

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「一般から特定に変えたい」「他県に支店を出すので大臣許可にしたい」——このとき提出するのは変更届ではありません。
結論として、許可区分の変更は「新規」扱いの許可申請になります。手数料も新規と同額がかかり、審査も一からやり直しです。
この記事では、建設業許可の「許可区分」に何と何があるのか、変更するとどんな申請になるのか、今持っている許可はどうなるのかを、愛知県知事許可の実務に沿って整理します。
商号や役員が変わったときは変更届(様式第22号の2)で足ります。しかし許可区分そのものを変えるときは、届出ではなく許可申請になります。
▶一般建設業 ⇔ 特定建設業/申請区分「3.般・特新規」
▶知事許可 ⇔ 大臣許可、知事許可 ⇔ 他県の知事許可/申請区分「2.許可換え新規」
▶いずれも「新規」の扱い。手数料も新規と同額
「区分を変えるだけだから簡単だろう」と考えて変更届の様式を用意してしまうケースがあります。実際には、経営業務の管理責任者や営業所技術者等の要件、財産的基礎までもう一度審査を受ける手続きです。準備する書類の量も期間も、新規申請と同じだとお考えください。
建設業許可には、性質の異なる2つの分け方があります。混同されやすいので、まず切り分けます。
| 分け方 | 何で決まるか | 変更するときの申請区分 |
|---|---|---|
| 一般建設業/特定建設業 | 元請として1件の工事で下請に出す金額 | 般・特新規 |
| 知事許可/大臣許可 | 営業所を置く都道府県の数 | 許可換え新規 |
愛知県の手引で「許可の区分」と書かれているのは、一般建設業と特定建設業の区分を指します。知事許可・大臣許可は、どの行政庁が許可を出すかという区分です。
【実務上のポイント】
大臣許可か知事許可かは、営業所をどこに置いているかだけで決まります。工事を施工できる区域には制限がありません。愛知県知事許可の業者が岐阜県や三重県の現場を施工することは何ら問題ありません。「県外の工事を受注するから大臣許可が必要」というのは誤解です。
特定建設業の許可が必要になるのは、発注者から直接請け負った1件の工事について、下請に出す金額が一定額以上になる場合です。この金額は令和7年2月1日から引き上げられました。
| 工事の種類 | 令和7年1月31日まで | 令和7年2月1日から |
|---|---|---|
| 建築一式工事以外 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| 建築一式工事 | 7,000万円 | 8,000万円 |
出典:国土交通省「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」/建設業法施行令第2条
金額の数え方には決まりがあります。
▶下請契約が2つ以上あるときは合計額で判断する
▶金額は消費税及び地方消費税を含んだ額で判断する
▶元請負人が提供する材料等の価格は、この金額に含めない
▶下請として工事を受ける場合は、金額がいくらでも特定建設業の許可は不要
最後の点は重要です。特定建設業は元請としての立場を規制する制度ですので、二次下請以下でどれだけ大きな工事を施工しても、特定建設業の許可は求められません。
【実務上のポイント】
今回の改正で下請発注の上限が上がったことにより、これまで特定を検討していた会社が、一般のままで対応できるようになったケースがあります。年度の途中で「特定を取らないと受注できない」と言われた場合でも、まずは下請に出す予定金額を税込みで合計し、5,000万円(建築一式は8,000万円)に届くのかを確認してください。届かないのであれば、一般建設業の許可のままで元請として受注できます。
特定建設業は、多額の下請発注を行う元請として下請業者を保護できる体力があるかを見る許可です。そのため、一般建設業より要件が厳しくなります。
(1)財産的基礎
| 項目 | 内容(申請直前の決算で判断) |
|---|---|
| 欠損の額 | 資本金の20%を超えていないこと |
| 流動比率 | 75%以上であること |
| 資本金・自己資本 | 資本金2,000万円以上、かつ自己資本4,000万円以上であること |
この4つはすべて満たす必要があり、更新のときも毎回確認されます。一般建設業のように「直前5年間継続して営業した実績があれば省略」という取扱いはありません。
【実務上のポイント】
