

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「今回の工事は監理技術者が必要か、主任技術者でよいのか」——この判断を誤ると、施工体制そのものが建設業法違反になります。
結論として、発注者から直接請け負った工事で、下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる場合に、主任技術者に代えて監理技術者を配置します。
この金額は令和7年2月1日に4,500万円(建築一式7,000万円)から引き上げられたもので、古い解説記事には改正前の金額が残っています。この記事では、現行の基準に沿って配置の判断方法と資格要件を整理します。
建設業法第26条第2項により、次の条件をすべて満たす場合に監理技術者の配置が必要になります。
▶①発注者から直接請け負った工事であること(元請の立場であること)
▶②その工事を施工するために締結した下請契約の請負代金の合計が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上であること
▶③特定建設業の許可を受けていること
逆にいえば、下請の立場で工事を請け負っている場合は、いくら金額が大きくても監理技術者ではなく主任技術者を配置します。ここは誤解が多いところです。
| 立場 | 下請契約の総額 | 配置する技術者 |
|---|---|---|
| 元請 | 5,000万円(建築一式8,000万円)以上 | 監理技術者 |
| 元請 | 5,000万円(建築一式8,000万円)未満 | 主任技術者 |
| 元請 | 下請に出さず自社施工 | 主任技術者 |
| 下請 | 金額を問わない | 主任技術者 |
主任技術者の配置が必要な工事の範囲については、主任技術者の配置が必要な工事とはの記事で解説しています。
近年の建設工事費の高騰を踏まえ、建設業法施行令が改正され、令和7年2月1日から金額要件が引き上げられました。
| 金額要件 | 改正前 | 改正後(現行) |
|---|---|---|
| 特定建設業許可を要する下請代金額 | 4,500万円(7,000万円) | 5,000万円(8,000万円) |
| 監理技術者の配置が必要な下請代金額 | 4,500万円(7,000万円) | 5,000万円(8,000万円) |
| 施工体制台帳の作成を要する下請代金額 | 4,500万円(7,000万円) | 5,000万円(8,000万円) |
※( )内は建築工事業の場合。金額はいずれも消費税込み。
インターネット上には改正前の「4,500万円」で解説している記事が多く残っています。また、後述する専任の基準(4,500万円)とは別の数字ですので、混同しないようご注意ください。
出典:国土交通省「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」(建設業法施行令及び国立大学法人法施行令の一部を改正する政令)
判定に使うのは下請契約の請負代金の合計額です。次の点に注意してください。
▶消費税・地方消費税を含んだ金額で判断する
▶下請が複数ある場合は、すべての一次下請契約を合計する
▶元請負人が提供する材料等の価格は含めない
▶自社で施工する部分の金額は含めない
元請が資材を提供する場合の扱いについては、特定建設業許可の5,000万円に提供資材は含む?の記事で詳しく解説しています。
当初は主任技術者を配置していた工事でも、大幅な工事内容の変更等により、工事途中で下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になることがあります。
この場合、発注者から直接工事を請け負った特定建設業者は、主任技術者に代えて、所定の資格を有する監理技術者を配置しなければなりません。
【実務上のポイント】
国土交通省の監理技術者制度運用マニュアルでは、工事施工当初からこのような変更があらかじめ予想される場合には、当初から監理技術者となり得る資格を持つ技術者を配置しなければならないとされています。
追加工事の発生が見込まれる案件では、着工前の段階で「下請総額が5,000万円に届く可能性があるか」を試算し、届く可能性があるなら最初から監理技術者資格者を充てておくことをおすすめします。途中で技術者を入れ替えるより、はるかに手間がかかりません。
工事の途中で技術者を交代させる場合の考え方は、配置技術者は途中で交代できる?の記事にまとめています。
監理技術者の資格要件は、特定建設業の特定営業所技術者の要件と同じで、業種によって2通りに分かれます(法第15条第2号)。
