

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。
「小さい工事だから技術者はいらないだろう」——建設業許可を取った会社にとって、この考え方は建設業法違反につながります。
結論として、建設業許可を受けた業者が請け負った工事は、元請か下請か、請負金額がいくらかにかかわらず、すべての工事現場に主任技術者を配置しなければなりません。
この記事では、主任技術者の配置が必要になる工事の範囲、主任技術者になれる人の要件、実際にどんな職務を行う人なのかを、建設業法の条文に沿って整理します。
建設業法第26条第1項は、建設業者が請け負った建設工事を施工するときは、工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる者として主任技術者を置かなければならないと定めています。
▶元請か下請かを問わない
▶請負金額の大小を問わない
▶公共工事か民間工事かを問わない
▶許可を受けた業種の工事であれば、すべての現場が対象
ここでいう「建設業者」とは、建設業許可を受けて建設業を営む者を指します。つまり、許可を取った時点で、その会社が施工するすべての現場に技術者を配置する義務が発生します。
許可が不要な「軽微な建設工事」であっても、許可業者が請け負って施工する以上は主任技術者の配置が必要です。「500万円未満だから技術者はいらない」という理解は誤りです。
許可を持たない業者が軽微な建設工事のみを施工する場合は、そもそも建設業法第26条の適用を受けないため、主任技術者の配置義務はありません。軽微な建設工事に当たるかどうかの判定方法は、500万円未満の工事の記事で解説しています。
出典:建設業法第26条第1項/国土交通省中部地方整備局「建設業法に基づく適正な施工の確保」
原則はすべての現場に必要ですが、例外は次の3つに限られます。
| ケース | 内容 |
|---|---|
| ①監理技術者を置く場合 | 元請として下請契約の総額が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上になるとき、主任技術者に代えて監理技術者を配置します(法第26条第2項) |
| ②特定専門工事の特例 | 鉄筋工事・型枠工事について一定の要件を満たす場合、下請の主任技術者を省略できます(法第26条の3) |
| ③許可業者でない場合 | 建設業許可を受けずに軽微な建設工事のみを施工する場合 |
①は「置かなくてよい」のではなく「より上位の技術者に置き換わる」だけです。どのような工事で監理技術者が必要になるかは、監理技術者の配置が必要な工事の記事で詳しく解説しています。
②は適用条件が細かく、注文者の書面による承諾なども必要です。下請業者の主任技術者と特定専門工事の特例で扱います。
主任技術者の資格要件は、一般建設業の営業所技術者(旧・専任技術者)の要件と同じです(法第26条第1項、法第7条第2号)。
| ルート | 内容 |
|---|---|
| ①国家資格 | 業種に対応する1級・2級の施工管理技士、建築士、技術士など |
| ②登録基幹技能者 | 業種に対応する登録基幹技能者講習の修了者 |
| ③指定学科+実務経験 | 大学・高専の指定学科卒業+3年以上/高校の指定学科卒業+5年以上 |
| ④技術検定の1次検定合格 | 1級の1次検定合格+3年以上/2級の1次検定合格+5年以上(対象業種に限る) |
| ⑤実務経験のみ | 10年以上の実務経験 |
【実務上のポイント】
資格者が社内にいない会社では、⑤の10年ルートで対応することになります。ただし電気工事・消防施設工事・解体工事は、免状や登録の有無によって経験年数が積み上がらないことがあります。自社の技術者が要件を満たすか不安な場合は、先に該当業種の実務経験の考え方を確認してから現場配置を決めることをおすすめします。
実務経験として何が認められるか、年数の数え方については実務経験証明書(様式第9号)の書き方の記事、資格要件の全体像は営業所技術者等の要件を解説した記事をご覧ください。
主任技術者は、名前を書類に載せるだけの存在ではありません。建設業法第26条の4第1項は、次の職務を誠実に行わなければならないと定めています。
▶施工計画の作成
▶工程管理
▶品質管理
▶施工に従事する者に対する技術上の指導監督
同じ主任技術者でも、元請の立場か下請の立場かで職務の中身は変わります。
