建設業許可とは|必要なケース・要件・費用・期間をわかりやすく解説【愛知県】

建設業許可とは|必要なケース・要件・費用・期間をわかりやすく解説【愛知県】

建設業許可とは何かを、対象となる工事・29業種・知事許可と大臣許可・一般と特定・5つの要件・費用と期間・取得後の届出まで一度に整理。愛知県知事許可を前提に行政書士が解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「500万円を超える工事の話が来たが、うちは許可がない」「元請から許可番号を聞かれた」——建設業許可について調べ始めるきっかけは、たいていこういう場面です。


建設業許可は、建設工事の完成を請け負う営業をするために必要な許可です。ただし、すべての工事に必要なわけではなく、要件も5つに整理されています。この記事では、建設業許可とは何か、どんなときに必要か、要件・費用・期間はどうなっているかを、制度の全体像として一度に整理します。愛知県知事許可を前提に、各テーマの詳しい解説記事へもご案内します。



建設業許可とは    WHAT

建設業許可とは、建設工事の完成を請け負う営業を行うために、国土交通大臣または都道府県知事から受ける許可のことです(建設業法第3条第1項)。


ここでいう「建設業」とは、元請・下請その他いかなる名義をもってするかを問わず、建設工事の完成を請け負う営業をいいます(建設業法第2条第2項)。元請だけでなく、下請として工事を請け負う場合も対象です。


▶建設業=建設工事の完成を請け負う営業(元請・下請を問わない)
▶許可は29の業種ごとに受ける(法第2条・別表第一)
▶軽微な建設工事のみを請け負う場合は許可がなくても営業できる
▶許可の有効期間は5年


【用語のポイント】
建設業法では「建設業者」と「建設業を営む者」を使い分けています。「建設業者」は建設業許可を受けている者を指し、「建設業を営む者」は許可の有無を問わず建設業を営むすべての者を指します。条文を読むときにこの違いを意識すると、どの規定が自社に適用されるのかが分かりやすくなります。


建設業法そのものの目的や全体の構成は、建設業法とは何を定めた法律かで解説しています。


建設業許可が必要になるのはどんなときか    WHEN

建設業を営もうとする方はすべて許可の対象になりますが、法令で定められた「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可がなくても営業できます(建設業法第3条第1項ただし書)。


工事の種類 許可がなくても請け負える範囲(軽微な建設工事)
建築一式工事

①1件の請負代金が1,500万円未満の工事
②請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事
(①②いずれかに該当する場合)

建築一式工事以外の工事 1件の請負代金が500万円未満の工事


いずれの金額も、消費税及び地方消費税を含めた額で判断します。また、注文者が材料を提供する場合はその市場価格と運送費を加えた額で判定し、同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、正当な理由に基づく分割を除き各契約の合計額で判定します(建設業法施行令第1条の2)。


出典:建設業法施行令第1条の2/愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」P1


金額の数え方や、500万円未満でも別の登録が必要になる工事については、建設業許可がいらない「軽微な建設工事」の判定方法で詳しく整理しています。
また、許可が必要かどうかは「契約の時点」で判断します。着工までに許可が下りればよい、というものではありません。この点は建設業許可は契約時と着工時のどちらで必要になるかで解説しています。


建設業許可は29業種ごとに受ける    GYOSHU

建設業許可は「建設業」というひとつの許可ではなく、工事の種類ごとに29の業種に分かれています(建設業法第2条・別表第一)。


1 土木工事業 9 管工事業 17 塗装工事業 25 建具工事業
2 建築工事業 10 タイル・れんが・ブロツク工事業 18 防水工事業 26 水道施設工事業
3 大工工事業 11 鋼構造物工事業 19 内装仕上工事業 27 消防施設工事業
4 左官工事業 12 鉄筋工事業 20 機械器具設置工事業 28 清掃施設工事業
5 とび・土工工事業 13 舗装工事業 21 熱絶縁工事業 29 解体工事業
6 石工事業 14 しゆんせつ工事業 22 電気通信工事業  
7 屋根工事業 15 板金工事業 23 造園工事業  
8 電気工事業 16 ガラス工事業 24 さく井工事業  


黄色の2業種(土木一式・建築一式)が「一式工事」、残る27業種が「専門工事」です。一式工事は、総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物や建築物を建設する工事を対象とした業種であり、建築一式工事の許可があっても個別の専門工事は施工できません(愛知県FAQ A1-3)。


各業種の工事内容・例示と、業種選びで迷いやすい組み合わせは、建設業許可の29業種一覧と業種の選び方にまとめています。一式工事の考え方は一式工事で請け負える工事の範囲もあわせてご覧ください。

許可の4つの区分(知事・大臣/一般・特定)    TYPE

建設業許可は、「営業所をどこに置くか」と「下請にいくら出すか」という2つの軸で区分されます。


①愛知県知事許可と国土交通大臣許可

区分 該当する場合
愛知県知事許可 愛知県内にのみ営業所を設けて建設業を営もうとする場合
国土交通大臣許可 愛知県内に主たる営業所を置き、他の都道府県にも営業所を設けて建設業を営もうとする場合


