建設業許可の常勤性の確認資料|健康保険証が使えなくなった後の愛知県の取扱い

建設業許可の常勤性の確認資料|健康保険証が使えなくなった後の愛知県の取扱い

「保険証の写しでよい」は過去の運用です。愛知県では常勤性を①から順に確認し、最初に当てはまった資料を提出します。経管・営業所技術者等それぞれの必要資料と、マスキングや追加資料が必要になるケースを解説します。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


建設業許可では、経営業務の管理責任者も営業所技術者等も「常勤」であることが要件です。
そして愛知県では、この常勤性を「好きな資料で証明する」ことができません。決められた順番で確認し、最初に当てはまった資料を提出する運用です。


さらに、健康保険被保険者証(紙の保険証)が使用できなくなったことを受けて、愛知県は常勤性の確認書類の取扱いを変更しています。以前の情報のまま準備すると、そろえた資料が使えないことがあります。


この記事では、愛知県知事許可を前提に、常勤性の確認資料を誰について・何を・どの順で用意するのかを整理します。



誰について常勤性の確認が必要か    WHO

常勤性の確認資料が必要になるのは、次の方です。


▶常勤役員等(経営業務の管理責任者等)(様式第七号に記載の方)
▶常勤役員等及び当該常勤役員等を直接に補佐する者(様式第七号の二 第一面から第四面に記載の方)
▶営業所技術者等(様式第一号別紙四・様式第八号に記載の方全員)


個人事業主ご本人については、確認資料は必要ありません。ただし、経営業務の管理責任者等や営業所技術者等が事業主本人と異なる場合には、その方の常勤性を確認できる資料が必要です。


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」22ページ(常勤性の確認)


「常勤」「専任」とは何か    DEFINITION

「役員のうち常勤であるもの」とは、原則として本社・本店等において休日その他勤務を要しない日を除き、一定の計画のもとに毎日所定の時間中、その職務に従事している者をいいます。


営業所技術者等の「専任」も同様に、その営業所に常勤して専らその職務に従事することを要する方をいいます。愛知県は、次のような方は原則として「専任」とはいえないものとして取り扱うとしています。


住所が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離にあり、社会通念上通勤不可能な方
他の営業所(他の建設業者の営業所を含む)において専任を要する方
建築士事務所を管理する建築士や専任の宅地建物取引士等、他の法令により特定の事務所等において専任を要することとされている方(同一企業の同一営業所である場合を除く)
他に個人営業を行っている方、他の法人の常勤役員である方等、他の営業等について専任に近い状態にあると認められる方


なお、同一の方について経営業務の管理責任者と営業所技術者等を重複して認めることは、勤務場所が同一の主たる営業所であれば可能です。


宅建業の専任の宅地建物取引士との兼任に注意

宅地建物取引業者の専任の宅地建物取引士は登記上の本店勤務が要件であるため、建設業許可の営業所が登記上の本店と異なる場合は違反となる、と愛知県は注意喚起しています。宅建業と建設業を兼業している事業者では見落とされやすい論点です。

常勤性の確認資料は「①から順に」    ORDER

愛知県の運用は、①から順に確認をして、最初に当てはまった資料(申請時直近のもの)を用意する、というものです。用意しやすいものを選ぶ形式ではありません。


確認資料

健康保険・厚生年金標準報酬額決定通知書【写し】
又は 厚生年金保険70歳以上被用者該当および標準報酬月額相当額のお知らせ【写し】

住民税特別徴収税額決定通知書(特別徴収義務者用)【写し】
※個人番号(マイナンバー)が印字されている場合は、その部分を隠してから複写する

所得証明書(市区町村発行のもの)【原本】+源泉徴収票【写し】
※源泉徴収票は、所得証明書に対応する年次のものが必要

雇用保険被保険者証【写し】+雇用保険被保険者資格取得等確認通知書【写し】(被保険者区分が「1」のものに限る)
※被保険者区分が「11」(高年齢被保険者)の場合は勤務状態を確認できる資料が必要


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」22ページ、同「建設業許可申請の手引(申請書記載例編)令和8年4月版」様式第七号・第八号の欄外注記


健康保険被保険者証について


かつては健康保険被保険者証の写しが常勤性の確認資料として広く使われていましたが、令和7年12月2日以降、健康保険被保険者証が使用できなくなることを踏まえ、愛知県は常勤性の確認書類の取扱いを変更しています。上の①~④は、令和8年4月版の手引きに掲載されている現行の取扱いです。


【実務上のポイント】
インターネット上には、健康保険証の写しで足りるとする古い解説が今も多く残っています。準備を始める前に、必ず最新版の手引き(令和8年4月版)と愛知県のお知らせを確認してください。健康保険・厚生年金に加入している法人であれば、通常は①の標準報酬額決定通知書が該当します。毎年送付されるものですので、経理・総務の保管場所を先に押さえておくと早く進みます。


