営業所技術者等とは?一般・特定の要件と専任性を解説【愛知県の建設業許可】

営業所技術者等とは?一般・特定の要件と専任性を解説【愛知県の建設業許可】

営業所技術者等(旧・専任技術者)の要件を、一般建設業・特定建設業に分けて解説。資格・実務経験のルート、指定建設業7業種の制限、令和6年12月改正の現場兼務、愛知県の常勤性確認資料まで、行政書士が一次情報に基づき整理します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


建設業許可を取るとき、経営業務の管理責任者と並んで壁になるのが「営業所技術者等」です。
結論として、許可を受ける営業所ごとに、その業種の資格または実務経験を持つ人を1人以上、専任で置かなければ許可は下りません。人がいなくなれば、許可そのものを失います。


令和6年12月13日の改正で、それまで「専任技術者」と呼ばれていたこの人は「営業所技術者等」という名称に変わりました。同時に、これまで認められていなかった工事現場との兼務も、条件付きで可能になっています。


この記事では、営業所技術者等になれる人の要件を一般建設業・特定建設業に分けて整理し、愛知県知事許可で求められる確認資料と、不在になったときのリスクまで解説します。



営業所技術者等とは    WHAT

営業所技術者等とは、建設工事の請負契約を適正に締結し、履行するために、営業所ごとに専任で置かれる技術者のことです。建設業許可の5つの要件のうちの一つで、建設業法第7条第2号(一般建設業)および第15条第2号(特定建設業)に定められています。


見積り、入札、契約の締結といった営業活動は各営業所で行われます。その場に工事の内容を技術的に判断できる人がいなければ、無理な契約や不適切な見積りが生まれてしまう。そのために置かれるのが営業所技術者等です。


▶主な職務/工法の検討、注文者への技術的な説明、見積りの作成
▶置く場所/許可を受けて建設業を営もうとするすべての営業所
▶人数/営業所ごとに1人以上(許可業種すべてをカバーする必要あり)
▶働き方/その営業所に常勤し、専らその職務に従事すること


【実務上のポイント】
1人が複数業種の営業所技術者等を兼ねることは可能です。例えば内装仕上工事業と大工工事業の両方について要件を満たしていれば、1人で2業種を担当できます。一方で、営業所が2つあれば、それぞれに別の人を置かなければなりません。支店や営業所を増やす計画がある場合は、人員の手当てを先に確認しておくことをおすすめします。営業所に当たるかどうかの判断は、建設業許可における「営業所」の定義を解説した記事をご覧ください。


令和6年12月に「専任技術者」から名称が変わりました    KAISEI

令和6年12月13日に施行された改正建設業法により、建設業法第7条第2号および第15条第2号の条文が改正され、呼称が次のとおり変更されました。


許可の区分 旧名称 新名称
一般建設業(法第7条第2号) 専任技術者 営業所技術者
特定建設業(法第15条第2号) 専任技術者 特定営業所技術者
両者の総称 営業所技術者等


要件そのものは変わっていません

この改正は呼称の変更であり、法律上求められる要件に変更はありません。これまで専任技術者として認められていた方が、改正によって要件を満たさなくなるということはありません。


ただし、申請様式や記載事項の表記が「営業所技術者等」に変更されています。古い様式や、以前の申請書の写しをそのまま流用すると、記載の不整合を指摘されることがあります。

一般建設業の営業所技術者になれる人    IPPAN

一般建設業の許可を受ける場合、営業所技術者になれるのは次のいずれかに該当する方です(建設業法第7条第2号)。


ルート 内容
イ学歴+実務

許可を受けようとする業種の指定学科を修めて、高等学校・中等教育学校を卒業後5年以上、大学・高等専門学校を卒業後または専門職大学の前期課程を修了後3年以上の実務経験がある方
※専修学校の専門課程を卒業後5年以上(専門士・高度専門士は3年以上)も対象

ロ実務10年 許可を受けようとする業種について10年以上の実務経験がある方
ハ資格等 国土交通大臣がイまたはロと同等以上と認定した方。二級建築士、二級土木施工管理技士などの国家資格者のほか、技術検定の第一次検定合格者(技士補)が一定の実務経験を満たす場合、複数業種の実務経験を有する方などが該当



