経審の点数を上げる方法|W評点の加点項目を行政書士が整理【令和8年7月改正対応】

経審の点数を上げる方法|W評点の加点項目を行政書士が整理【令和8年7月改正対応】

経審の点数を上げるなら、まず社会性等(W評点)の加点項目を確認してください。建退共・法定外労災・防災協定・建設業経理士・建設機械など、審査基準日までに整えれば加点になる項目を、令和8年7月改正を反映して解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


完成工事高や自己資本を短期間で増やすことはできません。一方で、W評点(社会性等)の加点項目は、審査基準日までに手続きを済ませれば今期から点数に反映されます
制度に加入する、証明書を取得する、といった事務手続きで取れる点数が相当数あります。取りこぼしがないか確認してください。


この記事では、W評点の加点項目を項目ごとに整理します。令和8年7月1日施行の改正内容を反映しています。



なぜW評点から着手するのか    WHY W

総合評定値(P点)は次の式で決まります。


P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W


評点 中身 短期で動かせるか
X1 完成工事高 受注実績次第。1年では動かしにくい
X2 自己資本・利益 決算の結果。短期では動かしにくい
Y 財務指標 同上
Z 技術職員・元請工事高 資格取得には時間がかかる
W 社会性等 手続きで加点できる項目が多い


判定はすべて審査基準日時点です

W評点の項目は、原則として審査基準日(決算日)において該当しているかで判定されます。決算日を過ぎてから加入しても、その期の経審には反映されません。
つまり、対策は決算日より前に済ませる必要があります。経審の準備を決算後に始めていては間に合いません。


W1|担い手の育成及び確保に関する取組    W1

W1は複数の項目の合計です。


W1=Y1×15+W1-7+W1-8+W1-9+W1-10+W1-11


Y1|3つの制度への加入(各15点)

次の3つのうち「有」の数がY1になり、1つにつき15点が加算されます。


▶建設業退職金共済制度への加入
▶退職一時金制度もしくは企業年金制度への加入
▶法定外労働災害補償制度への加入


【実務上のポイント】
この3つは加入手続きさえすれば取れる点数です。3つすべてで45点になります。未加入の項目がないか、まず確認してください。
退職一時金制度については、退職手当の定め(算定方法を含む)がある就業規則でも該当します。ただし労働基準監督署の受付印があり、審査基準日において有効なものである必要があります。中小企業退職金共済や特定退職金共済の加入証明書でも構いません。


法定外労災は補償内容の要件があります

法定外労働災害補償制度は、加入していれば何でもよいわけではありません。次の要件をすべて満たす必要があります。


▶業務災害と通勤災害のいずれも対象とすること
▶直接の使用関係にある職員と、下請負人(数次の下請すべて)の職員全てを対象とすること(パート・アルバイトを含む)
▶少なくとも死亡及び労災保険の障害等級第1級から第7級までに係る災害の全てを対象とすること


記名式のものや作業員数の上限があるものは、要件を満たすことが確認できないため対象になりません。


W1-7|若年技術職員の育成及び確保(各1点)

項目 点数
満35歳未満の技術職員が技術職員全体の15%以上 1
審査対象年内に新規に技術職員となった満35歳未満の者が技術職員全体の1%以上 1


W1-8|知識及び技術・技能の向上に関する取組(最大10点)

技術者のCPD単位取得数と、技能者の技能レベル向上者数から算出します。


▶CPD/審査基準日以前1年間に取得した単位数÷技術者数で判定。1人あたり30単位が上限
▶技能レベル向上/審査基準日以前3年間に建設キャリアアップシステムの評価区分が1以上上位になった者の割合で判定


CPD単位は認定団体ごとに換算方法が異なります。たとえば(公社)土木学会から20単位の認定を受けている場合、20÷50×30=12単位として計上します。詳しくは建設キャリアアップシステムと経審の記事をご覧ください。


W1-9|ワーク・ライフ・バランスに関する取組(最大5点)

