経営業務の管理責任者の証明資料と請負確認|愛知県の「年1件」と「12か月ルール」

経営業務の管理責任者の証明資料と請負確認|愛知県の「年1件」と「12か月ルール」

建設業許可の経営業務の管理責任者について、愛知県の令和8年4月版手引に基づき証明資料を解説。確定申告書・登記事項証明書に加えて必要な請負確認の件数、「年1件」で足りる場合と間隔12か月ルールの違い、注文書しかない場合の対応まで整理しました。

この記事を書いた人/行政書士久遠事務所 代表 猪飼久遠(行政書士/登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可の新規取得・更新・決算変更届・経営事項審査を取り扱っています。


「社長として20年やってきた」——それでも建設業許可が取れないことがあります。
経営業務の管理責任者の要件でつまずくのは、年数が足りないからではなく、その年数を書類で連続して証明できないからです。


愛知県では、経験期間について「その期間ずっと経営者だったこと」と「その期間ずっと建設工事を請け負っていたこと」の両方を資料で確認します。しかも請け負っていたことの確認方法には、年1件で足りる場合と、12か月を超えない間隔で並べなければならない場合があります。


この記事では、愛知県知事許可を前提に、経営業務の管理責任者の経験をどの資料で、何件そろえて証明するのかを整理します。



経営業務の管理責任者とは    DEFINITION

建設業許可の要件のひとつが「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること」です。これは、適正な経営体制社会保険の加入の両方を満たすことをいいます(建設業法施行規則第7条)。


このうち適正な経営体制について、最も一般的なのが常勤役員等のうち一人が次のいずれかに該当する形(イ該当)です。


区分 内容
イ(1) 建設業に関し5年以上経営業務の管理責任者としての経験を有する者
イ(2) 建設業に関し5年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者(経営業務を執行する権限の委任を受けた者に限る)として経営業務を管理した経験を有する者
イ(3) 建設業に関し6年以上、経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験を有する者
一定の経験を有する常勤役員等を置き、財務管理・労務管理・業務運営の各業務経験を有する者を直接に補佐する者としてそれぞれ置く体制(様式第七号の二を使用)


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」3ページ(許可の基準)


ここでいう「建設業に関し」とは、すべての建設業の種類をいい、業種ごとの区別をせず、すべて建設業に関するものとして取り扱うとされています。営業所技術者等の実務経験と違い、業種を合わせる必要はありません。


【実務上のポイント】
イ(2)(3)およびロは、イ(1)に比べて確認資料が多く必要になります。愛知県も事前相談を求めていますので、これらで申請を検討する場合は、書類を作り始める前に管轄窓口または専門家にご相談ください。以下ではもっとも件数の多いイ(1)を前提に説明します。


経験として認められる立場・認められない立場    POSITION

「経営業務の管理責任者としての経験を有する者」とは、業務を執行する社員、取締役、執行役、法人格のある各種組合等の理事等、個人の事業主、支配人その他支店長・営業所長等、営業取引上対外的に責任を有する地位にあって、経営業務の執行等の建設業の経営業務について総合的に管理した経験を有する者をいいます。


▶取締役・代表取締役/認められる
▶個人事業主/認められる
▶支配人、支店長、営業所長等(令第3条の使用人)/認められる
▶監査役/認められない
▶執行役員、会計参与、監事、事務局長等/原則として役員に含まれない(一定の権限委譲を受けた執行役員等は例外あり)


他社の常勤役員との兼務はできません

経営業務の管理責任者は、許可を受けようとする営業体において「常勤」でなければなりません。愛知県は、仮に勤務場所が同じであっても、他社の常勤役員との兼務は認められないとしています。なお、同一の方が経営業務の管理責任者と営業所技術者等を兼ねることは、勤務場所が同一の主たる営業所であれば可能です。

証明者は誰か    WHO

常勤役員等(経営業務の管理責任者等)証明書(様式第七号)は、被証明者1人について証明者別に作成します。


▶原則/経験期間における使用者(法人は当該法人の代表者、個人事業主は本人)の証明。使用者の建設業許可の有無は問わない
▶使用者の証明を得られない場合/現在建設業許可を有する第三者の証明(許可番号と連絡先電話番号を記載)
▶更新申請の場合や、既に受理された様式第七号の副本等を示せる場合/申請者自身が証明者となれる
▶法人成りした元個人事業主が個人事業当時の経験を証明する場合/証明者欄に現在の元事業主の住所と当時の名称を記載し「元事業主 ○○」と記載


第三者証明を使う場合は、証明内容についてその第三者の十分な理解と了承を得たうえで証明を受けてください。愛知県は、疑義が生じた場合に証明者へ問い合わせをすることがあるとしています。