もっとも確実なのはハの国家資格です。資格があれば実務経験の証明書類が不要になり、申請の手間も審査期間中の指摘も大きく減ります。


一方、資格がない場合はロの10年ルートになりますが、10年分の実務経験を証明する資料を集めるのは想像以上に負担が重い作業です。実務経験で申請する場合の具体的な証明方法は、実務経験証明書(様式第9号)の書き方をまとめた記事で解説しています。


【実務上のポイント】
10年に届かないと思っている方でも、確認する価値がある論点が3つあります。1つ目は、技術検定の第一次検定に合格していないか。合格していれば10年ではなく3年または5年で足りる場合があります(技士補による実務経験の短縮についてはこちらの記事)。2つ目は、在学中の学科が指定学科に当たらないか。3つ目は、近い業種の経験を合わせられないかです。申請をあきらめる前に、この3点を確認しておくことをおすすめします。


特定建設業の特定営業所技術者になれる人    TOKUTEI

特定建設業の許可を受ける場合、要件は一段階厳しくなります(建設業法第15条第2号)。


ルート 内容
イ国家資格 国土交通大臣が定める試験に合格した方または免許を受けた方(一級建築士、一級土木施工管理技士など
ロ指導監督的実務経験 一般建設業の営業所技術者の要件(イ・ロ・ハ)のいずれかを満たし、かつ元請として4,500万円以上の工事について2年以上の指導監督的な実務経験がある方
ハ大臣認定 国土交通大臣がイまたはロと同等以上の能力を有すると認定した方(過去の特別認定講習の合格者等)


指定建設業7業種はロが使えません

土木工事業・建築工事業・電気工事業・管工事業・鋼構造物工事業・舗装工事業・造園工事業の7業種は「指定建設業」とされ(建設業法施行令第5条の2)、特定建設業の技術者はイ(一級等の国家資格者)またはハ(大臣特別認定者)に限られます


つまり、この7業種で特定建設業の許可を取りたい場合、どれだけ経験を積んでいても一級の国家資格者がいなければ許可は取れません。なお、ハの特別認定講習は制度導入時に実施されたもので、現在は行われていません。

「4,500万円」と「5,000万円」を混同しないこと    CAUTION

特定建設業まわりで最も間違えやすいのが金額です。令和7年2月1日に建設業法施行令が改正され、金額要件が引き上げられましたが、すべての金額が変わったわけではありません


項目 令和7年1月31日まで 令和7年2月1日以降
特定建設業許可が必要になる下請代金の総額

4,500万円
(建築一式7,000万円)

5,000万円(建築一式8,000万円)
現場に専任の技術者が必要になる請負金額

4,000万円
(建築一式8,000万円)

4,500万円(建築一式9,000万円)
特定営業所技術者の指導監督的実務経験の金額 4,500万円 4,500万円(変更なし)


出典:国土交通省「建設業の各種金額要件や技術検定の受検手数料を見直します」(建設業法施行令第2条、第7条の4、第27条、第30条の改正)


指導監督的実務経験の「元請として4,500万円以上」という基準は、令和7年2月の改正でも据え置かれています。特定建設業許可の下請金額が5,000万円に上がったことにつられて「経験の証明も5,000万円以上でなければ」と誤解しないよう注意してください。


なお、この経験を証明する工事の金額は消費税および地方消費税を含んだ額です。また、平成6年12月27日以前の工事は3,000万円以上、昭和59年9月30日以前の工事は1,500万円以上のものを4,500万円以上のものとみなす取扱いがあります。古い工事の経験を使う場合は確認してください。


一般建設業から特定建設業への切り替えについては、般・特新規(一般から特定への切り替え申請)を解説した記事でまとめています。



「専任」とは何か    SENNIN

営業所技術者等は「専任」であることが求められます。愛知県の手引きでは、専任の方とはその営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する方と定義されています。


判断は、勤務状況、給与の支払状況、人事権の状況等を総合して行われます。次に該当する方は、原則として専任とは認められません。


▶住所が営業所の所在地から著しく遠距離で、社会通念上通勤不可能な方
▶他の営業所(他の建設業者の営業所を含む)において専任を要する方
▶建築士事務所を管理する建築士、専任の宅地建物取引士など、他の法令で特定の事務所等において専任を要するとされている方
▶他に個人営業を行っている方、他の法人の常勤役員である方など、他の営業について専任に近い状態にあると認められる方


