならないと定めています。
つまり、支店長ひとりの事情で、会社全体が許可を取れなくなる、あるいは許可を取り消される可能性があります。
【実務上のポイント】
人事異動で支店長を交代させる前に、後任の方について後見等登記事項証明書と身元(身分)証明書を取得できるかを確認しておいてください。証明書はいずれも発行から3か月以内のものが必要です。
また、欠格要件に該当するに至った場合は、事実発生後2週間以内に届出書(様式第二十二号の三)を提出する義務があります。届出を怠ると許可の取消事由に該当します。
令3条使用人は、経管や営業所技術者等と違い、建設業許可そのものの要件ではありません。従たる営業所を設ける場合に、その営業所の代表者として置く人です。
そのため、経管・営業所技術者等と完全に同じ取扱いにはなりません。
| 経管・営業所技術者等 | 令3条使用人 | |
|---|---|---|
| 許可要件 | 要件である | 要件ではない |
| 常勤 | 法令上求められる | 建設業法に明文の定めはないが、ガイドライン・愛知県手引が原則として常勤に相当する勤務を求めている |
| 役員であること |
経管は必要 |
求められない |
| 判断基準 | 地位・資格・実務経験 | 見積・入札・請負契約締結等の権限 |
| 変更届の期限 | 2週間以内 | 30日以内 |
| 欠格要件の審査 | 対象 | 対象 |
令3条使用人そのものは経管になれません。経管になれるのは常勤役員等(常勤の取締役、個人事業主、支配人 等)に限られており、令3条使用人はここに含まれないためです。
ただし、令3条使用人としての経験は、経管の経験年数として算入できます。支店長を5年務めた方が、その後に取締役へ就任すれば経管になれる、というルートです。
経管になれる人の要件は、経営業務の管理責任者には誰がなれるかを解説した記事で詳しく整理しています。
【実務上のポイント】
営業所技術者等との兼務について、愛知県の手引には令3条使用人と営業所技術者等の兼務の可否が明記されていません(経管と営業所技術者等の兼務については、勤務場所が同一の主たる営業所であれば可能と記載されています)。
同一人物に両方を担わせる予定がある場合は、申請前に管轄の建設事務所へ確認してください。体制を決めてから確認するのではなく、確認してから体制を決めるほうが手戻りがありません。
なりません。ガイドラインは令3条使用人を「支配人及び支店又は営業所(主たる営業所を除く。)の代表者」と定義しています。様式第十一号にも、従たる営業所についてのみ記載します。本店の代表者は、経管(常勤役員等)として様式第七号で証明することになります。
提出します。愛知県の記載例編では、該当者がいない場合も「該当なし」と書いて添付するとされています。様式ごと省略するのではなく、該当なしと明記した用紙を添付してください。
支店長・営業所長として届け出る場合、登記は必要ありません。一方、個人事業主が支配人を置く場合は支配人登記が必要で、変更届には支配人の登記事項証明書(変更日の記載があるもの)を添付します。法人の支店については、支店登記をしている場合にその登記事項証明書が必要になることがあります。
▶令3条使用人とは「建設業法施行令第3条に規定する使用人」で、支店など従たる営業所の代表者
▶役職名ではなく、見積・入札・請負契約の締結等の権限があるかで判断される
▶役員である必要はない
▶建設業法に「常勤でなければならない」という明文はないが、ガイドラインと愛知県の手引が常勤に相当する勤務を求めている。実務上は常勤が前提
▶ICTの活用と常時連絡可能な環境があれば、テレワークは認められる
▶様式第十一号の一覧表は、該当者がいない場合も「該当なし」と書いて添付する
▶担当者が代わったときの変更届は、事実発生後30日以内(経管・営業所技術者等の2週間以内とは異なる)
▶令3条使用人は欠格要件の審査対象。後任の人選時は証明書が取得できるか先に確認する
▶令3条使用人としての経験は、経管の経験年数に算入できる
支店を出すときの令3条使用人の選び方から、様式第十一号・第十三号の作成、営業所新設の届出まで一括してお引き受けします。
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