確認資料は「地位」と「請負」の2本立て    PROOF

愛知県の確認資料は、経験を積んだ会社が建設業の許可を受けていたかどうかで大きく分かれます。


①許可を受けていた建設業者での経験の場合


過去に経営業務の管理責任者として証明されているかどうかで、次のように扱われます。


状況 確認資料(提示)
過去に経営業務の管理責任者として証明されている 許可申請書又は変更届副本の常勤役員等(経営業務の管理責任者)証明書(様式第七号)
過去に経営業務の管理責任者として証明されていない 経験年数を確認できる申請書類(副本)および登記事項証明書(証明期間中の必要年数について、継続して役員であったことが確認できるもの)等


②許可を受けていない業者での経験の場合


こちらが大半のケースです。a(その期間ずっと経営者だったこと)b(その期間ずっと建設工事を請け負っていたこと)の両方を、必要年数分そろえます。


区分 資料
個人の事業主経験 確定申告書(控え:第一表から、収支内訳書又は青色申告決算書等一式)+所得証明書(原本・市区町村発行)【提示】
法人の役員経験 登記事項証明書(証明期間中の必要年数について、継続して役員であったことが確認できるもの)【提示】
請負の確認

該当年に施工した次の①②③のいずれか【写しを提出】
①契約書
②注文書+それに対応する請書控
③注文書・請書控・請求書のいずれか+入金が明確に分かるもの(「通帳」又は「預金取引明細票」等第三者機関が発行したもの)


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」17~18ページ(確認資料)


【実務上のポイント】
aの資料は、個人事業主の場合確定申告書と所得証明書の両方が必要です。所得証明書は市区町村で発行しますが、年度が古いと発行されないことがあります。発行機関の理由により持参できない方は、事前に申請窓口へ相談するよう案内されています。まず何年分の所得証明が取れるかを確認してから、証明する期間を決めるほうが安全です。


請負確認は「年1件」か「12か月ルール」か    COUNT

愛知県の運用でもっとも独特なのが、bの請負確認の件数です。次の条件を満たす場合は年1件(暦年1月から12月に1件)の確認で足ります。


年1件でよい場合

▶個人の事業主の経験/確定申告書の記載内容から、年間を通じて建設業を営んでいたことが明らかな場合
▶法人の役員の経験/経験を確認しようとする期間すべてにおいて、登記事項証明書の目的欄に建設業の業種に関する事項が記載されており、当該業種の建設業を営んでいると確認できる場合

法人の目的欄については、愛知県が具体例を示しています。


▶目的が「管工事業」/管工事業の実績であれば年1件の確認にできる
▶目的が「給湯器の設置工事」/給湯器の設置工事の実績であれば年1件の確認にできる
▶目的が「給湯器の販売」/年1件の確認にはできない
▶目的が「給湯器の販売、施工」/給湯器の設置工事であれば年1件の確認にできる


施工することまで目的に記載されていないと、年1件の請負確認にはできません。また、目的が途中で変更されており、建設業に関する事項が記載されていない期間を含んで経験を確認する場合や、目的欄に記載されている業種以外の請負実績を持参する場合も、年1件にはできません。


年1件が使えない場合は「12か月ルール」


上記に該当せず、aの書類の内容に不備がある場合は、次の方法で確認されます。


12か月を超えない請負確認(片落ち計算)

①~③のいずれかの書類で確認できた請負と、次の請負との間隔が12か月を超えない場合、その間を連続した請負期間として認定します。間隔が12か月を超えた場合、その間は連続期間として認められません。


【計算の基準】
▶請求書+入金確認/請求書の発行月
▶注文書+入金確認/注文書の発行月
▶請書控+入金確認/請書の発行月
▶契約書/契約月(工期併用可)
▶注文書+請書/注文書の発行月又は請書の発行月(確認期間を通してどちらかに統一、工期併用可)

5年分(60か月)を証明する場合、間隔がちょうど12か月ずつなら6件で足りますが、間隔が不揃いなら件数はさらに増えます。愛知県の例示では、8件を並べて60か月とするパターンも示されています。


なお、①~⑤を組み合わせることはできますが、同一工事を重複して用いることは認められません。たとえば「注文書+初月の出来高分の入金確認」と「同一請負の請求書+完了分の入金確認」を別々の実績として数えることはできません。


【実務上のポイント】
証明者が同一の場合、請負確認方法を混同することはできません。同じ個人事業主としての経営経験の中で、ある年は年1件、別の期間は12か月ルール、という使い分けは不可です。一方、証明者が異なる場合(個人事業主としての経験と法人役員としての経験)は、それぞれ別の方法を採ることができます。個人事業から法人成りしている方は、この点を最初に整理しておくと、集める書類の量が変わります。