【実務上のポイント】
3つ目の項目は、不動産業や設計事務所を兼業している会社で問題になりやすい部分です。宅地建物取引業の専任の宅地建物取引士や、建築士事務所の管理建築士を務めている方を営業所技術者等にしようとする場合、建設業の営業所と、その事務所等が同一であるかどうかを先に確認してください。同一であれば認められますが、別の場所であれば専任性が否定されます。


また、通勤時間がおおむね片道2時間以上になる場合、愛知県では通勤定期券やETC記録など通勤を確認できる資料を求められることがあります。遠方から通う方を予定している場合は、資料を準備しておくと安心です。


なお、同一の方が経営業務の管理責任者と営業所技術者等を兼ねることは、勤務場所が同一の主たる営業所であれば可能です。一人親方が法人化して許可を取るケースでは、この兼務が前提になります。詳しくは経管と営業所技術者等の兼務について解説した記事をご覧ください。


出向社員についても、専任性が認められれば営業所技術者等として取り扱われます(出向社員が経管・営業所技術者等になれるかはこちらの記事)。


令和6年12月から工事現場との兼務ができるようになりました    KENMU

従来、営業所技術者等は営業所に常勤する必要があるため、工事現場の主任技術者や監理技術者になることは原則として認められていませんでした。


令和6年12月13日の改正により、一定の要件を満たす場合に限り、営業所技術者等が工事現場の技術者を兼務できるようになりました(建設業法第26条の5)。


兼務できる職務 内容
特定営業所技術者 監理技術者または主任技術者の職務を兼ねることができる
営業所技術者 主任技術者の職務を兼ねることができる


要件は、その工事が専任を要する工事かどうかで分かれます。


専任を要しない工事を兼務する場合の要件

▶当該営業所において締結された工事であること
▶工事現場の職務に従事しながら実質的に営業所の職務にも従事しうる程度に、工事現場と営業所が近接していること
▶当該営業所との間で常時連絡をとりうる体制にあること
▶直接的かつ恒常的な雇用関係にあること

専任を要する工事(請負金額4,500万円、建築一式9,000万円以上)を兼務する場合は、さらに厳しい要件が課されます。


▶請負金額が1億円(建築一式工事は2億円)未満であること
▶兼任できる現場は1工事現場
▶営業所と工事現場の距離が、1日で巡回可能かつ移動時間おおむね2時間以内
▶下請次数は3次まで
▶連絡員を配置すること(土木一式・建築一式の場合は当該工事種類の実務経験1年以上の者)
▶施工体制を確認できる情報通信技術の措置を講じていること
▶人員の配置を示す計画書を作成し、保存すること
▶現場状況を確認するための情報通信機器を設置していること
▶直接的かつ恒常的な雇用関係にあること


出典:国土交通省「監理技術者等の専任義務の合理化・営業所技術者等の職務の特例」、監理技術者制度運用マニュアル



【実務上のポイント】
専任を要する工事での兼務は、情報通信機器の設置や計画書の作成といった体制整備が前提になっています。「制度ができたから人を減らせる」と考えるのではなく、自社が要件をすべて満たせるかを一つずつ確認してから運用してください。特に連絡員の配置と、遠隔から現場作業員の入退場が確認できるシステムの用意は、事前準備が必要な部分です。


なお、この兼務を行っても営業所技術者等が営業所に常勤していること自体は必要です。テレワークによる常勤性の取扱いについては、経管・営業所技術者等のテレワークと常勤性を解説した記事をご覧ください。


愛知県で求められる確認資料    SHORUI

愛知県知事許可の申請では、営業所技術者等について技術者としての資格・経験を証明する資料常勤性を証明する資料の両方が必要です。


証明する内容 主な確認資料
資格で証明する場合 合格証明書、免状、資格者証等の写し
実務経験で証明する場合 実務経験証明書(様式第9号)+工事内容を確認できる契約書、注文書、請求書等
学歴で年数を短縮する場合 卒業証明書(判断が難しい場合は成績証明書等)
常勤性 健康保険・厚生年金標準報酬額決定通知書、住民税特別徴収税額決定通知書、所得証明書+源泉徴収票、雇用保険関係書類のうち、順に確認して最初に当てはまったもの


