

【この記事の執筆者】行政書士久遠事務所(愛知県行政書士会・登録番号26191514)
愛知県稲沢市を拠点に、建設業許可・経営事項審査などの許認可申請を専門に取り扱っています。
「建設業許可の要件を満たせなくなったので廃業する予定だが、すでに契約している工事はどうなるのか」——後継者不在や経営業務の管理責任者の退任をきっかけに、実際によくいただくご相談です。工事が途中で止まってしまえば、発注者にも大きな損害が生じます。この点について建設業法は「発注者保護」の規定を置いており、廃業した場合でも、すでに施工している工事は完成まで施工できることとされています。この記事では、建設業許可の廃業と施工中の工事の関係、注文者への通知義務、そして愛知県での廃業届の実務を整理します。
建設業許可を取得しても、次のいずれかに該当した場合は建設業許可の廃業となり、廃業の届出を必ず許可行政庁に提出しなければなりません。
第十二条 許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、その旨を書面で国土交通大臣又は都道府県知事に届け出なければならない。
一 許可を受けた個人事業主が死亡したとき その相続人
二 法人が合併により消滅したとき その役員であつた者
三 法人が破産手続開始の決定により解散したとき その破産管財人
四 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき その清算人
五 許可を受けた建設業を廃止したとき 当該許可に係る建設業者であつた個人又は当該許可に係る建設業者であつた法人の役員
このほか、許可の要件を満たさなくなった場合や、更新手続を行わずに有効期間が満了した場合も、結果として建設業許可を失うことになります。
廃業届を怠ると過料の対象になります
建設業法第12条の届出を怠った者は、建設業法第55条第1号により10万円以下の過料に処されます。過料は刑事罰ではありませんが、届出義務違反であることに変わりはなく、監督処分の端緒となる可能性もあります。「もう営業していないから放っておこう」という対応は避けてください。
建設業許可を廃業したとしても、請け負った建設工事がすでに施工中である場合、その工事に限って引き続き施工することができます。
廃業した以上、その建設業者は無許可業者となります。それにもかかわらず施工の継続が認められているのは、建設業法の目的の一つである「発注者保護」があるためです。廃業により建設業許可が取り消され、即工事を行えなくなると、未完成のまま発注者が損害を被ることになりかねないからです。
第二十九条の三 (略)建設業の許可がその効力を失つた場合においても、当該建設業者であつた者又はその一般承継人は、当該建設業者が締結した請負契約に係る建設工事に限り、これを施工することができる。この場合においては、これらの者を建設業者とみなして、第十六条の規定を適用する。
ここで重要なのは、施工が認められるのが未完成の工事、つまり廃業の時点で着工済みの工事に限られるという点です。
▶できること/廃業時点で施工中の工事を、完成まで施工すること
▶できないこと/廃業後に新たに建設工事の請負契約を締結すること
▶できないこと/契約は済んでいるが、まだ着工していない工事に着手すること
契約は締結していても、まだ施工に入っていない工事については、この規定の適用がありません。廃業のタイミングを検討する際は、手持ち工事の着工状況を一覧化し、着工前の工事をどう処理するかを先に決めておく必要があります。
施工を継続できるとしても、無許可業者に工事をしてもらいたくないと考える発注者もいます。そのため建設業法は、両者のバランスをとる仕組みを置いています。
| 誰が | 何を | いつまでに |
|---|---|---|
|
廃業した建設業者であった者 |
許可が効力を失った旨を |
2週間以内 |
| 建設工事の注文者 | その建設工事の請負契約を解除 |
通知を受けた日、または |
つまり、廃業した業者に工事を続けてもらいたくない発注者は、通知を受けてから30日以内に限り、締結済みの請負契約を解除することができます。逆にいえば、廃業する側から見れば、この通知を怠ることは発注者の解除権行使の機会を奪うことになり、後日の紛争の火種になります。
【実務上のポイント】
この通知は口頭では足りません。書面で行い、控えを保管してください。実務上は、廃業届の写しを添付した通知書を内容証明郵便または配達記録付き郵便で送付し、発送日と到達日を記録に残す方法をおすすめしています。解除権の起算日は「通知を受けた日」ですので、到達日の証拠が重要になります。
