建設業許可がいらない「軽微な建設工事」とは|500万円未満の判定方法【愛知県】

建設業許可がいらない「軽微な建設工事」とは|500万円未満の判定方法【愛知県】

建設業許可が不要な「軽微な建設工事」の範囲と、500万円の判定方法を解説。税込判定・材料支給分の加算・分割契約の合算のほか、500万円未満でも必要になる登録や無許可営業の罰則まで整理します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「500万円未満なら建設業許可はいらない」——これ自体は正しいのですが、この500万円をどう数えるかで判断が分かれます。


結論として、500万円は消費税を含んだ金額で判定し、注文者から材料の支給を受けた場合はその材料費も加えて判定します。契約を2本に分けても、正当な理由がなければ合計額で判定されます。


この記事では、建設業許可がいらない「軽微な建設工事」の範囲と、金額判定で間違えやすいポイント、500万円未満でも別の登録が必要になる工事について、法令と愛知県の手引に基づいて整理します。



結論:軽微な建設工事なら許可はいりません    CONCLUSION

建設業を営もうとする方はすべて建設業許可の対象になりますが、法令で定められた「軽微な建設工事」のみを請け負う場合は、許可を受けなくても営業できます(建設業法第3条第1項ただし書)。


その範囲は、建設業法施行令第1条の2で次のとおり定められています。


工事の種類 軽微な建設工事(許可が不要な範囲)

建築一式工事
(①②いずれかに該当)

①1件の請負代金が1,500万円未満の工事
②請負代金の額にかかわらず、木造住宅で延べ面積150㎡未満の工事

建築一式工事以外の工事
(残る28業種)

1件の請負代金が500万円未満の工事


▶「木造」とは、建築基準法第2条第5号に定める主要構造部が木造であるもの
▶「住宅」とは、住宅、共同住宅及び店舗等との併用住宅で延べ面積の2分の1以上を居住の用に供するもの


出典:建設業法第3条第1項ただし書、建設業法施行令第1条の2/愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」P1


なお、この500万円・1,500万円という基準は、令和7年2月の施行令改正でも変更されていません(令和7年2月1日に引き上げられたのは特定建設業許可が必要となる下請代金の基準額です)。混同されやすいので、下請に出す金額の話をしているのか、請け負う金額の話をしているのかを区別してください。


金額判定で間違えやすい3つのポイント    POINT

①消費税を含んだ金額で判定する

500万円・1,500万円は、いずれも消費税及び地方消費税を含めた額で判断します。


税抜きで500万円の契約は、消費税10%を加えると550万円となり、軽微な建設工事の範囲を超えます。税抜き価格でぎりぎり500万円未満に収めても、税込みで500万円以上になれば許可が必要です。


税込み500万円未満の目安

消費税10%の場合、税抜き454万5,454円までが税込み499万9,999円(500万円未満)となります。見積書を税抜きで作成している場合は、税込み金額での確認をおすすめします。


②注文者から材料の支給を受けた場合は材料費を加える

注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格または市場価格及び運送賃を請負代金の額に加えた額が、判定の対象となる請負代金の額になります(建設業法施行令第1条の2第3項)。


つまり、「材料は元請支給だから、うちの請負金額は400万円」という数え方はできません。支給された材料の市場価格と運送賃を加えた額で500万円未満かどうかを判定します。


【実務上のポイント】
材料支給がある現場では、契約書や注文書に記載された請負金額と、判定に使う金額が一致しません。支給材の品目と価格が分かる資料(支給明細書、元請からの通知書等)を保存しておき、金額を積み上げて確認しておくことをおすすめします。判定を誤ると、無許可で軽微な範囲を超える工事を請け負ったことになります。


なお、これと逆の扱いになるのが特定建設業許可の判定です。元請が下請に出す5,000万円(建築工事業は8,000万円)には、元請負人が提供する材料等の価格は含みません。詳しくは特定建設業の5,000万円に提供資材は含むのか、および元請の資材提供は請負金額に含めるのかをご覧ください。