| 項目 | 元請の主任技術者 | 下請の主任技術者 |
|---|---|---|
| 役割 | 請け負った工事全体の統括的施工管理 | 請け負った範囲の施工管理 |
| 施工計画 | 全体の施工計画書等の作成、下請の施工要領書の確認 | 元請の施工計画書に基づく施工要領書の作成 |
| 工程管理 | 全体の進捗確認、下請間の工程調整、工程会議の開催 | 請け負った範囲の進捗確認、工程会議への参加 |
| 品質管理 | 下請からの施工報告の確認、立ち会い確認 | 原則として立ち会い確認、元請への施工報告 |
出典:国土交通省「監理技術者制度運用マニュアル」二-三(主任技術者、監理技術者又は特例監理技術者の職務)
主任技術者を「配置」するとは、工事現場への常駐(施工の稼働中、常時継続的に現場に滞在すること)を意味するものではありません。職務を適切に果たせる体制であればよく、事務所での作業や他の現場との掛け持ちが直ちに違法になるわけではありません。
ただし、一定規模以上の工事では「専任」が求められ、この場合は他の現場との兼務が原則としてできなくなります。
公共性のある重要な建設工事であって、請負金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上の工事(令和7年2月1日改正後の金額)。この場合は元請・下請の区別なく専任が求められます。
専任が必要になる工事の範囲と「専任」の正確な意味は、技術者の専任とはの記事で詳しく解説しています。また、複数現場を兼務できる条件については、主任技術者・監理技術者は複数現場を兼務できる?の記事にまとめました。
配置する主任技術者は、その工事を請け負った建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある必要があります。
▶直接的な雇用関係/第三者を介さず、賃金・労働時間等について直接的な雇用契約があること
▶恒常的な雇用関係/一定期間にわたり継続している雇用関係であること
そのため、在籍出向者や派遣社員を工事現場の主任技術者として配置することは、原則として認められません。出向社員や応援の技術者を現場に置けるかについては、直接的かつ恒常的な雇用関係の記事で整理しています。
主任技術者とは別に、専門技術者の配置が必要になる場面があります(法第26条の2)。
▶土木一式工事・建築一式工事の内容である専門工事を自ら施工する場合
▶許可を受けた業種に附帯する他の業種の工事を自ら施工する場合
専門技術者の資格要件は主任技術者と同じで、要件を満たしていれば主任技術者・監理技術者が兼ねることができます。専門技術者を置けない場合は、その業種の許可を持つ業者に下請けに出す必要があります。
一式工事で請け負える工事の範囲や、29業種の区分の考え方もあわせてご確認ください。
主任技術者の配置は建設業法上の義務であり、これに違反した場合は建設業法第28条に基づく監督処分(指示処分・営業停止処分)の対象となります。公共工事では、あわせて指名停止措置を受けることもあります。
【実務上のポイント】
許可を取得した後、立入検査や公共工事の施工体制の確認で問題になりやすいのが「名前だけの技術者」です。書類上は配置されているが、実際にはその技術者が別の現場に常駐していた、というケースは指摘を受けます。
受注が重なりそうな時期には、どの現場に誰を配置するかを事前に一覧化し、専任が必要な工事が含まれていないかを確認しておくことをおすすめします。
▶建設業許可を受けた業者は、元請・下請・金額を問わずすべての工事現場に主任技術者を配置する
▶500万円未満の軽微な建設工事でも、許可業者が施工するなら配置が必要
▶例外は「監理技術者を置く場合」「特定専門工事の特例」「許可業者でない場合」の3つ
▶資格要件は一般建設業の営業所技術者と同じ(国家資格または実務経験10年など)
▶職務は施工計画の作成・工程管理・品質管理・技術上の指導監督の4つ
▶「配置」は常駐を意味しないが、4,500万円(建築一式9,000万円)以上の工事では専任が必要
▶直接的かつ恒常的な雇用関係が必要で、派遣社員は配置できない
▶配置を怠ると建設業法第28条に基づく監督処分の対象になる
配置できる技術者がいるか、実務経験で要件を満たせるかの確認からご相談ください。
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