分かれ目は営業所の所在地だけです。知事許可でも、施工する工事現場の場所に制限はありません。愛知県知事許可のまま、県外の工事を請け負って施工できます。詳しくは知事許可と大臣許可の違いは「営業所」だけで解説しています。


なお、ここでいう「営業所」は本店・支店のほか、常時建設工事の請負契約を締結する事務所を指します。契約の見積り、入札、契約締結といった実体的な行為を行う事務所であれば営業所に該当するため、見積りをする拠点は営業所にあたるという点にご注意ください。


②一般建設業許可と特定建設業許可

区分 該当する場合
特定建設業許可 発注者から直接請け負った1件の工事につき、下請に出す代金の合計額が5,000万円以上(建築工事業は8,000万円以上)となる場合の元請業者
一般建設業許可 上記以外の場合、または下請としてのみ営業する場合


いずれも消費税及び地方消費税を含んだ額です。この5,000万円・8,000万円には、元請負人が提供する材料等の価格は含みません(愛知県手引P2)。この点は軽微な建設工事の判定と扱いが逆になるため、特定建設業の5,000万円に提供資材は含むのかで整理しています。


金額基準は令和7年2月1日に引き上げられています

特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額は、令和7年2月1日施行の建設業法施行令改正により、4,500万円から5,000万円(建築一式工事は7,000万円から8,000万円)に引き上げられました。古い解説記事では旧基準のままのものがあるため、金額を確認するときは施行日にご注意ください。


建設業許可を受けるための5つの要件    REQUIREMENT

建設業許可は、次の5つの要件をすべて満たす場合に受けられます。


要件 内容
①経営業務の管理体制 建設業の経営業務について一定の経験を持つ常勤役員等(経管)を置くこと。あわせて、健康保険・厚生年金保険・雇用保険の適切な加入も求められます(法第7条第1号、施行規則第7条)
②営業所技術者等の配置 営業所ごとに、許可を受けようとする業種について資格または実務経験を持つ専任の技術者を置くこと(法第7条第2号、特定は法第15条第2号)
③誠実性 請負契約に関して不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと(法第7条第3号)
④財産的基礎・金銭的信用 一般建設業は自己資本500万円以上等、特定建設業は資本金2,000万円以上・自己資本4,000万円以上等の基準を満たすこと(法第7条第4号、法第15条第3号)
⑤欠格要件に該当しないこと 法人・役員等・一定の使用人が、建設業法第8条に定める14項目の欠格要件に該当しないこと


実際に申請でつまずきやすいのは、①の経管と②の営業所技術者等です。どちらも「誰が該当するか」だけでなく「その経験を書類でどう証明するか」が問題になります。



【実務上のポイント】
5要件のうち、書類の準備に最も時間がかかるのが経管の経験の証明です。前の勤務先の資料が必要になるケースでは、退職から時間が経つほど資料の入手が難しくなります。「そのうち許可を取ろう」と考えている段階でも、誰を経管にするのか、その経験をどの資料で証明するのかだけは先に確認しておくことをおすすめします。証明資料の具体的な考え方は経管の経験の証明資料と愛知県の請負確認ルールにまとめています。



許可取得までの流れ・期間・費用(愛知県)    FLOW

申請から許可までの期間

愛知県知事許可の標準処理期間は、行政庁の休日を除き受付後23日です(愛知県手引P26)。電子申請(JCIP)を利用する場合の標準処理期間は38日とされています。


ただし、これは受け付けられてから許可が下りるまでの期間です。愛知県では申請が仮受付から始まり、内容の確認と補正を経て本受付となる運用のため、書類の準備期間と補正のやり取りを含めた全体のスケジュールで考える必要があります。


許可手数料

申請区分(愛知県知事許可) 手数料
新規の申請 9万円
業種追加の申請(許可区分が同一のものに限る) 5万円
更新の申請 5万円


手数料は還付されません

愛知県手数料条例第6条の規定により、申請を取り下げた場合や申請が不許可となった場合でも手数料の還付はありません(愛知県手引P26)。要件を満たしているかを確認しないまま申請してしまうと、9万円がそのまま費用として残ります。


流れの詳細は建設業許可の流れを8ステップで解説、期間の逆算は愛知県知事許可の標準処理期間と逆算スケジュール、費用の総額は建設業許可の申請費用(手数料・実費・報酬)で解説しています。必要書類は建設業許可の必要書類一覧【愛知県版】にまとめました。


許可を取った後に必要になる手続き    AFTER

建設業許可は、取得して終わりではありません。許可の有効期間は5年間で、その間も継続的な届出義務があります。


手続き 内容・期限

決算変更届
(事業年度終了届)