直前の決算で資本金の要件だけを満たしていない場合、増資を行って要件を満たせば、資本金についてはクリアしたものとして取り扱われます。この場合は資本金増資の変更届出書の副本の提示が必要になりますので、増資の登記が終わったらすぐに変更届を出しておいてください。資本金額の変更届は事実発生後30日以内が期限です。
変更届についての詳しい記事はこちら
(2)特定営業所技術者(旧:特定建設業の専任技術者)
営業所ごとに置く技術者の資格要件も上がります。
▶国土交通大臣が定める試験に合格した方、又は免許を受けた方(1級の国家資格者等)
▶上記に加えて、一般建設業の営業所技術者等の要件に該当する方のうち、元請工事1件4,500万円以上について2年以上の指導監督的実務経験がある方
▶国土交通大臣に上記と同等以上と認定された方
土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種(指定建設業)については、指導監督的実務経験による証明ができません。1級の国家資格または国土交通大臣の認定等が必要です。この7業種で特定を目指す場合は、有資格者の確保が実質的な前提条件になります。
なお、指導監督的実務経験の金額基準は元請工事1件4,500万円以上で、令和7年2月の改正対象には入っていません。特定建設業許可が必要になる下請代金の5,000万円とは別の数字ですので、混同しないようご注意ください。
建設業法第3条第6項は、一般建設業の許可を受けた者が同じ業種について特定建設業の許可を受けたときは、その業種の一般建設業の許可は効力を失うと定めています。
▶同一業種について、一般と特定を同時に持つことはできない
▶例:一般(内装仕上)→特定(内装仕上)を取得すると、一般の内装仕上は失効する
▶別の業種であれば、一般と特定を併せ持つことは可能(例:特定(建築一式)+一般(内装仕上))
【実務上のポイント】
すでに一般建設業の許可を持っている会社が、別の業種について特定の許可を取る場合も、手続きは「業種追加」ではなく「般・特新規」になります。手数料が5万円ではなく9万円になりますので、見積りの段階で確認しておいてください。
特定から一般への変更も、同じ「般・特新規」です。実務上は、次のような場面で検討されます。
▶決算の内容が悪化し、特定建設業の財産的基礎を満たせなくなった
▶特定営業所技術者となっていた有資格者が退職し、後任がいない
▶元請として大型の下請発注を行う予定がなくなった
特定の要件を満たせないまま放置すると、許可の要件を欠いた状態になります。更新の時期を待つのではなく、要件を満たせないことが分かった時点で、一般への切替えや一部業種の廃業を検討する必要があります。どの選択が適切かは会社の状況によって変わりますので、早めに許可行政庁または行政書士へご相談ください。
営業所をどこに置くかによって、許可を出す行政庁が変わります。
| 営業所の設置状況 | 許可行政庁 |
|---|---|
| 1つの都道府県内にのみ営業所を置く | その営業所の所在地を管轄する都道府県知事 |
| 2つ以上の都道府県に営業所を置く | 国土交通大臣(本店所在地を所管する地方整備局長等) |
愛知県知事許可の場合、許可換え新規には3つのパターンがあります。
▶知事許可 → 大臣許可(愛知県のほかに営業所を新設したとき)
▶大臣許可 → 知事許可(愛知県以外の営業所を廃止したとき)
▶知事許可 → 他の知事許可(主たる営業所を他県へ移したとき)
建設業法第9条により、新しい許可を受けたときに従前の許可は効力を失います。新旧の許可が同時に存在することはありません。
愛知県知事許可の標準処理期間は、行政庁の休日を除き受付後23日です。一方、大臣許可は都道府県を経由して地方整備局が審査するため、これより長い期間を見込む必要があります。他県に営業所を出す予定が決まった段階で準備を始めることをおすすめします。愛知県で大臣許可を扱うのは中部地方整備局です。
愛知県知事許可の手数料は次のとおりです。
| 申請区分 | 一般又は特定の一方のみ | 一般と特定の両方 |
|---|---|---|
| 1.新規 | 90,000円 | 180,000円 |
| 2.許可換え新規 | 90,000円 | 180,000円 |
| 3.般・特新規 | 90,000円 | - |
| 4.業種追加 | 50,000円 | 100,000円 |
| 5.更新 | 50,000円 | 100,000円 |
| 6.般・特新規+業種追加 | 140,000円 | - |
| 7.般・特新規+更新 | 140,000円 | - |
| 9.般・特新規+業種追加+更新 | 190,000円 | - |
出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」表3(許可手数料一覧表)