請負確認の資料でチェックされる4点    CONTENT

契約書等をそろえても、内容が要件を満たしていなければ資料として使えません。愛知県は次の点を挙げています。


確認事項 注意点
工事の内容が確認できるか 現場名のみ記載されているなど工事内容が確認できないものは使用できない。見積書等がある場合は添付する
建設業の業種が確認できるか 「修繕工事」「改修工事」とのみ記載されている場合は、内容がわかる資料の添付が必要
建設工事の請負であることが確認できるか いわゆる人工出しや応援などの常用工事、建設資材の販売の実績は経営経験にならない。人工代しか計上されていない場合や、資材代のみで工賃が表示されていない場合は請負工事の実績とみられない
請求書等の金額と入金額が一致するか 振込手数料や安全管理費等で差額がある場合、その内訳を確認する必要がある。差額が大きい場合は説明を求められる


出典:愛知県「建設業許可申請の手引(申請手続編)令和8年4月版」21ページ(請負確認における契約書等の内容について)


登録業種を営んでいた場合の特例


浄化槽工事業登録、登録電気工事業、解体工事業登録を受けた業者における請負実績については、取扱いが異なります。


▶個人事業主/確定申告書の職業欄に当該業種に係る職業である記載が確認でき、かつ年間を通じて請負実績が認められる期間については、①②③の書類によらず請負の実績を算定できる
▶法人/履歴事項全部証明書にある法人の目的により、必要年数に応じて法人として建設業を営んでいると判断できる期間については、①②③の書類によらず請負の実績を算定できる
▶いずれの場合も、登録の事実を確認できる書類(登録の通知書等)の提示が必要


注文書しかない場合はどうするか    ORDER

建設工事の請負契約の締結に際しては、建設業法第19条に規定されている事項を書面に記載し、署名又は記名押印をして相互に交付しなければなりません。そのため愛知県も、原則は工事請負契約書により経験を確認しています。


しかし実務では、注文書しか残っていないことのほうが多いのが実情です。この場合の取扱いは次のとおりです。


▶注文書しかない場合/注文書+入金が明確に分かるもの(通帳又は預金取引明細票等、第三者機関が発行したもの)の写しを提出
▶請書控え、請求書の控えも同様の取扱い
▶見積書は、工事内容の確認のため求められることはあるが、請負確認資料として用いることはできない
▶押印を求める手続の見直しに伴い、「発注証明書」は廃止されている



よくあるご質問    FAQ

Q.建設会社の監査役として5年以上の経験があります。経営業務の管理責任者になれますか。
なれません。監査役の経験で経営業務の管理責任者となることはできない、と愛知県は明確に回答しています。


Q.経験した会社の業種と、これから取りたい業種が違います。使えますか。
使えます。「建設業に関し」とは、すべての建設業の種類をいい、業種ごとの区別をせず、すべて建設業に関するものとして取り扱われます。営業所技術者等の実務経験とは考え方が異なる点に注意してください。


Q.役員の任期が切れたまま登記していません。影響はありますか。
影響します。株式会社で役員の任期(定款で確認します)が満了している場合は、重任登記がなされていなければなりません。任期を変更している場合は、新定款の写し又は定款を変更したことが分かる議事録の写しの添付が必要です。継続して役員であったことを登記事項証明書で確認する運用である以上、登記が途切れていると経験期間の確認ができません。


Q.経営業務の管理責任者を変更しました。更新申請のときにまとめて出せばよいですか。
できません。経営業務の管理責任者や営業所技術者等の変更届は、変更の事由が発生してから14日以内に提出する必要があります。更新は「既に受けている建設業の許可を、そのままの内容で申請する場合」の取扱いとなるため、更新申請の前に変更届を提出しておくことが必要です。


まとめ    SUMMARY

▶経営業務の管理責任者の経験は、業種を問わず「建設業に関し」5年以上(イ(1)の場合)
▶監査役の経験は認められない。他社の常勤役員との兼務も認められない
▶証明者は原則として当時の使用者。得られない場合は現在許可を有する第三者
▶許可を受けていない業者での経験は、a(地位)とb(請負)の両方を必要年数分そろえる
▶個人事業主は確定申告書+所得証明書、法人役員は登記事項証明書
▶請負確認は「年1件」で足りる場合と、間隔12か月を超えない件数が必要な場合がある
▶法人は目的欄に「施工」まで記載されているかで件数が変わる
▶同一証明者の中で確認方法を混在させることはできない
▶人工出し・応援などの常用工事、資材販売の実績は経営経験にならない
▶注文書しかない場合は、入金が確認できる資料とセットで提出する


経営業務の管理責任者の要件は、経歴そのものより残っている書類で何年分がつながるかで結論が変わります。確定申告書や通帳が何年分あるかによって、そろえるべき件数も変わります。


手元の資料で5年分がつながるかどうかの見立てから、お手伝いできます。


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