また、廃業となった業者にそのまま工事をしてもらうことを避けたいのであれば、発注者の側から締結済みの請負契約の解除をすることも可能です。上記の解除権はそのための規定です。
許可行政庁が行う建設業許可の取消しには、廃業によるものと行政処分によるものの2種類があります。いずれの処分においても、許可が無くなることは同じです。
しかし、取消しの理由によって、処分後の処遇が大きく異なります。
| 廃業による取消し | 行政処分による取消処分 | |
|---|---|---|
| 再取得の可否 |
許可要件を満たせば |
処分の日から5年を経過するまで |
| 根拠 | — | 建設業法第8条(欠格要件) |
| 施工中工事の継続 | 可(法第29条の3) | 可(法第29条の3) |
取消処分を受けそうな場合の判断は慎重に
虚偽記載などにより許可の取消処分を受けると、5年間は建設業許可を取得できません。処分を受ける前に自ら廃業届を提出すれば5年の制限を回避できるという説明を見かけることがありますが、取消処分の理由や時期によって結論は変わります。安易に判断せず、必ず許可行政庁または専門家に確認してください。
許可を受けている建設業を全部廃止した場合だけでなく、許可を受けている一部の建設業のみを廃止した場合も届出の対象です。
愛知県では、許可業種の一部を廃業する場合は、廃業届ではなく変更届等の提出が必要とされています。たとえば「とび・土工工事業と内装仕上工事業の許可を持っているが、内装仕上工事業だけをやめる」というケースがこれにあたります。業種の整理をする際に届出を忘れると、実態と許可の内容がずれたまま更新時期を迎えることになりますので注意してください。
▶様式/様式第22号の4(廃業届)
▶提出期限/廃業から30日以内
▶提出先/主たる営業所の所在地を管轄する建設事務所等
▶提出方法/郵送・投函・窓口での仮受付(愛知県では窓口での対面審査は行っていません)
▶押印/令和3年1月4日から押印は廃止。印のないものを提出
愛知県の手続の流れは、仮受付(郵送・投函・窓口で書類を預かる)→内容確認→連絡・補正→本受付→副本返却、という順序です。受付日は仮受付日で処理されますので、30日の期限は仮受付日で判断されます。期限が迫っている場合は、まず仮受付だけでも間に合わせるという発想が有効です。
【実務上のポイント】
副本は、仮受付時に返信用の封筒を提出しておけば郵送で返却されます。廃業届の副本は、注文者への通知や、将来的に再度許可を取得する際の経営経験の証明資料として使う場面があります。必ず返信用封筒を同封し、副本を確実に受け取ってください。
実務でよくあるのが、経営業務の管理責任者や営業所技術者等が急に退職・死亡してしまい、「要件を満たせないから廃業するしかない」と考えてしまうケースです。
しかし、後任者を選任できれば許可を維持できる可能性があります。常勤役員等や営業所技術者等の変更届は事実発生後2週間以内が期限ですので、動けるかどうかはこの2週間で決まります。廃業を決断する前に、社内に要件を満たす人がいないか、外部から招へいできないかを必ず検討してください。
▶建設業許可を廃業した場合でも、すでに施工中の工事に限り完成まで施工できる(法第29条の3)
▶廃業後に新たな契約を締結すること、未着工の工事に着手することはできない
▶許可が効力を失った旨は2週間以内に注文者へ通知。注文者は通知を受けた日から30日以内に限り契約を解除できる
▶廃業なら要件を満たせばすぐ再取得できるが、取消処分だと5年間取得できない
▶愛知県では様式第22号の4を廃業から30日以内に提出。郵送・投函・窓口仮受付で、押印は不要
廃業は、単に届出を1枚出せば終わる手続ではありません。手持ち工事の処理、注文者への通知、社会保険や税務の手続、そして将来の再取得の可能性まで含めて全体を設計する必要があります。とくに「要件が欠けそうだ」という段階でご相談いただければ、廃業以外の選択肢が見つかることも少なくありません。
・常勤役員等(経営業務の管理責任者等)の要件について解説した記事はこちら
・外部から経営業務の管理責任者を招へいする方法について解説した記事はこちら
・建設業許可の承継(譲渡・合併・分割・相続)の認可申請について解説した記事はこちら
愛知県稲沢市の行政書士久遠事務所では、建設業許可の新規取得から各種変更届、廃業届まで対応しています。「要件を満たせなくなりそう」「工事を残したまま廃業してよいのか分からない」といった段階でのご相談も歓迎です。 LINEなら夜間・土日も対応します。
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