使用できない資料があります

健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定一覧表は、公的な資料ではないため、常勤性の確認資料として使用できません。名称が①の「標準報酬額決定通知書」と似ているため取り違えが起きやすい箇所です。一覧表ではなく、年金事務所等から送付される決定通知書を用意してください。

なお、①~④のいずれについても、被保険者記号・番号部分にマスキングを施すこと、住民税特別徴収税額決定通知書にマイナンバーが印字されている場合はその部分を隠してから複写することが求められています。



追加資料を求められるケース    EXTRA

①~④の資料がそろっていても、次の事情がある場合は追加の資料を求められることがあります。


遠距離通勤の場合


住所(居所)が勤務を要する営業所の所在地から著しく遠距離(通勤時間がおおむね片道2時間以上)にあり、社会通念上通勤不可能なものについては、通勤確認のできる資料(通勤定期券やETC記録等)を求めることがあるとされています。


住民票の住所と実際の住所が異なる場合


法人の役員や営業所技術者等が住民票の住所と別の住所に居住している場合は、住民票の住所を記載したうえで、現に居住している所在地を居所として併記します。経営業務の管理責任者や営業所技術者等については、居住の実態を確認するため本人宛ての公共料金の請求書などの写しが必要です(提示)。


出向社員の場合


出向社員であっても、常勤性が確認できれば営業所技術者等として認められます。この場合、①~④の資料に加えて出向契約書等(該当者・出向元・出向先・出向期間の確認できる資料等)の写しの提示が必要です。出向者が役員である等の理由で出向契約書等を提示できない場合は、別途相談するよう案内されています。


現場に配置する技術者とは別の話です

出向社員を営業所技術者等とすることは、常勤性が確認できれば可能です。ただし愛知県は、現場配置技術者は原則として出向者の配置が認められないと注意喚起しています。営業所に置く技術者と、工事現場に置く技術者は別の制度である点にご注意ください。

社内に該当者がいない場合の出向の使い方については、別記事で解説しています。

許可を取った後も常勤性は問われます    AFTER

常勤性は、申請時にだけ確認されるものではありません。愛知県は、許可通知書を主たる営業所へ簡易書留(転送不要)で郵送しており、これは営業所としての実態があるか、経営業務の管理責任者や営業所技術者等が常勤しているか等の営業所確認を兼ねていると説明しています。


▶郵便物が返戻された場合、現地の確認調査を実施することがある
▶建設業法第29条の2第1項の規定により、許可の取消しの対象となることがある
▶経営業務の管理責任者や営業所技術者等を変更したときは、変更の事由が発生してから14日以内に届出が必要


要件を満たす人がいなくなった状態が続くことは、許可の維持そのものに関わります。退職・退任の予定が見えた段階で、後任の要件を確認しておくことをおすすめします。


よくあるご質問    FAQ

Q.営業所から遠方に住んでいる人でも、経営業務の管理責任者や営業所技術者等になれますか。
どちらも常勤性が要件となっているため、認められないことがあります。愛知県は、住所が勤務する営業所所在地から遠距離にあり社会通念上毎日の通勤が困難と考えられる場合を、常勤性が認められない可能性のある事例として挙げています。実際に通勤している場合は、通勤定期券やETC記録等の資料を求められることがあります。


Q.1人で経営業務の管理責任者と営業所技術者等を兼ねられますか。
勤務場所が同一の主たる営業所であれば可能です。従たる営業所に置く技術者を兼ねることはできません。


Q.一人親方(個人事業主)です。自分の常勤性の資料は必要ですか。
個人事業主ご本人については、常勤性の確認資料は必要ありません。ただし、経営業務の管理責任者等や営業所技術者等が事業主本人と異なる場合は、その方について資料が必要です。


まとめ    SUMMARY

▶常勤性の確認は、経営業務の管理責任者等・補佐する者・営業所技術者等について必要
▶個人事業主本人については不要
▶資料は①から順に確認し、最初に当てはまったものを提出する(選べるわけではない)
▶健康保険被保険者証が使用できなくなったことを受け、取扱いが変更されている
▶健康保険・厚生年金保険被保険者標準報酬決定一覧表は使用できない
▶マイナンバー・被保険者記号・番号はマスキングする
▶片道おおむね2時間以上の遠距離通勤、出向、居所が異なる場合は追加資料が必要
▶許可通知書は転送不要の簡易書留で送付され、営業所確認を兼ねている
▶変更があったときは14日以内に届出が必要


常勤性は、要件を満たしているかどうか以上に「どの資料で示すか」で手戻りが起きやすい部分です。特に更新申請では、期限が決まっているぶん影響が大きくなります。


どの資料を用意すべきかの判断から、まとめてお引き受けします。


建設業許可申請でよくある不備と提出前チェックリストもあわせてご覧ください。

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