認定 点数
プラチナえるぼし認定 5
えるぼし認定(3段階目) 4
えるぼし認定(2段階目) 3
えるぼし認定(1段階目) 2
プラチナくるみん認定 5
トライくるみん認定/くるみん認定 3
ユースエール認定 4


複数の認定があっても、評価されるのは最も評点の高いもの1つだけです。


W1-10|就業履歴を蓄積するために必要な措置(最大10点)

実施状況 点数
全ての建設工事で実施 10
全ての公共工事で実施 5
非該当 0


令和8年7月1日施行の改正で、配点が15点→10点、10点→5点に見直されました。古い情報のままだと点数の見積もりを誤ります。


W1-11|建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度(5点)

令和8年7月1日施行の改正で新設された項目です。国土交通省が実施する自主宣言制度において宣言していれば5点が加算されます。


▶審査基準日が宣言日以降であること
▶宣言した取組について、取組開始日以降行う又は行っている旨を誓約すること
▶確認書類は、宣言書の写しと誓約書(様式13)の両方を提出


【実務上のポイント】
新設されたばかりの項目のため、まだ宣言していない会社が多い項目です。宣言はオンラインで行えます。ただし、宣言した取組を実際に行っていないにもかかわらず誓約書を提出した場合は、虚偽申請として建設業法に違反するおそれがあります。宣言内容を実行できるかを確認したうえで手続きしてください。



W2〜W4|営業年数・防災協定・法令遵守    W2-W4

項目 内容 点数
W2
営業年数
35年以上で最高点。5年以下は0点。1年ごとに2点刻み 最大60
W2
民事再生・会社更生
再生手続・更生手続の開始決定を受け、終結決定を受けていない場合 −60
W3
防災協定
国・特殊法人等・地方公共団体との防災協定の締結 20
W4
法令遵守
審査基準日直前1年以内の営業停止処分 −30
W4
法令遵守
審査基準日直前1年以内の指示処分 −15


【実務上のポイント】
W3の防災協定は20点と配点が大きい項目です。自社が直接締結していなくても、社団法人等の団体が国・特殊法人等・地方公共団体と防災協定を締結している場合、その団体に加入していれば加点対象になることがあります。団体の証明書等により、防災活動に一定の役割を果たすことが確認できる場合が対象です。
ただし、行政の支援を受けた組織(学区防災安心まちづくり委員会等)との協定は加点対象になりません。所属している建設業団体に、防災協定の有無を確認してみてください。


W4はマイナスを避ける項目です。監督処分を受けないことがそのまま加点になります。


W5|建設業の経理に関する状況    W5

W5は監査の受審状況(W51)と、経理担当者の資格(W52)の合計です。


監査の受審状況(W51) 点数
会計監査人の設置 20
会計参与の設置 10
経理処理の適正を確認した旨の書類の提出 2
いずれにも該当しない 0


W52は、公認会計士・税理士・1級登録経理試験合格者等の数×1に、2級登録経理試験合格者等の数×0.4を加えた数値を、平均完成工事高の規模別テーブルに当てはめて求めます。


▶登録経理試験合格者等/合格した年度の翌年度の開始の日から5年を経過しない者、又は登録経理講習を受講した年度の翌年度の開始の日から5年を経過しない者
▶公認会計士/公認会計士法第28条の規定による研修を受講した者に限る
▶税理士/所属税理士会が認定する研修を受講した者に限る


【実務上のポイント】
登録経理試験の合格には有効期限の考え方がある点に注意してください。合格から一定期間を過ぎると、登録経理講習を受講しなければ加点対象から外れます。「以前に合格したから大丈夫」と思っていると、いつの間にか点数が落ちていることがあります。
社内に有資格者がいない中小企業でも、「経理処理の適正を確認した旨の書類」(様式4)の提出で2点を取ることができます。会計監査人や会計参与を置けない会社にとって、現実的な選択肢です。


W6〜W8|研究開発・建設機械・ISO等    W6-W8

W6|研究開発の状況

平均研究開発費の額に応じて評価されます。研究開発費を計上していない会社は0点です。


W7|建設機械の保有状況(最大15点)

