

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「公共工事に入りたいと思っているが、経審という言葉が出てきて何のことか分からない」——公共工事を検討し始めた事業者の方から、最も多くいただく質問です。
結論として、公共工事を発注者から直接請け負うには、経営事項審査を受けて結果通知書の交付を受けていることが必須です。これは入札参加資格の有無とは別に、受注そのものに義務付けられています。
この記事では、経営事項審査(経審)の仕組み全体を整理します。何のための審査か、どこに何を申請するのか、点数はどう決まるのか、いつまで有効なのか。個別の論点は関連記事で詳しく解説しますので、まずは全体像をつかんでください。
経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受けなければならない、経営に関する客観的事項の審査です。建設業法第27条の23に定められています。
▶根拠/建設業法第27条の23第1項
▶対象/公共性のある施設又は工作物に関する建設工事で政令で定めるものを、発注者から直接請け負おうとする建設業者
▶審査内容/①経営状況 ②経営規模、技術的能力その他の客観的事項
▶評価方法/数値による評価(同条第2項)
昭和25年に創設された制度で、発注者側が「この会社に公共工事を任せられるか」を判断するための、全国共通のものさしとして機能しています。
【実務上のポイント】
経審は「許可を持っているかどうか」とは別の審査です。建設業許可を持っていても、経審を受けていなければ公共工事を元請として受注することはできません。逆に、民間工事だけを請け負う会社は経審を受ける必要がありません。まず自社に必要かどうかを確認したい方は、経審を受ける必要がある会社とはの記事から読み進めてください。
ここでいう公共工事とは、次の発注者が発注する建設工事をいいます。
▶国
▶地方公共団体
▶法人税法別表第一に規定する公共法人(愛知県住宅供給公社、愛知県道路公社など)
▶特別の法律により設立された法人等で建設業法施行規則に定められた者(中日本高速道路株式会社など)
ただし、次の工事は対象から除かれます。
①工事1件の請負代金の額が、建築一式工事は1,500万円未満、その他の工事は500万円未満(いずれも消費税及び地方消費税を含む)の工事
②緊急性が重視される災害関係の応急工事
②について、通常の災害復旧工事は経営事項審査を受ける必要があります。「災害関係だから不要」と単純に判断しないでください。
また、公共工事であっても、下請として受注する場合は経営事項審査を受ける必要はありません。義務が生じるのは、発注者と直接契約する元請の立場に立つ場合です。
経営事項審査は、申請先の異なる2つの審査で構成されています。ここが最初につまずきやすいところです。
| 経営状況分析 | 経営規模等評価 | |
|---|---|---|
| 申請先 | 登録経営状況分析機関 (国土交通大臣の登録を受けた民間機関) |
愛知県知事 (知事許可業者の場合) |
| 審査するもの | 経営状況(Y) | 経営規模(X1・X2) 技術力(Z) その他の審査項目(W) |
| 結果 | 経営状況分析結果通知書 | 経営規模等評価結果通知書 総合評定値通知書 |
順番が決まっています。先に経営状況分析を申請し、その結果通知書を添付して経営規模等評価を申請します。分析結果が出るまでに時間がかかるため、ここを後回しにすると全体のスケジュールが崩れます。
そのうえで、両方の結果を使って算出される総合評定値(P点)を、経営規模等評価の申請先である愛知県知事に請求することができます。実務上は、経営規模等評価の申請と総合評定値の請求を同時に行うのが一般的です。
【実務上のポイント】
総合評定値の請求は法律上「することができる」とされていますが、多くの発注者が入札参加資格の審査でP点を使います。公共工事の受注を目指すのであれば、請求しておくことをおすすめします。手数料の差は業種数1つで600円程度です。
経営状況分析の申請先と8つの指標、経審全体の申請の流れについては、それぞれ別記事で詳しく解説しています。
経審の結果は、建設工事の種類(業種)ごとに次の式で算出されます。
P=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
※評点に小数点以下の端数がある場合は切り捨てます。
| 記号 | 審査項目 | ウエイト |
|---|---|---|
| X1 | 工事種類別年間平均完成工事高 | 0.25 |
| X2 | 自己資本額/利払前税引前償却前利益 | 0.15 |
| Y | 経営状況(8つの財務指標) | 0.20 |
| Z | 工事種類別技術職員数/工事種類別元請完成工事高 | 0.25 |
| W | その他の審査項目(社会性等) | 0.15 |
ウエイトが大きいのは完成工事高(X1)と技術力(Z)で、合わせて全体の半分を占めます。一方で、短期間で動かしやすいのはWです。経審の点数を上げる方法では、W評点の加点項目を中心に整理しています。
計算式の詳細は総合評定値(P点)とはの記事で解説しています。
経審では、申請をする日の直前の事業年度終了の日(直前の決算日)が審査基準日になります。この日の状態を基準に、すべての項目が評価されます。
▶原則/申請日直前の事業年度終了の日
▶新設法人/法人設立日
▶新規に事業開始した個人事業主/創業の日