土木工事業、建築工事業、電気工事業、管工事業、鋼構造物工事業、舗装工事業、造園工事業の7業種は指定建設業とされ(施行令第5条の2)、要件が厳格です。
▶1級国家資格者(1級土木施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級建築士、技術士など)
▶国土交通大臣が上記と同等以上の能力を有すると認定した者
この7業種については、どれだけ実務経験を積んでも監理技術者にはなれません。1級国家資格の取得が事実上の必須条件です。
▶1級国家資格者
▶主任技術者の要件を満たす者のうち、指導監督的実務経験が2年以上ある者
▶国土交通大臣が上記と同等以上の能力を有すると認定した者
ここでいう指導監督的実務経験とは、発注者から直接請け負い、その請負金額が4,500万円以上である工事に関して、施工の技術上の管理を指導監督した経験をいいます。
【実務上のポイント】
経過措置として、昭和59年10月1日以前は請負代金1,500万円以上、昭和59年10月1日から平成6年12月28日以前は3,000万円以上の工事に関する経験も、4,500万円以上の工事に関する実務経験とみなして2年に算入できます。
ベテラン技術者の古い経験が使えることがありますので、当時の契約書や注文書が残っていないか確認してみてください。
出典:建設業法施行令第5条の2・第5条の3/国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保」
専任が必要な工事に配置する監理技術者(および特例監理技術者)は、次の2つを満たす者の中から選任しなければなりません(法第26条第5項)。
▶監理技術者資格者証の交付を受けていること
▶国土交通大臣の登録を受けた監理技術者講習を過去5年以内に受講していること
令和3年1月1日以降、監理技術者講習の有効期間の起算点は講習を受けた日の属する年の翌年1月1日となり、同日から5年間が有効期間です。受講日から5年ではありません。
また、当該監理技術者は工事に係る職務に従事しているときは常時資格者証を携帯し、発注者から請求があったときは提示しなければなりません。講習の修了履歴についても提示を求められることがあるため、修了履歴のラベルを資格者証の裏面に貼付する取扱いになっています。
資格者証の交付は、国土交通大臣の指定する指定資格者証交付機関(一般財団法人建設業技術者センター)が行っています。
監理技術者を配置する工事のうち、公共性のある重要な建設工事で請負金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上のものについては、工事現場ごとに専任である必要があります。
【実務上のポイント】
監理技術者を配置するような規模の工事は、請負金額も4,500万円を超えていることがほとんどです。つまり監理技術者を置く工事は、実質的にほぼ専任が必要になると考えておくのが安全です。
ただし、令和6年12月13日施行の改正により、一定の要件を満たせば2現場までの兼任が可能になりました。また、監理技術者補佐を各現場に専任で置く方法もあります。
▶専任が必要な工事の範囲と「専任」の意味/技術者の専任とは
▶情報通信技術を活用した2現場の兼任/主任技術者・監理技術者は複数現場を兼務できる?
▶監理技術者補佐を置いて兼任する方法/監理技術者補佐と特例監理技術者
下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になる工事を元請として施工するには、そもそも特定建設業の許可が必要です。監理技術者を配置できる人材がいても、許可区分が一般建設業のままでは請け負えません。
一般建設業から特定建設業への切り替え(般・特新規)や、特定建設業に必要な財産的基礎の要件もあわせてご確認ください。
▶監理技術者は、元請として下請総額5,000万円(建築一式8,000万円)以上の工事を施工する場合に配置する
▶この金額は令和7年2月1日に4,500万円(7,000万円)から引き上げられた
▶下請の立場では、金額にかかわらず主任技術者を配置する
▶金額は消費税込みで判定し、元請が提供する材料の価格は含めない
▶工事途中で基準額を超えたら監理技術者に交代する。予想される場合は当初から配置する
▶指定建設業7業種(土・建・電・管・鋼・舗・園)は1級国家資格者等に限られる
▶それ以外の22業種は、主任技術者要件+指導監督的実務経験2年以上でも可
▶専任が必要な工事では、監理技術者資格者証と5年以内の講習受講が必要
特定建設業許可の取得や、監理技術者を配置できる体制づくりについてご相談ください。
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