毎事業年度終了後、決められた期限内に提出。決算変更届の必要書類と出し忘れの影響
変更届 商号・所在地・役員・経管・営業所技術者等に変更があったとき。事由によって2週間・30日・4か月と期限が異なります。変更届の期限と必要書類
更新申請 許可期限満了の日の30日前まで(愛知県では3か月前から受付)。更新申請の期限・費用と失効したときの対応
標識(許可票)の掲示 店舗および元請として請け負った工事現場ごとに掲示(法第40条)。許可票(金看板)のサイズ・様式・掲示場所
廃業届 廃業したときは30日以内。廃業届の提出期限と様式第22号の4の書き方


【実務上のポイント】
最も多いつまずきが決算変更届の出し忘れです。毎年の提出が必要な届出であり、未提出のまま5年が経過すると、更新のタイミングで過年度分をまとめて作成することになります。決算を締めたら決算変更届、というサイクルを社内の年間スケジュールに組み込んでおくことをおすすめします。

【許可取得後に発生する義務】
建設業許可を取ると、請負金額の大小にかかわらず、施工するすべての工事現場に技術者を配置する義務が生じます。500万円未満の軽微な工事であっても、許可業者が施工する以上は主任技術者が必要です。
詳しくは主任技術者と監理技術者の違いを解説した記事をご覧ください。

建設業許可を取るとできるようになること    MERIT

▶軽微な建設工事の範囲を超える工事を請け負える(500万円・1,500万円の上限がなくなる)
▶許可を要件とする元請の下請登録・取引審査に対応できる
▶経営事項審査を受けて公共工事の入札に参加する前提が整う
▶許可票(金看板)の掲示により、許可行政庁の審査を受けた事業者であることを示せる


公共工事を元請として受注するには、経営事項審査を受けたうえで入札参加資格審査を申請する必要があり、その前提として建設業許可が必要です。


一方で、許可を取れば必ず受注が増えるというものではありません。許可はあくまで営業できる範囲を広げるものであり、取得後は決算変更届などの継続的な義務が発生します。「今の受注状況で許可が必要か」「必要になるのはいつか」を踏まえて判断することをおすすめします。


よくある質問    FAQ

Q. 個人事業主や一人親方でも建設業許可は取れますか

取れます。建設業許可は法人でなければ受けられないものではなく、個人事業主も申請できます。ただし5つの要件は同じように審査され、経管と営業所技術者等の両方を満たす必要があります。一人の方が経管と営業所技術者等を兼ねることは可能です。詳しくは経管と営業所技術者等の兼務と一人親方の許可をご覧ください。


Q. 許可を受けずに500万円以上の工事を請け負うとどうなりますか

建設業法第3条第1項に違反して許可を受けないで建設業を営んだ場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象となります(建設業法第47条第1項第1号)。情状により拘禁刑と罰金が併科されることもあります。あわせて監督処分の対象にもなり得ます。


【法改正のポイント】
令和7年6月1日施行の刑法改正により、懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されました。建設業法の罰則条文も「懲役」から「拘禁刑」に改められています。古い解説記事では「3年以下の懲役」と記載されたままのものがあります。


Q. 愛知県知事許可でも県外の工事を施工できますか

できます。知事許可と大臣許可の違いは営業所をどこに置くかであり、施工できる区域の制限ではありません。愛知県内にのみ営業所がある事業者は、愛知県知事許可のまま全国の工事を施工できます。


Q. 許可を取ったら、すべての工事を請け負えますか

いいえ。許可は業種ごとに受けるため、許可を受けた業種以外の工事は、軽微な建設工事の範囲を超えて請け負うことはできません。ただし、許可を受けた工事に附帯する従たる工事(附帯工事)は請け負うことができます(建設業法第4条)。必要になった業種は業種追加の申請で後から追加できます。


Q. 一般建設業許可から特定建設業許可には変更できますか

できます。一般建設業許可を受けている業種について特定建設業許可を受ける申請を「般・特新規」といいます。財産的基礎と営業所技術者等の要件が一般より厳しくなる点に注意が必要です。般・特新規(一般から特定への切り替え)で解説しています。



まとめ    SUMMARY

▶建設業許可とは、建設工事の完成を請け負う営業をするための許可(建設業法第3条)
▶軽微な建設工事(建築一式1,500万円未満・木造住宅150㎡未満/その他500万円未満)のみなら許可は不要
▶金額はいずれも税込み。材料支給分は加算し、分割契約は合算して判定する
▶許可は29業種ごと。一式工事の許可で個別の専門工事はできない
▶営業所が愛知県内だけなら愛知県知事許可。施工区域に制限はない
▶下請に5,000万円(建築工事業は8,000万円)以上出す元請は特定建設業許可が必要
▶要件は経管・営業所技術者等・誠実性・財産的基礎・欠格要件の5つ
▶愛知県知事許可の手数料は新規9万円、標準処理期間は受付後23日(電子申請は38日)
▶有効期間は5年。決算変更届・変更届・更新申請が継続して必要


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