③契約を分割しても合算して判定される

同一の建設業を営む者が工事の完成を2以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額で判定します(建設業法施行令第1条の2第2項)。


「300万円+300万円に分ければ許可はいらない」は成り立ちません

600万円の工事を300万円の契約2本に分けても、合計額の600万円で判定されます。ただし書きにより「正当な理由に基いて契約を分割したとき」は合算しないとされていますが、許可を回避することを目的とした分割は正当な理由にあたりません。


工期や工事内容が実態として分かれているかどうかで判断されることになるため、迷う場合は分割せずに許可の取得を検討するか、事前に許可行政庁に確認してください。


500万円未満でも登録が必要な工事があります    TOROKU

見落とされやすいのがこの点です。建設業許可が不要な軽微な建設工事であっても、別の法律に基づく登録が必要になる工事があります。


登録の種類 愛知県の所管課
解体工事業者登録 建設業・不動産業室 建設業第二グループ
浄化槽工事業者登録 建設業・不動産業室 建設業第二グループ
登録電気工事業者 防災安全局防災部消防保安課産業保安室 電気・火薬グループ


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)」P1/愛知県「建設業許可に関するよくある質問と回答」A1-2


「500万円未満だから何も手続きはいらない」と考えていると、登録の漏れが生じます。解体工事や電気工事を扱う場合は、建設業許可とは別に登録の要否を確認してください。業種ごとの許認可の対応関係は、電気工事・解体工事は別途登録が必須|業種別の許認可一覧で整理しています。


許可業者は軽微な工事でも技術者が必要です

軽微な建設工事は「許可がなくても請け負える工事」ですが、建設業許可を持っている業者が施工する場合は、金額にかかわらず主任技術者の配置が必要です。
詳しくは主任技術者の配置が必要な工事とはの記事で解説しています。


【実務上のポイント】
解体工事業については、建築一式工事業・土木一式工事業・解体工事業のいずれかの建設業許可を取得すると、解体工事業者登録をしていた行政庁への通知書(様式第3)の提出が必要になります(愛知県手引P26)。登録から許可に切り替わるタイミングでの手続き漏れが起きやすいところなので、許可取得後の届出リストに入れておきましょう。



許可がないままだとどうなるか    RISK

無許可営業の罰則

建設業法第3条第1項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ場合、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金に処するとされています(建設業法第47条第1項第1号)。同条第2項により、情状によって拘禁刑と罰金を併科することもできます。


【法改正のポイント】
令和7年6月1日施行の刑法改正により、懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化され、建設業法の罰則条文も「懲役」から「拘禁刑」に改められました。「3年以下の懲役」と記載している解説記事は、改正前の表記のままです。


罰則だけでなく、監督処分(指示処分・営業停止・許可の取消し)の対象にもなります。将来の許可取得にも影響するため、「軽微な範囲を少し超えるだけ」という判断は避けるべきです。


許可を受けていないのに受けているような表示はできない

建設業法第40条の2は、建設業を営む者は、許可を受けていないのに、その許可を受けた建設業者であると明らかに誤認されるおそれのある表示をしてはならないと定めています(表示の制限)。


▶許可を受けていない者が、許可を受けているかのように表示すること
▶一般建設業の許可しかない者が、特定建設業の許可があるように表示すること
▶許可を受けた業種以外の業種について、許可があるように表示すること


ホームページや会社案内、名刺の記載も表示にあたり得ます。許可を取得していない段階で「建設業許可取得済み」と読み取れる表現を使うことは避けてください。


取引先から求められるケースが増えています

軽微な建設工事しか請け負っていなくても、元請の下請登録の条件として建設業許可を求められることがあります。また、公共工事を元請として受注するには、建設業許可を受けたうえで経営事項審査と入札参加資格審査を経る必要があります。