納付は愛知県収入証紙またはキャッシュレス決済によります。JCIP(電子申請)を利用する場合は電子収納も可能です。なお、申請を取り下げた場合や不許可となった場合でも手数料は還付されません(愛知県手数料条例第6条)。
大臣許可の場合は、新規(許可換え新規・般特新規を含む)は登録免許税15万円、更新・業種追加は許可手数料5万円です。
般・特新規は「新規」ですので、そのまま申請すると許可日の異なる許可が並存することになります。業種ごとに満了日が違うと、更新を忘れたり、そのつど手数料がかかったりします。
これを避けるための制度が「許可の有効期間の調整」、通称許可の一本化です。
▶般・特新規や業種追加と同時に、現在有効なすべての許可の更新申請をまとめて行う
▶これにより許可日を1つに統一できる
▶申請区分「7.般・特新規+更新」「9.般・特新規+業種追加+更新」がこれにあたる
【実務上のポイント】
申請区分7・8・9で申請する場合は、必ず許可期間満了の日の30日前までに申請する必要があります。更新の受付は満了日の3か月前から始まりますので、一本化を考えている方は、更新時期の3か月前を目安に準備に取りかかることをおすすめします。建設業許可の更新手続きの流れもあわせてご確認ください。
区分変更の申請に入る前に、次の3点を確認してください。
▶決算変更届(事業年度終了届)が毎期きちんと出ているか
▶役員変更・営業所技術者等の変更などの変更届が漏れていないか
▶直前の決算内容が、目指す区分の財産的基礎を満たしているか
未提出の届出があると、区分変更の申請の前にその処理が必要になります。特に決算変更届は複数年分まとめて出すことになりがちで、そこで時間を取られると受注のタイミングに間に合いません。
決算変更届(事業年度終了届)の必要書類と提出期限、建設業許可の変更届の期限と必要書類については、それぞれ別記事で詳しく解説しています。
税込みです。消費税及び地方消費税を含んだ額で判断します。また、下請契約が2つ以上あるときはその合計額で判断します。一方で、元請負人が提供する材料等の価格は含みません(国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」)。
受注そのものに金額の上限はありません。制限がかかるのは下請に出す金額です。自社施工の比率を高める、あるいは下請発注額を5,000万円(建築一式は8,000万円)未満に抑えるのであれば、一般建設業の許可のままで元請として施工できます。ただし、工程の都合で結果的に基準を超えてしまうと建設業法違反になりますので、契約前の見込み額の確認が欠かせません。
できます。大臣許可と知事許可の別は営業所の所在地で区分されるものであり、営業し得る区域や建設工事を施工し得る区域に制限はありません(国土交通省)。愛知県知事許可のまま、全国どこでも施工可能です。大臣許可が必要になるのは、他県に「営業所」を設ける場合です。
特定建設業の財産的基礎は、更新のときも直前の決算で確認されます。要件を満たせない状態が続けば、更新ができず許可が失効します。実務上は、更新時期を迎える前に一般建設業への切替え(般・特新規)や一部業種の廃業を検討することになります。どの方法が適切かは決算内容や技術者の状況によって変わりますので、個別に判断が必要です。
▶許可区分の変更は変更届ではなく、新規扱いの許可申請
▶一般⇔特定は「般・特新規」、知事⇔大臣は「許可換え新規」
▶知事許可の手数料はいずれも9万円(大臣許可の新規は登録免許税15万円)
▶特定建設業が必要な下請代金は、令和7年2月1日から5,000万円(建築一式8,000万円)
▶下請代金は税込み・合計額で判断。元請が提供する材料等の価格は含まない
▶特定には財産的基礎(欠損20%以下・流動比率75%以上・資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上)が必要
▶指定建設業7業種は、指導監督的実務経験では特定営業所技術者になれない
▶同一業種で特定を取ると、その業種の一般許可は失効する(建設業法第3条第6項)
▶許可日がバラバラにならないよう「許可の有効期間の調整(一本化)」を検討する
特定に切り替えるべきか、一般のままで足りるのか。決算書と受注予定を拝見したうえで判断をお手伝いします。
「うちの決算で特定は取れるのか」「他県に営業所を出す予定がある」という段階のご相談で構いません。LINEなら夜間・土日も対応します。
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