▶合併・営業権譲渡等/上記以外の日が審査基準日になる場合があるため、事前に相談が必要
審査基準日は「申請日直前の決算日」であるため、申請の時点ですでに次の決算日を迎えていると、前の決算日を審査基準日として審査を受けることはできません。
たとえば決算日が11月30日の会社が申請を先延ばしにして翌年12月に申請した場合、審査基準日は前年11月30日ではなく直近の11月30日になります。前の期の数字で受け直すことはできません。
公共工事を受注するには、契約締結日の1年7ヶ月前以降の決算日を審査基準日とする経審を受け、その結果通知書が交付されている必要があります。
ここで最も間違えやすいのが起点です。
【実務上のポイント】
有効期間の起点は、結果通知書を受け取った日ではなく、審査基準日(事業年度終了の日)です。申請が遅れれば遅れるほど、実際に使える期間は短くなります。決算日の翌日から数えて1年7ヶ月後には期限が来る、と考えて逆算してください。
決算が毎年来る以上、経審は毎年継続して受け続けることが前提の制度です。1年でも申請が遅れると、有効な結果通知書がない空白期間が生まれ、その間は公共工事を受注できません。
詳しい数え方と空白期間の避け方は、経営事項審査の有効期間の記事で解説しています。
経審を受ければ公共工事に入札できる、というわけではありません。
| 経営事項審査 | 入札参加資格審査 | |
|---|---|---|
| 審査するもの | 客観的事項 | 主観的事項を含む総合的な評価 |
| 申請先 | 許可行政庁(愛知県知事) | 発注機関ごと |
| 位置づけ | 公共工事の受注そのものの前提 | その発注者の入札に参加する資格 |
経審は入札参加資格の有無とは関係なく、公共工事の受注そのものに対して義務付けられるものです。そのうえで、実際に入札に参加するには、発注する国・県・市町村ごとに入札参加資格審査申請を行い、名簿に登載される必要があります。
両者の関係は経審と入札参加資格の違いの記事で整理しています。
令和8年2月6日に公布された国土交通省令・告示により、令和8年7月1日以降の申請から審査基準が改正されています。審査基準日にかかわらず、7月1日以降に申請するものが対象です。
▶「建設技能者を大切にする企業の自主宣言制度の宣言の有無」を新設(5点)
▶就業履歴を蓄積するために必要な措置の実施状況の配点を見直し(全建設工事15点→10点、全公共工事10点→5点)
▶建設機械の保有状況に「アスファルト・フィニッシャ」「不整地運搬車」を追加
▶雇用保険・健康保険・厚生年金保険の加入状況に関する審査項目を削除
改正に伴い別紙三(その他の審査項目)と様式9(建設機械の保有状況)が変更されているため、令和8年7月1日以降に申請する場合は必ず改正後の様式で作成してください。
改正内容は令和8年7月の経審改正のポイントで詳しく解説しています。
経審の結果は、発注者が受注者を選ぶ判断材料になります。そのため、虚偽の申請には罰則が定められています。
①申請書類に虚偽の記載をして提出した者
②審査に必要な報告をせず、資料の提出をせず、又は虚偽の資料を提出した者
これらに該当すると、拘禁刑又は罰金に処せられることがあります(建設業法第50条第1項第4号、第52条第4号、第53条)。
さらに、虚偽記載により得た結果通知書を発注機関に提出するなど、請負契約に関し不誠実な行為をした場合は、許可行政庁から指示又は営業停止の処分を受けることがあります(同法第28条第1項第2号、第28条第3項)。
なお、審査結果は(一財)建設業情報管理センターのサイトで全国の許可建設業者について公表されます。愛知県知事許可業者も含まれます。相互監視によって虚偽申請を抑制する仕組みが働いていますので、完成工事高の計上や技術職員の記載は、根拠資料に基づいて正確に行ってください。
▶経審を受ける必要がある会社とは|公共工事と経審の関係
▶経営事項審査の流れ|申請から結果通知までの手順【愛知県】
▶経営事項審査の必要書類一覧【愛知県】
▶経営事項審査の手数料|業種数別の金額と納付方法
▶経営事項審査の有効期間|1年7ヶ月の数え方と空白期間
▶経営状況分析とは|Y点の8指標と分析機関への申請
▶総合評定値(P点)とは|計算式とX・Y・Z・Wの内訳
▶経審の点数を上げる方法|W点の加点項目
▶令和8年7月 経営事項審査 改正のポイント
▶経審と入札参加資格の違い|受注までに必要な2つの手続き
そもそも建設業許可の仕組みから確認したい方は、建設業許可とはをまとめた記事をご覧ください。
▶経審は、公共工事を発注者から直接請け負おうとする建設業者が必ず受ける審査(法第27条の23)
▶対象は国・地方公共団体・公共法人等が発注する工事。建築一式1,500万円未満、その他500万円未満(税込)は除く
▶公共工事でも下請として受注する場合は不要
▶経営状況分析(登録分析機関)と経営規模等評価(愛知県知事)の2つで構成される
▶総合評定値P=0.25X1+0.15X2+0.20Y+0.25Z+0.15W
▶審査基準日は申請日直前の事業年度終了の日
▶結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7ヶ月。起点は通知日ではない
▶経審と入札参加資格審査は別の手続き
▶令和8年7月1日以降の申請から審査基準が改正(自主宣言制度の新設、社会保険項目の削除など)
▶虚偽申請には拘禁刑又は罰金、指示・営業停止処分がある
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