許可が必要かどうかは「契約の時点」で判断します    TIMING

軽微な範囲を超える工事を請け負う場合、許可は請負契約を締結する時点で必要です。着工までに許可が下りればよい、というものではありません。


愛知県知事許可の標準処理期間は、行政庁の休日を除き受付後23日です(電子申請の場合は38日)。これに書類の準備期間と、愛知県特有の仮受付から本受付までの確認・補正のやり取りが加わります。大きな工事の話が来てから準備を始めると、契約に間に合わないことがあります。


契約時点の考え方は建設業許可は契約時と着工時のどちらで必要になるか、スケジュールの逆算は愛知県知事許可の標準処理期間と逆算スケジュールで解説しています。


【実務上のポイント】
軽微な建設工事の範囲で営業してきた事業者が許可を取る場合、最初に確認すべきは経営業務の管理責任者(経管)と営業所技術者等の要件を満たす人がいるかです。個人事業主の方であれば、ご自身が両方を兼ねられるケースが多くあります。まず建設業許可の5つの要件で自社の状況を確認し、証明資料の準備に取りかかることをおすすめします。


よくある質問    FAQ

Q. 500万円は税込みですか、税抜きですか

税込みです。消費税及び地方消費税を含めた額で判断します。税抜き500万円の契約は税込み550万円となり、軽微な建設工事の範囲を超えます。


Q. 建築一式工事は1,500万円未満なら必ず許可がいらないのですか

建築一式工事については、①1件の請負代金が1,500万円未満、または②請負代金の額にかかわらず木造住宅で延べ面積150㎡未満、のいずれかに該当すれば軽微な建設工事となります。この1,500万円という基準は建築一式工事だけのもので、他の28業種には適用されません。建築一式工事に該当するかどうかの判断そのものが問題になることも多いため、一式工事で請け負える工事の範囲もあわせてご確認ください。


Q. 500万円未満の工事しかしないなら、許可を取る意味はありませんか

請け負える金額の上限を外すこと以外にも、元請の取引条件を満たせるようになる、公共工事の入札に進む前提が整う、といった意味があります。一方で、許可取得後は決算変更届などの継続的な届出義務が生じます。今後どのような工事を受注したいかによって判断が変わります。


Q. 許可を受けている業種でも、軽微な工事なら営業所以外で契約してよいですか

できません。愛知県の手引では、許可を受けた業種については軽微な建設工事のみを請け負う場合であっても、届出をしている営業所以外においてはその業種について営業することはできないとされています(手引P2)。営業所の考え方は建設業許可の「営業所」の定義をご覧ください。


Q. 職人を送る「人工出し」なら、金額に関係なく許可はいりませんか

建設業許可は「建設工事の完成を請け負う」営業について必要となるものです。もっとも、労働者を他社の指揮命令下で働かせる形態は労働者派遣に該当し得るところ、労働者派遣法第4条第1項第2号により、建設業務への労働者派遣は禁止されています。契約の名称ではなく実態で判断されるため、請負なのか派遣なのかは個別の契約内容によって結論が変わります。判断に迷う場合は、契約書の内容を確認したうえで許可行政庁や労働局にご相談ください。



まとめ    SUMMARY

▶軽微な建設工事のみを請け負う場合は、建設業許可がなくても営業できる(法第3条第1項ただし書)
▶建築一式工事は1,500万円未満、または木造住宅で延べ面積150㎡未満
▶建築一式工事以外の28業種は500万円未満
▶金額はいずれも消費税及び地方消費税を含んだ額で判定する
▶注文者からの材料支給がある場合は、その市場価格と運送賃を加えて判定する
▶2以上の契約に分割しても、正当な理由がなければ合計額で判定される
▶500万円未満でも、解体工事・浄化槽工事・電気工事は別途の登録が必要
▶無許可で軽微な範囲を超える営業をすると、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金の対象(法第47条)
▶許可を受けていないのに受けているような表示も禁止されている(法第40条の2)


制度の全体像は建設業許可とは|必要なケース・要件・費用・期間にまとめています。どの業種の許可が必要かを確認したい場合は建設業許可の29業種一覧と業種の選び方をご覧ください。

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