使えない書類に注意

愛知県では、健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定一覧表は公的な資料ではないため、常勤性の確認資料として使用できませんとされています。似た名前の書類が複数あるため、取り違えて仮受付で差し戻されることがあります。


また、提出する書類に被保険者記号・番号や個人番号(マイナンバー)が印字されている場合は、その部分をマスキングしてから提出してください。

常勤性の確認資料は運用の変更がある部分です。最新の取扱いは建設業許可の常勤性の確認資料をまとめた記事で解説しています。


営業所技術者等が不在になったときのリスク    RISK

営業所技術者等の設置は許可要件です。したがって、退職などにより不在になり、後任がいない状態が続けば、許可の取消しの対象になります(建設業法第29条第1項第1号)。


これは経営業務の管理責任者と同じ構造です。許可を取った後も維持し続けなければならない要件だという点を、社内で共有しておく必要があります。


▶変更があったとき/変更届の提出が必要(営業所技術者等の変更は2週間以内)
▶後任がいないまま放置した場合/要件欠如により許可の取消し
▶取消しになった場合/改めて新規申請が必要になり、費用も期間もかかる


【実務上のポイント】
営業所技術者等が1人しかいない会社では、その方の退職・病気・高齢化が事業継続のリスクに直結します。資格を持つ社員をもう1人育てておくか、複数業種を1人でカバーしている場合は業種ごとに担当を分散できないかを、平時のうちに検討しておくことをおすすめします。


また、退職の申し出を受けてから後任を探すと、実務経験の証明資料の収集が間に合わないことがあります。後任候補が実務経験ルートになる場合は、在職中から資料を整えておくと、いざというときの手続きが早く進みます。


変更届の期限や様式については、建設業許可の変更届の期限と必要書類をまとめた記事で詳しく解説しています。



よくある質問    FAQ


Q. 1人で複数の営業所の営業所技術者等になれますか

できません。営業所技術者等は営業所ごとに専任で置く必要があり、他の営業所において専任を要する方は専任と認められないとされています。他社の営業所についても同様です。営業所を増やす場合は、その営業所に常勤できる技術者を別に確保する必要があります。


Q. 許可業種が5つある場合、5人の技術者が必要ですか

必要ありません。1人が複数業種について要件を満たしていれば、その方1人で複数業種の営業所技術者等になれます。例えば一級建築施工管理技士は多くの業種で技術者になれるため、1人で幅広くカバーできる場合があります。逆に、業種ごとにばらばらの資格・経験で満たしている場合は、担当が分かれることになります。


Q. アルバイトやパートでも営業所技術者等になれますか

雇用形態そのものではなく、その営業所に常勤して専らその職務に従事しているかで判断されます。勤務状況、給与の支払状況、人事権の状況等が確認されるため、短時間勤務や他社と掛け持ちの状態では専任性が認められない可能性が高くなります。個別の事情によって判断が変わりますので、判断に迷う場合は申請先に確認してください。


まとめ    SUMMARY

▶営業所技術者等は、許可を受けるすべての営業所に専任で置く必要がある(法第7条第2号・第15条第2号)
▶令和6年12月13日に「専任技術者」から名称が変わったが、要件そのものは変わっていない
▶一般建設業は「指定学科+実務3年・5年」「実務10年」「国家資格等」の3ルート
▶特定建設業は「一級等の国家資格」「元請4,500万円以上で2年の指導監督的実務経験」「大臣認定」の3ルート
▶指定建設業7業種(土・建・電・管・鋼・舗・園)は一級等の資格者でなければ特定建設業の許可が取れない
▶指導監督的実務経験の4,500万円は、令和7年2月の改正後も変わっていない
▶令和6年12月から、要件を満たせば工事現場の技術者との兼務が可能になった
▶不在のまま放置すれば許可の取消し。変更があったときは2週間以内に変更届が必要


営業所技術者等は、経営業務の管理責任者と並んで許可の可否を左右する要件です。要件全体の位置づけを確認したい方は、建設業許可の5つの要件をまとめた記事を先にお読みください。


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