台数 点数 台数 点数
15台以上 15 7台 11
13〜14台 14〜15 5〜6台 9〜10
10〜12台 13〜14 3〜4台 7〜8
8〜9台 12 1〜2台 5〜6
    0台 0


1台保有しているだけで5点が入ります。0台と1台の差が大きい設計です。


▶令和8年7月改正で「アスファルト・フィニッシャ」「不整地運搬車」が加点対象に追加された
▶リースでも対象になる(審査基準日から将来に渡って1年7ヶ月以上の使用期間の記載があるリース契約書)
▶定期検査の実施を確認する資料が必要。有効期間に審査基準日を含むもの
▶評価対象は15台まで。一覧表(様式9)も15台分まで作成する


【実務上のポイント】
すでに保有している機械が加点対象かどうかを確認していないケースがあります。ダンプ車や自社所有のバックホウが該当しないかを、まず確認してみてください。
なお、定期検査の有効期間に審査基準日が含まれていなければ加点対象になりません。検査の時期と決算日の関係にも注意が必要です。


W8|ISO・エコアクション21等

ISO9001、ISO14001、エコアクション21の認証・登録の状況に応じて評価されます。


認証範囲に注意

認証範囲に建設業が含まれていない場合や、認証範囲が一部の支店等に限られている場合は、評価対象になりません。会社単位ではなく特定の事業所での認証となっている場合も同様です(事業所ごとの認証を合計すると会社単位になる場合を除く)。
ISO9001・ISO14001の認証機関は、(公財)日本適合性認定協会(JAB)又は同協会と相互認証している審査登録機関に限られます。


令和8年7月改正で削除された項目    SAKUJO

令和8年7月1日以降の申請から、雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する審査項目が削除されました


これまでは未加入の場合に減点されていましたが、その項目自体がなくなりました。ネット上には旧制度の説明が多く残っていますので、点数の見積もりをする際は改正後の内容で確認してください。改正の全体像は令和8年7月の経審改正のポイントで解説しています。


【実務上のポイント】
経審の審査項目からは外れましたが、社会保険の適正加入は建設業許可の要件そのものです。未加入のままでよいということではありません。許可要件としての社会保険については建設業許可の5つの要件の記事をご覧ください。


点数を上げるときの注意点    CHUI

実態を伴わない申請は虚偽申請です

申請書類に虚偽の記載をして提出した場合、拘禁刑又は罰金に処せられることがあります(建設業法第50条第1項第4号、第52条第4号、第53条)。虚偽記載により得た結果通知書を発注機関に提出した場合は、指示又は営業停止処分の対象にもなります(同法第28条第1項第2号、第3項)。
審査結果は(一財)建設業情報管理センターのサイトで公表され、相互監視が働く仕組みになっています。加点は、実態を整えたうえで正しく申告することによって得るものです。

また、申請者側の誤りによる評点の低下は、再審査の申立ての対象になりません。加点できるはずの項目を書き漏らしても、その期は取り戻せません。申請前の確認が重要です。


まとめ    SUMMARY

▶短期で動かしやすいのはW評点(社会性等)
▶判定はすべて審査基準日(決算日)時点。対策は決算前に済ませる
▶建退共・退職一時金/企業年金・法定外労災は各15点。加入手続きで取れる
▶法定外労災は補償内容の要件を満たす必要がある
▶防災協定は20点。所属団体が締結している場合も対象になることがある
▶W1-11「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度」は令和8年7月新設の5点
▶W1-10の就業履歴蓄積措置は令和8年7月改正で15点→10点、10点→5点に
▶経理は「経理処理の適正を確認した旨の書類」の提出で2点が取れる
▶建設機械は1台でも5点。令和8年7月からアスファルト・フィニッシャ等が追加
▶社会保険加入の審査項目は令和8年7月改正で削除された
▶実態を伴わない申請は虚偽申請として罰則の対象


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